第3話
上座に座る2人は顔を合わせると深く頷いた。
「リリアーナ。お前の結婚が決まった」
父の声が謁見の間に響いた。
「・・・・・・・は?」
父の言葉を理解するまでに私の脳は大分かかったらしい。
聞き間違えでないのならば、父は結婚と言ったはずだが・・・・
「お、お父様?何の御冗談?」
どきまきしながら父に問いかける。
その問いに答えたのは、母だった。
「あら!リリアーナ!!あなたの結婚が決まったのよ!我が国の次に大きな国であるレイスピア国よ!まぁ、我が国よりは小さいけれど、その分、貴方の立場は大きなものでしょう?小さすぎる所だと貴方が不幸になるかもしれないし、我が国と同じくらい大きな国となれば、大陸をまたがなければいけなくなってしまうでしょう?そんな遠くに貴方をお嫁に出すなんてそれも心配で・・・。だから、この国に次ぐレイスピア国であれば貴方は幸せになれるはずよ!!」
語られる母の言葉にさすがの私も唖然となった。
その隣で、ごほんと咳払いする父が話を引き継いだ。
「・・・・・つまり、お前はレイスピア国へと嫁ぐ事になる。お前の夫となる男はレイスピア国の王、ラディア・M・レイスピアだ」
そこで、やっと我に帰り大声を上げた。
「い、いやよ!!なぜ私が嫁がなくてはならないの!?私はこの国で生まれてこの国で育ったのよ!?そんな訳のわからない国になど行きたくないわ!!」
普段なら立っている事が苦痛な私もこの時ばかりは勢いよく椅子から立ち上がった。
「そ、それに、私はこの国の第1王女よ!国の為を思うならばこの国に残らなければならないでしょう!?」
そ、そうだ。私はこの国の王女。それも1番目の。
下に弟と妹が2人いるが、一番は私なのだ。
この国を継ぐのももちろん私だと信じて疑った事など一度もない。
「・・・・リリアーナ。常々思っていたのだが・・この国の王位継承権は男子のみに与えられるものだ。お前も知っているだろう?」
父は、急にとんでもない事を言いだした。
「な、何を言っているの!?お父様!!私は第一子なのよ?男だろうが女だろうが一番目が国を継ぐのが当然でしょう!?」
そんな必死な私に、父と母は再び顔を合わせた。
「・・・・お前こそ、何を言っているんだ?これはお前が幼き頃から勉学の一つとして当然習っている事だろう?幼いころにこの国を守ると言っていたと報告を受けた事はあるが、お前が跡を継げない事ぐらい何度も教えてもらっただろう?」
そう、幼いころから、馬鹿な家庭教師にそう教えられた。
だけど、この国は私の物。
それを馬鹿な教師たちは弟の者だと言い張った。
そんな愚か者どもは、何かと理由をつけてやめさせた。
「・・・知らないわ。お父様もお母様も間違っているのよ。この国を支えられるのは私しかいないのが分からないの?」
何を言っているんだとばかりに父と母を見上げると、父だけでなく母までもが困ったように私を見ていた。
「リリアーナ・・・。そう、そうね。賢い貴方ならこの国を支える事も出来たでしょう。だけど、やっぱり国を治めるのは殿方の仕事だわ。私たちはその方達を支える事が仕事なのよ」
母は私の言う事を分かってくれると思っていたのだが・・・。
「・・・いいわ。そう思われるのならばそうすれば。私は大人しくレイスピア国へ嫁げばいいのでしょう?」
両親まで馬鹿だとは思わなかった。
ならば、馬鹿な弟に国を任せてこの国など崩壊してしまえばいいんだわ。
私は、新たな国で私が国を治めて見せるんだから!!
そんな私の想いなど全く知らない両親は、お互いに安堵の表情を浮かべていた。
「わかってくれて嬉しいよ。リリアーナ。では、半年後お前はレイスピアへと嫁ぐ。嫁ぐまでにあちらになれなければいけないだろうから3ヶ月後にはあちらに赴く事となる。それまでに、お前の必要なものを用意しておきなさい」
父はそういうと、謁見の間を後にした。
「リリアーナ。あちらへ行っても不自由しないようちゃんとあちらの王にお願いしておきますからね。しっかりと夫となる人を支えてあげなさい」
そういうと、母もまた謁見の間を後にした。
そして、3ヶ月後、私はレイスピア国へと足を踏み入れたのだった。