第23話
睨みつけたままの私に、国王は鼻で笑った。
「はっ、出来るものならやってみろ」
そう言うや、腕を組んで私を楽しそうに眺める。
もちろん、私はそんな事する勇気もなく悔しくて唇を噛んだ。
「言うだけか?それなら、赤子でも出来る。出来もしない事を簡単に口にするなど、馬鹿のやる事だ」
侮蔑するように国王は私を眺めてそう言い放つ。
悔しくて、何か言い返したくても言葉が出てこない。
「・・・くだらぬな。本当にお前はくだらない」
興が覚めたとでもいう様に、私から視線をそらすと、近くにあった椅子に腰をかけた。
彼の視線から逃れたことで、私はやっと視線を外しそっと息を吐く。
「お前の様なものを嫁にしなくとも、カンミロイヤル国などすぐにでも我が国が落とせるものを」
国王の言葉に、カチンとくる。
「貴方の様な野蛮な人間が、我が国を愚弄するなんて許さないわ!!」
思わず叫んだ私は、ハッとして口を紡いだ。
が、国王は再び私を見て睨むその視線に思わず身体がすくむ。
「・・・おかしい事を言う。お前に何が出来る」
一言一言が低い声で威圧するように紡がれる言葉に、私は口を紡いだまま視線を外すしかなかった。
「お前が国の為に何をしたと言うのだ。愚弄も何も一番愚弄しているのはお前自身だろう」
再び私のプライドに疼く言葉を投げつけられ、私はキッと国王を睨み返した。
「わ、私がいつ国を愚弄したと言うの!!私はいつでもあの国の事を考えていたわ!!」
そう、私の国になると思っていたあの国の事を!
言葉にならない続きの言葉をぐっと飲み込んで、国王を睨みつける。
「国の事ではないだろう?自分の事は国の事とは言わない」
その言葉に、私はハッとした。
ここで下働きとして働かされていた時に、感じた事だったではないか。
今までの自分が何をしていたのかと。
それを、目の前の男に指摘されたようで、カッと頬が熱くなる。
「・・・・興ざめだ」
そう言うと、国王は椅子から立ち上がり部屋を後にしようと扉へ向かう。
「待って!!」
思わず叫んだ。
その言葉に、国王はめんどくさそうに振り向いた。
「・・・・なんだ」
怪訝そうな顔を私に向けた。
だが、私自身なぜ呼びとめたかわからない。
何も答えないでいると、国王は再び扉の方へと身体を向けた。
「わ、私をどうするつもりなのっ!!」
背を向けた国王に投げつけるようにそう問いかければ、再び私の方に向きを変えて私を見た。
「・・・別にどうもしない」
その言葉だけを残し、三度扉へと身体を向けると、国王は今度こそ部屋を後にした。
誰もいなくなった部屋に取り残された私はギュッとシーツを掴んだ。
「どうもしないってどういう事よ。私には何も価値がないと言いたいわけ?私を利用する価値も、・・・・殺す価値さえ?」
わずかに残っていた私のプライドに国王の言葉がうずく。
「・・・許さないわ」
キッと先程国王が出て行った扉を睨みつける。
「見てなさい!!私の事を放っておいて後悔させてやるんだから!!」




