第14話
「・・・・・・どういう事でしょう?」
宰相の言葉の意味が分からず私は宰相に尋ねると、宰相は困った人だと言いながらもともといた椅子に腰をかけた。
「どうぞ、貴方も座ったらいかがですか?」
宰相の向かいの席を勧められたが、私は首を横に振った。
「・・・そうですか。まぁ、今の体系ならば少々立っていても辛くはないでしょうね。・・・・宜しいですか?自国で我儘の限りを尽くしていたあなたのうわさは他国にまで響き渡っていました。そんな姫を嫁に欲しいとだれが思いますか?そこで、貴方のご両親は貴方を引き取ってくれる国にはさまざまな融通をきかすと約束して下さったのです。それでもまったく貴方には縁談が来なかった。そこで我が国が手を挙げたのです。もともと姫を引き取るだけでついてくる付属の条件が私たちの望むものだったのですよ。ですが、我が国でも貴方が祖国でしていた様な事をされれば全く意味がありませんでしたので、貴方のご両親に姫を引き取る代わりに私達のやる事は一切目を瞑って頂き、姫を突き放して下さいと言ったのです」
宰相はなんでもない事の様にそう話す。
初めて聞く話に私は驚きとショックを隠せない。
「・・・・・・それで、私がなぜ下女に・・・・・」
震える声で、宰相にそう問いかける。
「わかりませんか?下々の暮らしをしらないから我儘ができたのでしょう?ならばそれを味わってみればいいことです。どうです?貴方だって解ったでしょう?」
優雅に紅茶を飲む姿にイライラが募る。
「解ったっていったい何が分かったと言うのですか!?確かに私が今までしてきた事は間違った事が多かったかもしれません。ですが、私が下女にならなければいけない理由がどこにあったのです?間違っている事を指摘すれば済む事だったのではないのですか!?」
そのせいで私がどれだけの物を失ったと思っているのだろうか!?
イライラも限界に達し、私は思わず大声をあげてしまった。
「・・・・まぁ、人と言うものはそう簡単には変わりませんね」
呆れたようにこちらを見つめ首を振る宰相。
「王女様とあろうものがその様に声を荒げることには関心致しません。ですが、まぁ、国庫を食いつぶされる事はないでしょうし、簡単に人を城から追い出す事ももうされないでしょう。貴方には今から後宮へ移って頂きます」
私の質問に答えることもなく淡々とそれだけ言い置くと宰相は外で控えているであろう人間を呼んだ。
「まって!あなたは私の問いに何も答えてないではないですか!!」
そんな私の声に、宰相は再び呆れたように首を振りながら答えた。
「以前の貴方様が言って聞きますか?素直に受け入れるわけがない事位ご自分の事だからお分かりでしょう?」
宰相の言葉が終わるのと同時に扉が開き、騎士と侍女が現われた。
「リリアーナ姫をお部屋にお連れして差し上げなさい」
宰相のその言葉に、入ってきた侍女が私の前に出てきた。
「どうぞ、こちらに・・・・」
その声にハッと侍女の顔を見る。
いつもならば、今頃夢の中に居るはずの人物がそこに立っていた。
「・・・・エリナ・・・・」
私の声にエリナはにっこりと笑った。
「はい。リリアーナ様」
その返事にいつものエリナの様子など微塵もなかった。
寸分の隙もない侍女姿のエリナ。
下女をやっていた時の姿からは想像も出来ない、張り付けた笑顔で私を見ている。
「・・・・貴方も私を騙したの・・・・?」
私のその言葉にエリナは何も答えない。
「どうぞ、お部屋にご案内いたします」
何も答えない代わりに出てきた言葉はそんな言葉だった。
呆然とつったっている私に対し、エリナは今までの事などなかったかのような振る舞いで扉を開く。
私は、エリナの言葉に促されるまま再び宰相の部屋を後にした。




