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プロローグ
暑い。
いや、これは熱いというべきか。
太陽にジリジリと熱せられたアスファルトからはユラユラと陽炎が立ち上っている。
ジージーと騒がしいセミたち。
頭が痛い。
強い日差しを浴びて全てのモノが白く乱反射する中、ゆらゆらとした景色の向こう側に映る何の変哲もない一軒の家。
二階には開け放たれた窓がひとつ。窓枠から向こうには、夏の明るさとは無関係に黒い闇が広がっている。
そして。
風に翻る白いレースのカーテン。
――あれは白い巨大な……蝶?
眩暈がする。
白い羽が。
翻る、翻る、翻る……。