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第八話 乙葉の静寂

 乙葉が死んで、ずるりと崩れ落ちていくのを、達也はただ見ていた。

「遠藤? どうした……」

 声をかけてきた由香も、乙葉のそれをみて、言葉をなくす。

 二人はただ、動かない乙葉を見るしかなかった。


 しかし、由香はすぐに達也に囁く。

「……今大切なのは会長のことじゃなくて、海藤成実のことでしょ?」

 それは、乙葉を今は忘れろと言う残酷な意味を含んでいた。

「……」

 達也は、無表情に乙葉を見る。

 さっきまで喋っていたはずのその口は、閉じたままで動かない。

 死んだのだ。

 昨日まで、今まで、ずっと隣にいたはずの乙葉が、あまりにもあっけなく死んでしまった。

 達也はただその現実を、冷たく受けとめる。

 由香の言う通り、乙葉のために今できることはそれしかない。

 

『海藤成実を、殺せ』


 乙葉が達也に命令したのは、あれが初めてで最後だ。

 だから、達也に乙葉は託したのだ。ただ1つの現実と自分を。

 

「わかった」

 決意は固まった。

 もうやるしかないのだ。海藤成実を追って、殺すしか。

 残酷だとは思わない。乙葉が死んだ以上、それ以上の訳などいらない。


 学校の校舎には、静寂がたちこめていた。

 そして、その中心に海藤成実はいた。

「遠藤先輩。どうかしましたか?」

 まるで何も起こっていないと言うような口ぶりに、達也は一瞬動揺する。

「……ちがう。ただ、乙葉のことを聞きに来ただけだ」

 すると、海藤成実はさらりと言った。

「ああ、生徒会長ね。あの人はなかなか勘が鋭くて苦労したわ。だから、仕方なくそうしたの」

 当たり前の事のように言う海藤成実に、達也はもう何も感じない。

 怒りも、哀しみも、何も。

「……勘が鋭い、っていうのは?」

「あの人はもともと私の計画を知ってたみたいね。まあ、阻止されるのは嫌だったから。遠藤先輩にはわかるんじゃないですか? 会長はいつも教室にいなかったこと……」


 その瞬間、達也はやっと気づいた。


 乙葉は、授業をさぼったわけでも、なんでもない。

 海藤成実を追っていたのだ。

いつもご愛読ありがとうございます。

今後もよろしくお願いします。感想とかくださったら泣いて喜びます(笑)

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