第三話 街頭の静寂
「……」
達也が黙って携帯電話の画面を見ていると、由香がイライラしたように覗き込んだ。
「ちょっと、海藤成実について少し分かったから……ん?」
「あっちょっと……これはその……」
あたふたと言い訳を考えている達也をじろじろ疑わしげに見ながら、由香は言い放つ。
「今更他の人に連絡して私をどうにかしようなんて考えない方がいいわよ」
どうやら、2人の思考は完全にずれていたらしい。
「違うって。あ、それより乙葉にこのこと教えた?」
すると、由香は軽蔑するように達也を睨んだ。
「何言ってんの? 今さっき私は情報聞いたばかりなんだけど」
そういえばそうだった。
「じゃあ……なんで乙葉が知ってるんだ?」
「知らないわよ。それより、海藤成実のことで分かった事があるのよ」
由香は急いで携帯電話を取り出した。
どうやら、達也が乙葉と喋っていた間、由香も誰かと喋っていたららしい。
「……あ、もしもし? さっきの件についてなんだけど。うん。それそれ。……あーうん」
電話の相手と喋りながら、由香はサラサラとシャーペンでメモに走り書きをする。
「……んじゃばいばい。ありがとう」
「何? 何がわかったんだ?」
達也が少し怒ったように言うと、由香は言った。
「海藤成実のこと。このごろは、よく街をふらついてたらしいわ。それだけじゃなくて、少し妙な事も分かってきてるの」
由香は、眉根を寄せて考え込んだ。
「妙な事?」
「海藤成実は、何かを企んでたらしいの」