第二話 携帯電話の静寂
この学校には、『守護者』がいる。
生徒の行動を監視し、同時に生徒を護り、生徒の害になるものを排除する組織だ。
しかし、そんな集団が白昼堂々学校にいるわけにもいかないので、その代表として進藤由香が達也に情報を求めに毎日生徒会室に来ている。
達也としては、そんな集団に関わりたくは無かったし、興味も無かった。
だけど、由香にはもう『契約』を交わしてしまっているので、情報を公開する義務がある。
仕方ないが、そうするほかないのだ。
だが、達也だって生徒の情報を無料で教えるわけにはいかない。なんと言ったって生徒会副会長の責任がある。
そういうわけで、毎回由香から代金を頂戴しているわけだ。
そして由香にもう10回分滞納されるという最悪の結末。
ああ、乙葉がもう少しまともに仕事をしてくれればいいのに。
乙葉は私立清和学園の生徒会長だ。
しかし、当選しても全く仕事をせず、注意しようと思ってもいつも教室にはいない。
周りの人間はそろってどこに行ったか聞いても、「知らない」「あまり授業にこない」と口をそろえた。
乙葉の彼女の垣藤夏美も、全く知らないそうだ。
乙葉は全く仕事をしないし、そのうえ由香の件もあるし……
もうそろそろ達也は倒れそうだった。
ピッピッピ……
達也は由香を追って学園を抜け出してきたので、一応乙葉にも電話をしようと携帯電話で乙葉に連絡を取る。
「もしもし? 乙葉?」
すると、一拍遅れて声がした。
「あ……達也か? どした?」
「今ちょっと進藤と海藤成実を探してる。今日の生徒会は出れそうに無いから……」
言い終わる前に、乙葉は大声で言う。
「っやめろ! 海藤成実の件は危険だ。今すぐ手を引いた方がいい」
乙葉が大声で怒鳴るのは初めてのことだったので、達也は驚く。
いや、もっと驚いたのは海藤成実のことを乙葉が知っていたことだ。
乙葉にはそのことを話した覚えはない。
「乙葉……?」
気が付くと、電話は切れていた。