第一話 生徒会室の静寂
静寂に包まれた生徒会室には、一人の女が座っていた。
制服にはところどころにほつれがあったり、スカートも短くて、いかにも問題児という風貌だ。
段カットの髪の毛は恥じることなく堂々としていて、彼女が普段どんな人物であるかを思わせる。
「遠藤、いるんだったらさっさと出てきなさいよ」
彼女の気迫におされてか、ドアの影から男が出てきた。
「……すっかり生徒会室を乗っ取りやがって。副会長は俺だって言うのに」
私立清和学園生徒会副会長・遠藤達也はふてくされながら言った。
「何いってんの。さっさと報告してよね」
偉そうに文句をいう女子高生・進藤由香は眉をひそめた。
達也は静かに、透き通った声で手に持った紙を読み上げる。
「海藤成実は中学三年生。彼女は友人に評判の『占い師』だったらしい」
「占い師?」
由香が怪訝そうに聞いた。
「……今日の運勢とか。まあ、テレビの占いとそう変わらない」
「それで?」
達也は少し信じられないように言った。
「一度も外れる事は無かったらしい……」
由香が頷く。
「わかった。急いで私は彼女の行方を追うわ。……たく、なんで他の人の運勢占えて自分の運勢わからないんだろうねえ」
ブツブツ皮肉をいいながら、由香は生徒会室を出る。
すかさず達也は聞いた。
「代金は?」
「急いでるから、後」
達也はもう誰もいない生徒会室でため息をつく。
「そんなこと言って、もう10回分滞納してるくせに……」