第十五話 部屋での静寂
「今も!?」
いきなりそんなことを言われても、あまり信用できなかったが、今もいるのなら……
「進藤は、もしかして妖怪に?」
すると、さも不愉快というように『守護者』は声を低くした。
「先走るな。まだそうとは言っておらぬ。この話はただ単に『守護者』の発端について述べておるのだ。あの娘とは何の関わりもない。どちらかというと『死ねないもの』のあの女のほうに関係がある。どちらにせよ、今聞いておくべき話なのだ。さえぎったりするな。時間の浪費だ」
「はい……」
外の様子はわからないが、もう夜中……下手をすれば夜明けになろうという時刻のはずなのに、全く眠気は襲ってこない。それどころか、脳が活発になっているような感覚さえ起きる。
『守護者』の姿は全く見えないが、気配はまだ感じた。
「その妖怪をしずめるため、多くの術者が駆けつけた。とにかく全力をあげて妖怪退治に踏み切ったのだ。しかし、もう妖怪を止める事は叶わなかった。……まあ、そして術者の多くは今も死霊としてここにいるがな……つまり、それが『守護者』の実体だ」
そして、達也が何か言おうと口を開くと、その瞬間いきなり気配が増えた。増殖するかのように、大量の気配が……辺りを支配する。
「ほらな、集まってきおった。皆の者、今は戦う時ではない。あの死にぞこないの少女から進藤を奪還せねばなるまい」
ざわざわと気配が少なくなってくる。それに合わせるように、部屋が壊れた。壁がガラガラと崩れていく。
「んなっ……」
さっきの風と大差ない、まるで押さえつけられるような突風が達也に襲い掛かってきた。外の世界が……乙葉の血だらけの死体が、うっすらと見えて吐きそうになる。
そのまま風に乗せられて、達也は意識を失った。
そして、目が覚めると、そこには自分の部屋だった。
「え、あれ?」
きょろきょろと辺りを見回しても、昨日とあまり変わらない光景が広がっている。
でも、夢ではない。
由香を取り戻さなければいけない。そして、この手で海藤成実を殺さなければいけない。
達也は小さく、息をついた。