第十四話 再び・『守護者』の静寂
周りには誰もいなくて、達也は立ちつくす。
「どういう……ことだ?」
さっきまで傍にいた由香も、海藤成実も、あの中身の抜けたような校長達も、全て消えていた。元から何もなかったかのように。
その部屋には、かすかに匂いが残っていた。覚えのある匂い……由香の匂いだ。
「進藤?」
人の気配がしたので、達也は思わず周りを見渡す。
「遠藤達也……と言ったか。我ら『守護者』はここにいる。ただ、進藤だけ連れて行かれた」
老人のようなしゃがれた声が聞こえた。達也は『守護者』の声に耳をすませた。
「あ、おまえには我ら『守護者』の姿は見えぬ。あの娘はまだ人間としてうまくやれているがな。……この期に、話をしておくか」
『守護者』の気配が徐々に近づいてくるのがなんとなくわかった。何もない部屋には、達也とその『守護者』しかいないようだ。
「昔な、この学校には妖怪が住みついとったらしい。そこで、お祓いにきた若者が妖怪と『契約』を交わした。一旦それで事態は収まったかのように見えたが、実はそうではなかったみたいだ。その若者は事態をさらに重くしていただけだった」
達也にはその話はちんぷんかんぷんだったが、『守護者』は構わず話を続ける。
「その若者は、簡単で、かつ自分の身を守るために妖怪にこの土地を売った。つまりは、人間に見つからぬように潜んでおけと言ったのだ。妖怪はもちろんそれを実行し、しばらく潜んでおった」
「それで、その妖怪はその後どうしたんですか?」
話がやっと見えてきたので、達也は『守護者』に恐る恐る聞く。すると、なんてことないように『守護者』は言った。
「この土地……実はな、今もおるのよ。その妖怪の生き残りがな」