第十話 再び・隠された部屋の静寂
そこには、中身が抜けたように動かない人体がたくさんあった。
「……これは……」
ぞっとする光景の中で、由香も達也も立ちすくむ。
「ああ、これは人間の抜け殻みたいなものです」
その中には、昼間海藤成実の家で見つけた、校長の本に載っていた歴代校長の肖像画にそっくりな人たちがいた。
「まさか、おまえは……校長を?」
「殺してはいないわ。ただ、体をこっちに持ってきただけ」
校長たちは本当に人形のように動かず、海藤成実も動かない事をわかっているようにただ頷いている。
達也は、目の前に散乱している校長の体を、持ち上げてみた。すると、恐ろしく軽くて、身震いした。
みんな、死んでいるはずなのだ。生きているはずがない。なのに――……まるで生きているような感触がして、鳥肌が立つ。
すると、今まで状況を見ていただけだった由香が、達也にぼそぼそと話した。
「遠藤、海藤成実は今精神状態が普通じゃないから、話をまともに受け入れない方がいいわ。こっちも早いところ誰か呼んどかないと」
冷静に言ってはいたが、由香の額には、冷や汗がだらだらと流れている。
どうやら、状況は相当悪いようだ。『守護者』の目からしたら、このような異常な部屋が学校に存在している事自体危ない事なのだろう。
「いい? 海藤成実があっちの校長たちに気を取られている間に私が連絡取ってみるから、遠藤はあいつを見張っといて。……あと、最悪の事態も考えといてよ」
由香が達也にそんなことを言ったのは初めてだった。
達也は、由香と目を合わせないようにして、ゆっくりと頷いた。
祝・十話ですね!『コーズ』以来です。
これからも突っ走っていきたいです!よろしくお願いします。