夏、本番 @道中
今までの中で考えれば、今回はかなり読みやすくなっていると思います。
時間をかけた訳じゃないですが、月日は結構流れたのでこのくらい頑張らないといけないのかも。
あの、幻想郷全土を覆いつくした直射日光を遮ぎる濃い霧は、とある二人組によって元凶の人物を潰した(本人が言うには合意)為に一日かからずに全て消えた。
その日その場所にいた俺は内部事情を知っている。いや、俺もかの二人組に一方的にやられ、少なくはない被害を受けた被害者に入るだろう。
あの二人は加減をしない。知っているはずなのにもかかわらず加減をしようとしない。
格好をつけ、抵抗するような態度を取った自分を責めろと言われたら何もいえなくなってしまうのだが、それでもあれはただの虐めである。
死人が出れば虐殺といえるような程、奴はいろいろ踏みにじって行った。
思い出したくもないが、まるで戦争の捕虜になった気分だったとでも言っておこうか。
まあ、そんな冗談は置いておいて。
晴れたのは良いが、紅い霧がどこにどう消えたのだろう……?
あの霧の仕組みがわからない自分は知りもしないのだが、それは知りたいところだ。
いや、やめておいた方が良いかもしれない。
きっと説明されても分からないだろう。
原理が分からないのだから当たり前のことである。
逆に分かろうとして、説明を受ける前に一から学ぼうとして努力をしても……無駄な努力にしかならないだろう。
あれが、そんな生易しい物な訳がない。
いつとも変わらずに、出来ることをする。
それが的を外れず、はみ出さず、無難な選択なんだろう。
俺は軽トラを走らせて運送業者としての勤めを果たせば良い。
つまらないと思う人もいるかもしれないが、生き残るためには軽率には行動出来ないということを逆に理解しているのかと聞きたいところだ。
すべて、都合が良く自分の周りが動いてくれる訳がない。
世界は回っている。
変わり続けている。
誰を置いていく訳でもなく、マイペースに動き、気まぐれに何かを起こすのだろう。
まあ、そんな風に考えられるのは、その以前と変わら変わらない日常生活がしばらくは安泰に続くんだろうと心の中で思えているからだ。
心の中の適度な余裕さは大切なんだろう。
思考が偏らなければ、客観的的に考えるのも楽になる。
きっと、そんなプラス要素が絡み始めるのが今の俺の状態だろう。
……そう思えるだけ幸せなんだろうなぁ。
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あの異変と言われる数週間前の出来事で見過ごせない程に被害を被った紅魔館の修復も、大分進んできた今日この頃。
俺はまた、修理資材を届けに紅魔館へと軽トラを走らせている。
現在の速度は時速60km/h。
天気は晴れで、霧は出てなく前方の見通しも良好。
地面に関しては雨が一週間以上降っていないためか、特にぬかるみなどはなく緩い場所は見当たらない。
車を走らせるコンディショニングとしてはとても良いんだろう。
思えば、咲夜さんと最初に通った時この森の道はとても恐怖感を覚えた。
往復するにつれて慣れ、何となく怖くなくなったが、慣れて良い物だかは自分でも分からない。
しかし、何が怖いと言うのは、延々と木が続くこの道。
単純に前にへと走り続けるだけなのだが、それが何となく『いつか感覚が狂う』かもしれないという……そんな嫌な予感がしてならないからだ。
よく、高速道路で起きるような事故は感覚が狂うと言うよりは慣れで眠くなり居眠り運転になるということの方が多いのだが………例外はある。
少し、変な事を思い出し、冷や汗が垂れてきた首筋。
しかし、それとは裏腹に俺は力んでアクセルを右足で踏んでいた。
…まるで、何かに対して強がっているようだが、人間はだれも同じな気がする。
こうするのは自分だけじゃない。
下のメーターに視線を反らすと、そんな間にも、速度は徐々に上がりエンジンはかなり回転速度を上げていた。
左足でクラッチを素早く蹴るように踏み、外してからもう一度左足で踏み入れる。
左手でギアを一段階上げると、ギアがうまく噛んだらしく、不快な振動は来なかった。
右足はアクセルをまだ踏んでいる。
今日はエンジンの回りがとても良い。道路も最初に言ったよう道にぬかるみがない。
……気分でいつもよりもアクセルを踏んでいるだけなのかもしれないが、それでも気分が良いのだから悪い訳ではない。
そう考えると、何となく、今日はいい日になりそうな気がする。
いい日になればいいなぁ……
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あれから10分くらい走り進め、俺は無事森から抜け出し、湖で道草を食っていた。
さっさと紅魔館に例の物を届けろといえばそうなのだが……別に変に道草を食っている訳でもないのだ。
「あれ、こんなところでどうしたんです?」
ちょうど良かった。
そう思った俺は腰を上げ、声が聞こえた方に振り向く。
………俺が用事があった人物?
とは違うが、別に問題ないだろう。
「いや、チルノの奴に用事があったんだけどな……」
「そうですか、でもチルノちゃんは今何処かに出掛けてますよ」
チルノが出掛けてる………ね。
奴がいったい何処に行ったのかは知らないが、後に面倒臭くなるような問題を起こさないことを祈りたい。
溜め息を一度つくと、俺は軽トラの荷台からとある物を取り出す。
そして、だいちゃんにへとそれを差し出した。
「これはな……この間の『詫び』だと言って渡してくれ」
「チルノちゃんにですか?」
俺はだいちゃんの質問に「ああ」と答えるとだいちゃんの顔を見る。
それは………何だか、何とも言えないようなそんな表情。
「へぇ~………」
何だか、疑い深く俺の事を見ているだいちゃんこと大妖精。
俺はものすごく気まずい気分にになってしまっているが、何か変な事を俺は言ったか?
「こいつ、まさかロリコン……(ボソッ」
「なんだ? だいちゃん」
「いや、何でもないです」
ボソッと何か言った時、表情がめちゃくちゃ深刻と言うか何というか……
まあ、いい。考えとも分からないことは分からない。
余計な事を考えるのはやめよう。
「とりあえず、俺は今から紅魔館に荷物届けないといけないから……だいちゃん頼んだよ」
「まかしてください♪」
……おい、今度はなんでそんなに機嫌が良くなるんだよ。
良く意味が分からない俺は溜め息をもう一度つくと、振り返りながら反対側に歩いて行くだいちゃんに手を振る。
そして、軽トラに乗り込んだ。
そして、エンジンキーを差し込み……勢い良くキーを回す。
特に問題もなくエンジンはかかり、勢い良くエンジンは音を上げた。
準備は出来た……さて、と。
それじゃあ、仕事に戻りますか!
俺は少し先に見える紅い館に向かって軽トラを勢い良く発進させた。
次も品質が安定するかはわかりません。
自分は他の方と違って未熟ですから。