ツイてない運び屋…… 2
「それは、言わなくても分かるんじゃないかしら?」
「あはは…………」
ああ、今回もどうやら俺の逃げ場はないみたいだな………
逃げ場がないと言うか、逃げ道がないと言うか………ほぼ完全に追い込まれちゃったよ………
こんな時はどうすれ「おーい!! 速達で酒を何件か届けて欲しいんだ!!」
でかした、流石酒屋のおじさんだ!!
「はい、ちなみに何処まで?」
「ああ、神社に慧音さんの所。 そして、いつもの居酒屋に頼む。」
「優先順番は?」
「神社を先に頼む。
あの銭(ry
が遅れると煩いんだ……」
いや、アンタがわざわざ愚痴って遅らせているようなもんだ。
てか、逃げる逃げ道が出来た………
ホントに助かる。
「じゃあ、咲夜さん。 今日は急用が出来たので行くのは無理です。」
「午後からはだ「阿求があれで………」しょうがないわね………」
何故か知らないが………
阿求の名前を出したら、すぐに下がってくれたぞ………
「私は帰るわ。」
そう言い残して咲夜さんはその場から消えた………
「おお、良いお嬢ちゃんが居たのにな………」
おじさん、アンタのおかげでホントに助かったぜ…………
「おじさん、荷物はこれだけだよな?」
「そうだ。」
「じゃあ、行って来るから。」
「帰ってきたら言ってくれ。
いつもいつも世話になってて悪いから酒をやる。」
「おお、楽しみに帰ってきます。」
やっぱり、現代都市とは違って人が暖かいな………
いや、物をくれるからって言うことじゃないよ。
ホントだよ!!
〜〜〜〜〜〜
で、人里の外に出ようとした俺だったんだけど………
「行かせないですよ!!」
何故か阿求に道のど真ん中に立たれて………通れずにいる。
おい、人の財布から札を複数枚も取っておいて今度は一体何なんだよ!?
「あ、阿求…… 一体、どうした?」
「最近、メイドとイチャイチャしてるって言うじゃないですか!!」
誰だ、変な噂を広げた奴は………
阿求に変な風に伝わったら酷い事をやるのは分からないのか!?
「いや、俺にそんな趣味はないぞ!!」
「まだ、わかってないんですか………」
「だから、何でそんなデマをお前は信じ「そんなことじゃないです………」へ?」
いや、何そのドス黒いオーラ………は。
「だ・か・ら!!
光には私ひとりで十分なんです!!」
何だよ、それならそんなオーラをお前は周りに広げるな………
「いや、それはお前が言うことじゃないだろ!!」
てか、俺はお前「じゃあ、これを見ても………」
は?
阿求が体の後ろに隠していた手を出す………
「そ、それは…………」
「ふ、ふふふ………… これなら流石の光も欲しいでしょう?」
あ、ああ………
確かに、確かに………
欲しい…………
「て、てか…な、なんでお前がパイソンを持ってるんだよ?」
そう、阿求が手に持ってるのは……
あの有名なコルト社の『コルト・パイソン』である。
まさか、まさかのまさか!?
「阿求!! お前はそれを買うために俺の財布から札を取っていったな!!」
「え? あ、えっと…………」
よし、図星にドンピシャ!!
これなら押し切れる。
「じゃあ、それは元から俺の物だろ?」
「…チッ………」
今、阿求の奴………普通に舌打ちをしたよな………
最近、舌打ちって流行ってるのか?
「しょうがないですね………
これは、没収です!!」
はあ!?
「ちょ、待てお前!!」
「ダメです!! 光は私の気分を害しました!! だから、これはぼっ「お前ら…………」慧音!?」
こんな時に参上したのは………
「阿求……… お前は一体何をやっているんだ?」
「そ、それはですね……… こ、光…「それならこれは光の物だろ?」 うっ………」
よし、良いところに援護が………
「ところで慧音。 あとからお前の所に酒屋の親父から宅配物があるから。」
「今じゃダメなのか?」
「例の奴が速達になってるんだよ……」
「ああ、そうか……… それなのに阿求に行く手を阻まれていたと………」
「まあ………な。」
「阿求、ちょっと……こっちへ来い……」
「ひええ………」
まあ、自業自得だろ………
「じゃあ、俺は行ってくる。」
「ああ、気をつけてな。」
とりあえず………俺は、ようやく人里から出発することが出来た。
まあ、ただそれだけ………
うん、それだけ………