第8話「極光のアンサンブル」
氷と炎がぶつかり合い、爆発的なエネルギーの渦が生まれる。
グラキエスの放つ冷気が、ギガント・キメラの動きを鈍らせ、その強靭な皮膚を凍てつかせていく。極低温にさらされた装甲は、分子レベルで結合をもろくし、砕け散る寸前のガラス細工のように軋んだ。
そこへ、俺が全霊を込めた炎を叩き込む。
「今だ、カイ!」
エイスケの声が、俺の本能の引き金を引く。
俺は地面を蹴り、宙高く跳躍した。右腕にスターガードの全エネルギーを集中させる。スーツの限界を告げるアラートが視界の端で赤く点滅しているが、そんなものは無視だ。
「これで、終わりだッ!」
俺の拳が、凍り付いた怪物の胸郭にめり込んだ。
瞬間、急激な熱膨張が起こり、怪物の体が内側から破裂するような衝撃音が響き渡る。
氷の破片と炎の残滓が混じり合い、オーロラのような美しい光景が戦場に広がった。
断末魔の叫びと共に、巨大な悪夢が崩れ落ちていく。
勝った。
着地した俺は、余韻に浸る間もなく膝をついた。
使いすぎた。
力の解放による反動だけじゃない。戦闘の高揚感と、近くにいる運命の番のフェロモンに当てられて、体内の熱が制御不能になりかけている。
「レッド!」
駆け寄ろうとするブルーたちの足元に、再び氷の壁が立ちはだかった。
グラキエスだ。
彼は俺の横に立ち、冷ややかな視線をスターガードのメンバーに向けていた。
「勝負はついた。だが、この獲物は渡さない」
彼は倒れ伏す俺を軽々と抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこだ。
「おい、何を……」
抗議しようとしたが、声が出ない。熱い吐息だけが漏れる。
「黙っていろ。お前の体の状態、分かっているのか」
耳元でささやかれた言葉に、俺は体を強張らせた。
限界だ。目の前がちかちかして、甘い香りが自分の鼻をも刺激し始めている。
「レッドを返せ!」
「返す? こいつは最初から俺のものだ」
グラキエスは不敵に笑うと、氷の霧を巻き起こし、俺を抱いたままその中へと消えた。
仲間たちの呼ぶ声が遠ざかり、意識が闇へと溶けていく中、俺はただエイスケの胸の冷たさに安らぎを感じていた。




