第6話「揺らぐ仮面」
秘密の同盟を結んでから数日が過ぎた。
俺は普段通りスターガードの任務につきながら、エイスケから送られてくる暗号通信を解析し、ネビュラの動向を探っていた。
だが、その様子がおかしかったのか、仲間たちが俺に疑いの目を向け始めていることに気づいていた。
「レッド、最近様子が変じゃないか?」
トレーニングルームで、ブルーが声をかけてきた。
彼は生真面目な性格で、チームの参謀役でもある。
俺の些細な変化も見逃さない鋭さを持っていた。
「そうか? いつも通りだろ」
汗を拭いながらごまかそうとしたが、ブルーは納得していない様子で眉間にしわを寄せている。
「戦闘中の動きも、以前より慎重すぎる。それに……時々、誰かと連絡を取っているようだが」
ぎくりとした。
やはり、気づかれていたか。
「考えすぎだ。俺はただ、次の敵の襲撃に備えているだけだ」
「ならいいが。俺たちはチームだ。隠し事はなしにしてくれよ」
ブルーはそう言って肩を叩き、出て行った。
一人残された俺は、ベンチに座り込んで深いため息をついた。
隠し事だらけだ。
オメガであること。
敵の幹部とつながっていること。
何一つ、彼らに言えていない。
俺はリーダー失格なんじゃないか。
そんな自己嫌悪が胸を締め付ける。
オメガは、群れの中で守られるべき存在だ。
そんな自分が、強さを求められるリーダーの座にいること自体が、そもそも間違いだったのかもしれない。
弱音を吐きそうになった時、スマホが震えた。
エイスケからのメッセージだ。
『迷っている顔をしているな』
文面を見て、思わず周囲を見渡した。
どこかで見ているのか?
いや、ただの勘だろう。
あるいは、番としての直感か。
『俺はお前の弱さを知っている。だが、それがお前の欠点だとは思わない』
続いて送られてきたメッセージに、目が止まる。
『弱さを知っているからこそ、お前は誰かのために強くなれる。それが、俺が認めた「レッド」というヒーローだ』
胸の奥がじんわりと温かくなる。
敵である彼が、一番俺のことを理解してくれているなんて皮肉な話だ。
でも、その言葉のおかげで、少しだけ背筋が伸びた気がした。
そうだ。
俺はオメガだけれど、レッドだ。
みんなを守るために、ここにある。
たとえ嘘をつき続けているとしても、その信念だけは本物だ。
俺はスマホを握りしめ、心の中でエイスケに礼を言った。
次に会う時は、もう少し素直になれるかもしれない。
そんな予感を感じながら、俺はトレーニングを再開した。




