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正義のヒーローはオメガでした。悪の幹部に正体がバレて求愛されています  作者: 水凪しおん


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第4話「交錯する本能」

 それから数日後、エイスケの忠告通り、ネビュラの大規模な侵攻が始まった。


 湾岸エリアに出現したのは、複数の合成怪人と、それを指揮する新たな幹部候補たちだった。


「レッド! 右翼が崩されるぞ!」


 ブルーの叫び声に反応し、俺はブレイズソードを振るって敵をなぎ払う。


 だが、数が多い。


 それに、今回の怪人たちは連携が取れていて、いつものような隙がない。


(こいつら、統率が取れている……!)


 息を切らしながら周囲を見渡す。


 ビルの屋上に、あの黒いマントの姿はない。


 今回の作戦に、グラキエスは参加していないのか。


 ほっとしたような、どこか拍子抜けしたような、複雑な感情が胸をよぎる。


 いや、何を考えているんだ俺は。


 あいつがいないなら、好機だと思わなきゃいけないのに。


「グガアアアッ!」


 背後から怪人の爪が迫る。


 反応が遅れた。


 やられる――そう思った瞬間、どこからともなく飛来した氷の槍が、怪人の胴体を貫いた。


 怪人は悲鳴を上げる間もなく凍り付き、砕け散る。


「……!」


 見上げると、そこには彼がいた。


 近くのクレーンの上で、腕を組んで戦場を見下ろしているグラキエス。


 彼は味方を助けるためではなく、まるで俺を守るためにそこにいるようだった。


『グラキエス様! 何をしているのですか! 作戦行動に従ってください!』


 敵の通信だろうか、拡声器を通して他の幹部の怒鳴り声が聞こえてくる。


 だが、グラキエスは意に介する様子もなく、指先を軽く動かした。


 すると、俺たちスターガードを包囲していた戦闘員たちの足元が凍り付き、動きを封じられた。


「なんだ、あいつ……?」


 ブルーが困惑の声を上げる。


「仲間割れか?」


 ピンクも状況が飲み込めないようだ。


 俺だけが知っている。


 彼が何をしているのかを。


 あれは、俺への援護射撃だ。


 敵であるはずの彼が、味方を裏切ってまで俺を助けている。


 胸が熱くなる。


 あの時渡された抑制剤のおかげで、今日の体調は万全だ。


 ヒートの予兆もない。


 それなのに、心臓がうるさいほどに脈打っているのは、彼の存在を感じているからだ。


「レッド、行けるか!?」


 ブルーに促され、俺は我に返った。


「ああ、突破するぞ!」


 俺たちはグラキエスが作った隙を突き、一気に敵の包囲網を食い破った。


 乱戦の中、俺は一瞬だけ彼と視線を交わした。


 遠くて表情は見えない。


 だが、マスクの下で彼が笑っているのが分かった。


『見事だ、我が宿敵。そして、愛しい番よ』


 脳内に直接響いてくるような感覚。


 フェロモンを通じた共鳴現象だ。


 言葉ではない、感情の波動が伝わってくる。


 俺の活躍を喜ぶ彼の感情と、その強さに対する純粋な称賛。


 そして、ドロリとした濃密な執着。


 俺は剣を握る手に力を込めた。


 ふざけるな。


 俺は誰のものでもない。


 そう反発しながらも、俺の体は彼に見られていることで、かつてないほどに力を発揮していた。


 まるで、求愛に応えるかのように、俺の炎は激しく燃え上がっていた。


 この戦いが終わったら、あいつに文句の一つも言ってやらなければ気が済まない。


 そう思いながら、俺は必殺の炎を怪人に叩き込んだ。

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