エピローグ「夜明けの二人」
数年後。
スターガードのリーダーを引退し、後進の育成に当たっていた俺は、あるパーティー会場にいた。
国際的な平和条約の締結記念パーティー。
煌びやかなシャンデリアの下、着飾った人々が談笑している。
俺は慣れないタキシードに首元を窮屈に感じながら、壁際でグラスを傾けていた。
「隣、いいかな」
聞き覚えのある声に、心臓が跳ねた。
振り返ると、長身の紳士が立っていた。
歳を重ね、より渋みを増したその顔立ち。
エイスケだ。
「……招待客リストに、お前の名前はなかったはずだが?」
「裏口から入るのは得意でね」
彼は悪びれもせず、俺のグラスに自分のグラスを軽く当てた。
チン、と澄んだ音が響く。
「お疲れ様、元レッド」
「お前こそ、元将軍」
俺たちは顔を見合わせ、小さく吹き出した。
彼はもう、追われる身ではない。
長い時間をかけて罪を償い、影の世界から表の世界へと戻るための準備を進めてきたのだ。
「そろそろ、年貢の納め時だと思ってな」
エイスケは懐から小さな箱を取り出した。
「公式に、俺のパートナーになってくれないか。もちろん、公私共に」
箱の中には、二つの指輪が輝いていた。
一つは赤いルビー、もう一つは青いサファイアが埋め込まれている。
「……断ったら?」
「断らせない。俺は執念深いんだ」
俺は苦笑して、箱を受け取った。
「しょうがないな。引き受けてやるよ」
「感謝する」
エイスケは俺の手を取り、指輪をはめてくれた。
会場の喧騒が遠のき、二人だけの世界になる。
かつて敵対していた二人が、こうして同じ未来を見ている。
それはどんな奇跡よりも尊く、そして温かい現実だった。
「愛してるぞ、カイ」
「……俺もだ、エイスケ」
俺たちはグラスを飲み干し、新しい夜明けに向かって歩き出した。
つないだ手は、もう二度と離れることはない。




