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道路舗装業_異世界転生_アスファルトの魔術師 ~異世界道路整備録~  作者: もしものべりすと


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第二十四章 帰るべき場所(エピローグ)


目が——覚めた。


「……ん」


最初に感じたのは、柔らかな感触だった。ベッドの上に寝ている。清潔なシーツの匂いがする。


「誠一さん……!」


声が聞こえた。


目を開けると——リーナの顔が見えた。


涙を流している。


「よかった……! 目が覚めた……!」


「リーナ……」


誠一は、かすれた声で言った。


「俺は——生きているのか」


「はい……! 三日間——眠っていました……!」


三日間か。


体を起こそうとすると、全身に激痛が走った。


「まだ動かないでください……! 体力が——戻っていません……!」


「道路は——どうなった」


誠一が最初に尋ねたのは、それだった。


リーナは——笑った。


涙を流しながら、笑った。


「完成しました」


「完成——したのか」


「はい。あなたが——守ってくれました」


誠一は——天井を見上げた。


「そうか」


完成した。


人間領域と魔族領域を繋ぐ——和平街道が。


「……馬鹿なことをしました」


リーナが言った。


「勝手に——死のうとしないでください」


「すまない」


「もう——二度と、離しませんから」


リーナが——誠一の手を握った。


誠一も——握り返した。


「ああ」


約束した。


「もう——離れない」




数年後——


和平街道の上を、多くの馬車が行き交っていた。


人間の商人たち。魔族の商人たち。かつて敵同士だった者たちが、今は隣り合って商売をしている。


「いい光景だな」


誠一は——道路の脇に立っていた。


隣にはリーナがいる。手を繋いでいる。


「ええ。本当に」


二人の前を、子供たちが走り抜けていく。人間の子供と魔族の子供が、一緒に遊んでいる。


舗装された道路の上で。


「局長——いや、今は所長殿か」


声をかけてきたのは、ベルンだった。杖をついている。年を取ったが、目には相変わらず若々しい光が宿っている。


「所長など——やめてくれ。誠一でいい」


「そうか」


ベルンは笑った。


「弟子たちが——成長しておるぞ。お前さんがいなくても、道路を作れるようになった」


「そうか。よかった」


誠一は微笑んだ。


技術は——継承された。


自分がいなくなっても、道路は作り続けられる。


「グラムは?」


「新しいゴーレムを開発しておる。今度は——自動で補修ができるやつだそうだ」


「エマは?」


「水魔法の学校を開いたよ。若い魔法使いたちに、技術を教えておる」


「ガルドは?」


「王立道路局の——警備隊長だ。道路を守り続けておる」


誠一は——深く息を吐いた。


みんな、元気だ。


みんな、自分の道を歩いている。


「誠一さん」


リーナが言った。


「今日も——現場に行くんですか」


「ああ」


誠一は答えた。


「まだ——やることがある」


メルカトリア共和国との大陸横断街道。北方の凍土地帯への道路。海を越える架橋計画——


やりたいことは——いくらでもあった。


「俺は——道路を作るために生きている」


誠一は言った。


「それだけが——俺にできることだ」


リーナは微笑んだ。


「知っています」


「つまらない男だろう」


「いいえ」


リーナは、誠一の手を強く握った。


「あなたは——この世界を変えた男です。そして——私の夫です」


誠一は——笑った。


「ありがとう」




誠一は——今日も現場に立っている。


舗装道路の上を、人々が歩いていく。


馬車が通り、荷物が運ばれ、経済が回る。


平和が——続いている。


「俺は剣も魔法も使えない」


誠一は呟いた。


「だが——道を作ることはできる」


そして——道は、この世界を変えた。


「誰かの足元を支える仕事」


それが——黒田誠一の誇りだった。


「さあ——」


誠一は歩き始めた。


次の現場へ。


次の道路へ。


未来へ続く——道を作るために。


(完)






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