第二十二章 無道のセルジオ
誠一は——動けなかった。
戦闘能力がない。魔法も剣も使えない。ただ——見ているしかなかった。
セルジオの闇の魔力が、道路に突き刺さる。
亀裂が——走った。
舗装された道路に、蜘蛛の巣のようなひび割れが広がっていく。
「やめろ……!」
誠一が叫んだ。
しかし——届かない。
道路が——崩壊していく。
三ヶ月かけて作った道路が。命をかけて守ってきた道路が。
「これが——現実だ」
セルジオが笑った。
「お前がどれだけ作っても——俺が壊す。終わりのない——いたちごっこだ」
誠一は——絶望しかけた。
しかし——
「させるか……!」
声が響いた。
チームの仲間たちが——立ち上がっていた。
「ベルン!」
老人が、全身の魔力を振り絞った。
「土よ——我が意に従え……!」
土魔法が発動し、崩壊しかけた道路を——支える。
「グラム!」
ドワーフが、ゴーレムを操った。
「崩れた部分を——塞げ!」
ゴーレムが動き、亀裂を埋め始める。
「エマ!」
少女が、涙を流しながら叫んだ。
「水で——冷やします……!」
水魔法で、熱を帯びた舗装を冷却する。
「ガルド!」
元傭兵が、傷だらけの体で立ち上がった。
「セルジオを——止める……!」
剣を握りしめ、再び斬りかかる。
「リーナ!」
彼女も、何かを——している。
「援軍を——呼んでいます……!」
誠一は——見ていた。
仲間たちが——道路を守っている。
自分のために。道路のために。
「……俺も」
誠一は立ち上がった。
「俺も——何かできる」
何ができる。
戦えない。魔法も使えない。しかし——
「俺は——現場代理人だ」
誠一は叫んだ。
「全員の動きを——最適化する!」
ベルンに向かって——
「左側の亀裂を優先しろ! そこが一番危険だ!」
グラムに向かって——
「ゴーレムを二台に分散させろ! 効率が上がる!」
エマに向かって——
「水量を調整しろ! 冷やしすぎると逆効果だ!」
ガルドに向かって——
「一人で戦うな! 護衛兵と連携しろ!」
誠一の指示が——チームを動かした。
一人一人の力を——最大限に引き出す。
それが——現場代理人の仕事だ。
戦いは——数時間に及んだ。
しかし——
「くそ……!」
セルジオが、舌打ちした。
「なぜ——壊れない……!」
道路は——持ちこたえていた。
チームの連携が——セルジオの破壊力を上回っていた。
「お前たちは——」
セルジオの目に、驚きが浮かんだ。
「なぜ——そこまでして道を守る」
誠一は答えた。
「道は——人を繋ぐからだ」
「人を繋ぐ?」
「ああ。人と人を。国と国を。敵と味方を——」
誠一は言った。
「お前は——道を壊すことしか考えていない。しかし——道は、破壊するより作る方が難しい。そして——作る方が、意味がある」
「意味——だと」
「ああ。道を作れば——人々の暮らしが良くなる。物資が届き、経済が回り、平和が訪れる。それが——道の意味だ」
セルジオは——黙った。
「お前の言う通り——文明には問題がある。しかし——」
誠一は言った。
「問題があるなら——直せばいい。壊すのではなく。道路も——壊れたら直す。それと同じだ」
沈黙が流れた。
やがて——
「……負けた」
セルジオが呟いた。
「今日は——負けた」
しかし——
「だが——終わりではない」
セルジオの目に、狂気が宿った。
「最後の手段が——ある」
セルジオが——自分自身に向けて、魔力を集中させ始めた。
「何をする……!」
「道路を——永遠に壊す」
セルジオの体が——光り始めた。
「俺の命を——捧げる。そうすれば——この道路は、永遠に修復できなくなる」
「やめろ……!」
誠一が叫んだ。
しかし——
「遅い」
セルジオが——最後の呪いを放った。




