第二十章 最後の大事業
数ヶ月後——
アルヴィンは——決断した。
「道を——作ります」
国王となったアルヴィン——ゲオルクは失脚し、追放されていた——は、宣言した。
「人間と魔族の領域を繋ぐ道を。和平のための道を」
反対は——大きかった。
貴族たちの一部は、「敵国に道を引くなど、愚の骨頂だ」と批判した。軍部は、「敵に攻め込まれる道を作るのか」と反発した。
しかし——アルヴィンは譲らなかった。
「戦争を続けても、勝てる見込みはない。百年かけても決着がつかなかった。ならば——別の道を探すべきだ」
「別の道?」
「平和への道だ」
こうして——最後の大事業が始まった。
人間領域から魔族領域へ——「和平街道」の建設。
工事区間は——「死地」と呼ばれていた。
人間と魔族の国境付近。凶悪な魔物がうようよする、危険極まりない地帯だ。通常の軍隊では通過することすら困難だった。
「ここを——通すのですか」
リーナが、青い顔で地図を見つめた。
「ああ」
誠一は頷いた。
「最短ルートだ。ここを通さなければ、意味がない」
「しかし——危険すぎます」
「分かっている」
誠一は言った。
「だから——やり方を工夫する」
誠一の作戦は——「作りながら進む」だった。
道路を作りながら前進する。道路が完成すれば、補給が可能になる。補給があれば、前線を維持できる。前線が維持できれば、工事が続けられる。
「道が——兵站を支える。兵站が——前線を支える。前線が——工事を守る」
そのサイクルを——延々と繰り返す。
「人類史上最大の——『進撃道路工事』だ」
工事が——始まった。
最初の一キロは——地獄だった。
魔物が次々と襲来し、護衛兵たちが必死で防いだ。作業員たちは恐怖に震えながら、それでも作業を続けた。
「止まるな!」
誠一が叫んだ。
「作り続けろ! 止まったら——終わりだ!」
グラムのゴーレムが、限界を超えて稼働し続けた。エマの水魔法は、何度も涸れかけた。ベルンは高齢の体に鞭打って、土魔法を唱え続けた。
「工程が遅れれば——前線が崩壊する」
誠一は全体を見渡しながら、指示を出し続けた。
「品質が落ちれば——補給が途絶える。両方守れ」
極限状態での——工事。
しかし——
一キロ、二キロ、三キロ——
道路は、着実に延びていった。




