第十八章 勝利の道
冬の会戦の勝利は、王国中に歓喜をもたらした。
「道路のおかげだ」
「舗装道路がなければ、補給が間に合わなかった」
「黒田誠一殿は——英雄だ」
誠一の名声は——頂点に達した。王宮から褒賞が贈られ、貴族たちが次々と祝辞を述べに来た。
しかし——誠一自身は、喜んでいなかった。
「まだ——終わりじゃない」
リーナに言った。
「残り六十キロがある。そして——維持管理も」
「維持管理?」
「道路は——作って終わりじゃない。使い続ければ、必ず傷む。補修が必要だ」
誠一は窓の外を見つめた。
舗装された道路が、雪景色の中を貫いている。美しい光景だ。しかし——
「雪が溶ければ——凍結と融解のダメージが出る。春には補修が必要になる」
「分かっています」
リーナが頷いた。
「維持管理体制を——整えましょう」
春が来た。
予想通り、舗装道路のあちこちにひび割れが発生していた。凍結と融解のサイクルが、舗装にダメージを与えたのだ。
「補修だ」
誠一は陣頭指揮を執った。
ひび割れを埋め、穴を塞ぎ、表面を整える。地味な作業だが、道路を長持ちさせるためには不可欠だ。
「局長殿」
若い技術者が尋ねた。
「なぜ——補修にこれほど力を入れるのですか。新しい道路を作る方が——目立つのでは」
「目立つかどうかは関係ない」
誠一は答えた。
「道路は——使う人のためにある。使う人が快適に通れるように、常に良い状態を保つ。それが——俺たちの仕事だ」
若い技術者は——目を輝かせた。
「……分かりました。私も——頑張ります」
そして——
残り六十キロの工事が——始まった。
最後の区間だ。最前線に近いため、魔物の出没も多い。危険な工事になる。
「全員——気を引き締めろ」
誠一は朝礼で訓示した。
「これが——最後だ。全線開通まで——あと少しだ」
作業員たちが、声を揃えて応じた。
「はい!」
工事は——順調に進んだ。
冬の会戦で魔王軍は大きな打撃を受け、当面は大きな攻勢をかけてくる余力がなかった。魔物の襲撃も、ガルドたちの護衛によって撃退された。
しかし——
「局長殿」
ガルドが、険しい顔で報告してきた。
「荒野の使徒が——動いています」
「何?」
「彼らが——この区間を狙っているようです。大規模な破壊活動を——計画しているとの情報があります」
誠一の表情が——引き締まった。
「警戒を強化しろ。そして——」
「そして?」
「工事の速度を——上げろ。完成してしまえば——壊すのは難しくなる」




