第十一章 魔王軍の反応
魔王城——人間からそう呼ばれる、北方の巨大な城塞。
その最奥にある会議室で、魔王軍の幹部たちが集まっていた。
「報告があります」
参謀長が立ち上がった。青白い肌と、尖った耳を持つ魔族だ。
「人間側が——道路を整備しています」
「道路?」
玉座に座る魔王が、眉を上げた。巨躯を黒い鎧で覆い、燃えるような赤い目を持つ存在だ。
「はい。王都から最前線に向けて、新しい道路を建設しています。既に——九十キロが完成したとのことです」
「道路を作るだと? 何のために」
「補給路の整備かと」
参謀長は地図を広げた。
「人間側の最大の弱点は、補給です。我々が春に攻勢をかけるたびに、彼らは補給が途絶えて苦戦してきました。しかし——」
「道路が整備されれば、その弱点がなくなる」
「はい。報告によれば、舗装された道路は——通常の三倍以上の速度で移動できるとか。輸送能力も大幅に向上するでしょう」
沈黙が流れた。
「……厄介だな」
魔王が低い声で言った。
「誰が——その道路を作っている」
「黒田誠一という男です。人間ですが——どこか異国から来たという噂があります。舗装技術という、この世界にない技術を持っているようです」
「異国から——か」
魔王は顎に手を当てた。
「その男を——始末できないか」
「難しいでしょう。第二王子が後ろ盾についており、護衛も厳重です」
「ならば——」
参謀長が言った。
「道路そのものを破壊する手もあります」
「破壊?」
「はい。舗装された道路は——固いですが、破壊できないわけではありません。魔法で穴を開ければ、使えなくなります」
「それを——何度でも繰り返せば」
「道路整備は無意味になります」
魔王は考え込んだ。
「……いや」
やがて、首を振った。
「それでは——いたちごっこだ。我々が破壊しても、人間は修理するだろう。永遠に終わらない」
「では——どうすれば」
「道路を作る者を——始末する」
魔王は言った。
「黒田誠一。その男がいなければ——道路は作れない。技術を持つ者を排除すれば、道路整備は止まる」
「しかし——護衛が」
「護衛を突破できる者を送れ」
魔王の目が、赤く輝いた。
「刺客を——放て」
誠一は——知らなかった。
遥か北方で、自分の命を狙う決定が下されたことを。
しかし——予感はあった。
「最近——妙な気配を感じます」
ある夜、ガルドが言った。
「気配?」
「はい。監視されているような——」
「魔物か」
「いえ。魔物とは違います。もっと——巧みに隠れている何かです」
誠一は表情を引き締めた。
「警戒を——強化してくれ」
「了解です」
嵐が——近づいていた。




