<民族大移動>
決断を求められた日本国民の決断。
その結果は日本国内に留まる日本人と海外に一時避難することになる日本人難民を含めて約1億人がメガフロートへの移住を決め、約2000万人が移民や難民として世界へと散ることとなり、日本の沈没は政府によるデマだという陰謀論を信じる者や日本よりも自分の寿命の方が先として移住を拒否した約100万人が日本に残ることとなった。
日本人の6人に1人が移住をするというのは少なくはない人数であったが、そもそもメガフロート上の国家など前例がなく日本政府はメガフロートへの移住に関して安全確保のため今までの日本にはなかった強制力を持つ避難命令や外出禁止令の制定を発表していた。
これによりと元々政府に批判的な層や海外に根拠のない憧れを持つ者が世界各国の移住受け入れをこれ幸いとして日本国外へ出るという決断を下したことが大きいというのが岸多内閣の見解だ。
ともかくこうして日本人による最終的な決断により日本政府は取り急ぎ最低1億人分の住居をメガフロート上に建設すれば良いという目標ができ、この日を境に日本の民族大移動が始まることとなるのであった。
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そして今まで隠されていた日本の沈没が明らかとなり、日本人自身が自らの歩む道を決めたことによって世界ではようやく各国の政府が日本人の受け入れに動き出していた。
特に一番多くの難民と国籍取得の申請を受け付けたアメリカでは難民施設をすでに完成させており、施設の敷地内は日本政府との合意のうえで日本国内として運用されることが決まっていることから施設内では日本の法律が適応されるほか敷地外へと出る場合にはパスポートが必要となっている。
なかにはアメリカ国籍の取得を希望してアメリカに到着したものの在日米軍基地への過激な抗議活動が明らかになった日本人が難民施設へ送られるなど難民施設は移住を拒否された日本人の返却先としても機能することとなる。
一方でこのように多くの日本人が日本という場所を出ていくなか、逆に外国から日本へと上陸を行なおうとする者も出てくるという想定外の問題も発生していた。
不法入国をしようとする理由は様々であったが主な理由としてはアメリカやヨーロッパから来た者たちが韓国から不法に日本へと上陸して現在の日本の状況ネット上に公開することを目的としていたり、大陸から来た者たちが日本の沈没を信じず日本へ不法な入植を行なうことを目的としていたりしたのだ。
だが、これらの企みはいずれも海上保安庁の巡視船によって防がれることとなる。
日本はすでに陸上の拠点から海上のメガフロートに海上保安庁や海上自衛隊の機能の一部を移しており、沈むことが分かってるとはいえ日本の領土がある限りは最後までそれを守り抜く決意を持っていたのだ。
こうして様々なことが起こりつつも日本では一部の日本人が外国への避難と移住を進めることとなり、希望する日本人の避難と移住が完了後、日本は元通りとは言えないまでも人口の減った状態で日常へと徐々に戻ることとなる。
そして全てを見届けた在日米軍は戦後初めて日本を完全に離れることとなるが在日米軍の撤退先はすでに基地があるグアムと韓国だけに留まらず台湾にまで避難をすることとなり、これは中国政府の非難を受けることとなるが台湾の米軍駐留を既成事実化するというのは岸多から見ても実に見事なものであった。
また、こうして全てを見届けた岸多は党の総裁としての任期から総理大臣という役職を後任へと譲ることとなり、こうして政治的にも現実的にも日本の沈没について一区切りがつくこととなったのである。