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海上国家日本  作者: osagi
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<真実のとき>

 計画始動から7年。情報を伝えられていない週刊誌などに今世紀最大の箱物、税金の無駄遣いとされながらも完成したメガフロート都市。


 現在、都市は工場と社員寮が建ち並ぶ企業城下町として栄えており、メガフロートという地面が計画的に作られたその場所は近未来的な都市として順調に稼働していた。


 そして今日、このメガフロートの浮かぶ都市こそが今後の日本の姿になるのだということがついに国民へと発表されることとなる。


 すでに首相官邸にある記者会見場には大勢の報道陣が集まり会見の様子は総務省の命令によりすべてのテレビ局とラジオ局で生中継され、それは衛星放送やケーブルテレビなども例外ではなく『重大会見』とされるその会見の内容に日本国民全員が注目していた。


 いや、もっと正確に言うならばその会見は全世界に注目されていた。テレビ局による会見の映像は世界中へと配信されているのだ。なぜならすでに全世界の人々は日本で巻き起こる異常な事態に気付いているのである。


 どういうことかというと各国政府は日本の沈没発表後に日本国内の混乱に自国民が巻き込まれることを警戒し、すでに日本の国内外で様々な対策をとっていたのだ。


 それは自国への日本人の入国禁止から自国民の日本への渡航禁止にまで及び、つい先日には各国政府が日本にいるすべての自国民に対して現地の日本人に気づかれないように速やかに日本を出国するようにとの『命令』を出していた。


 もちろんこのようなことはすぐにネットで世界中へと広まることとなり、世界から孤立することとなった日本の発表に世界中の人々が自分たちの政府やマスコミがひた隠しにするその答えを求めていたのだ。



・・・・・



 全世界のまだ何も知らない人々が注目した岸多の会見、その言葉は永遠に世界の歴史に残ることとなるだろう。


 「―――日本は沈没します。―――」


 岸多の口からこの言葉が発言された瞬間、世界中に衝撃が走った。


 岸多の発言に前後して世界中で株の売買が一時停止され、世界から消えることになるかもしれない日本製の買い占め競争が始まることとなったのだ。


 そして一気に社会に不安が広がった国々では暴動と略奪があちこちで発生することとなり、その混乱は数日にわたって続くこととなったのである。


 一方、日本国内の混乱はそれほどではなかった。


 根回しをされていた経済界はすでに発表に備えていたほか国民にいたっては災害に慣れていることもあり混乱が発生するよりも先に岸多の日本浮島化計画、日本そのものをメガフロートへと移す計画を聞くこととなり未だに危険だという実感がない日本国民は終始落ち着いていたのだ。


 そして岸多の会見が終わると各国の駐日大使館は難民の受け入れを開始した。


 主に日本人の難民受け入れについてはメガフロートの日本が完成するまで住むことができる難民施設への入所受付が主であったが、なかには人数制限付きで国籍取得による移住という難民受け入れという名の人材獲得を行なおうとする国も現れていた。


 だが今の日本にはメガフロートに受け入れることとなる人数を確定させるのが先決であり、日本政府は遺憾の意を表しつつもその人材が日本として必要なのであればメガフロートの完成後に再び日本国民として受け入れるというスタンスを述べるに留まることとなった。


 ―――こうしてこの日、日本国民は運命の選択を迫られることとなる。


 日本が沈めばそれまでと危険ではあるが住み慣れた日本でメガフロートが完成するのを待つか、日本にいるのは危ないとして難民として海外でメガフロートが完成するのを待つか、メガフロートという場所に住むことを拒否して日本という国を捨てて海外に移民もしくは難民となることを決めることとなったのである。





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