第3話 Beaconの正体
「では、これより今回のBeaconを発表します。」 モニターが新たな画面に切り替わるとスクリーンが暗転する。その瞬間、静まり返っていたスタジオに新たな緊張感が漂い始め誰かの唾をのむ音がやけに大きく感じる気がした。
暗転した画面に、Beaconの紹介映像が流れ出す。ステージ上で光を浴びる一つのシルエット。一目でスタイルの良さを感じさせる手足の長さや均整の取れた姿が華麗に踊っている姿に目を離せない。
スタジオとスクリーンが暗転し音楽が流れた瞬間、参加者たちの間にざわめきが広がる。この曲は、昨年大ヒットしたドラマの挿入歌。聞き覚えのあるその旋律が耳に届いた途端、スタジオから小さな歓声が溢れ出た。そして、ステージライトが暗闇を切り裂き、光に浮かび上がる一つのシルエット――。後ろ姿だけでも見る者を圧倒するその姿に、スタジオ内の熱気が一気に高まっていく。
numbersの零。
その名を認識した瞬間、加者たちの顔に驚きと期待が入り混じった表情が広がる。その中で璃桜の頭には、一ヶ月前の電話が鮮明によみがえった――。
~1ヶ月前~
「零さん、なんかオーディション番組に出るよう社長に言われた。」
「聞いてるよ。」
何気なく返されたその一言に、璃桜は少しムッとした表情を浮かべた。
「零さんも俺に足りないものがあると思うの?俺を育てたのは零さんなのに――」
「璃桜は技術や才能は確かにある。でも……まだおこちゃまだからなー。」
零が笑いながら言った言葉に、璃桜は(もう子供じゃないし……)と内心思いつつも、技術を認められていることにはほんのり嬉しさがにじむ。
「でもな、技術だけじゃなく、この経験から得られるものも必ずある。それがきっと、お前をもっとトップアイドルに近くするよ。」
その言葉の意味はまだ完全には理解していないが、璃桜にとって信頼を感じさせる大事な一言だった。
~現在~
映像が切り替わり、スクリーンに名前が表示される。同時に、スポットライトを浴びながら舞台へと歩いてくる零。その姿は目を離せないほど洗練され、目を離すことが罪のように感じられるほどだった。
「皆さん、初めまして。今回皆さんを導くBeaconの大役を仰せつかりましたnumbersの零です。」
会場内が一瞬で静まり返り、誰もが彼の言葉を聞き漏らすまいと真剣な表情をしている。その中、璃桜だけは珍しく柔らかな笑みを浮かべていた。
零と目があい、珍しい璃桜の表情に零が一瞬目を見張ったのが分かった。しかし次の瞬間には表情を整え、彼は毅然とした態度を崩さない。
「今回のオーディションで皆さんを成長させてくれるであろうトレーナーの皆さんと共に、今から皆さんのレベル分けを行います。」
零の言葉に会場内の緊張が再び高まり、参加者たちは自然と背筋を伸ばし、視線を彼に釘付けにした。