第2話 Starlight Trailとは
席に腰を下ろすと、天井のライトがふっと消えた。ほんの数秒前までざわついていたスタジオは、一瞬で静寂に包まれる。薄暗くなった空間に、ピリッとした緊張感が漂い始めた。
前方に設置されたモニターが明るくなり、大きく「Starlight Trail」のロゴが浮かび上がる。参加者たちの視線が一斉にモニターへと集中するのが感じられた。
「これから、今回のオーディション形式をご説明します。」 機械的な音声が場内に響き渡る。その瞬間、空気が張り詰めるのが分かった。
「今回、この場に集まった参加者は100名です。第1選考では、5つのステージを行い、そのパフォーマンスを基にトレーナー、プロデューサー、Beaconの皆さん、そして視聴者であるTrailblazersの皆様が評価を下します。この選考を通過できるのは、たった21名のみです。」
モニターに表示される説明が次々と切り替わり、緊張に息をのむ音が響き渡る。
「第2選考では、プロデューサーが参加者の中から3名ずつを指名し、7つのグループを編成します。そして各グループは、プロデューサーが手掛けるオリジナル曲を披露するステージに挑んでいただきます。」
参加者たちの間にざわめきが広がる。グループの数、ステージの内容――そのどれもが不安と期待を掻き立てていく。
「最終審査では、トレーナー・プロデューサー・Beaconが選んだ総合1位のグループと、Trailblazersの皆様が選んだ総合1位のグループが選出されます。これらのグループは全員デビューとなります。ただし、1位のグループが重複した場合は、1グループのみがデビューです。」
「さらに、残ったグループの中からトレーナー・プロデューサー・Beaconが1名、Trailblazersの皆様が1名を選び、追加枠としてデビューするメンバーを選出します。この選考によって、計5~8名が最終的にデビューする形となります。」
説明が終わると同時に、会場全体にざわめきが広がった。期待と不安が混じり合った空気の中で、璃桜はモニターから目を離せずにいた。
少しして画面が切り替わり
「これより、2週間後にTrailblazersの皆様に向けて発信される動画について説明を始めます。」 静まり返ったスタジオに響く機械的な音声が、一瞬で空気を切り裂いた。モニターが明るくなり、大きく「レベル分けテスト概要」と映し出される。
参加者たちの視線がまた一斉に画面に集中する。誰もが身じろぎ一つせず、その場の空気が張り詰めるのを感じた。
「今回使用する楽曲は、このオーディション番組のために作られたオリジナル曲となります。しかし、皆様の多くはまだデビュー経験がなく、未成熟な部分が多いと判断されています。そのため、皆様にはレベル分けテストを受けていただき、各レベルで切磋琢磨しながら実力を磨いていただきます。」
息を呑む音が、静まり返ったスタジオ内で微かに響く。モニターには4つの大きな文字が映し出される――Gレベル、Sレベル、Cレベル、そしてFレベル。
「ただし、楽曲を披露できるのはGレベル、Sレベル、Cレベルの参加者のみとなります。Fレベルに所属する方は、基準を満たしていないと判断され、ステージでの披露はできません。」
その言葉に、会場全体が凍りついたような雰囲気に包まれた。モニターには、それぞれのレベルごとの条件や基準が次々と表示されていく。
「また、楽曲のセンターを務めることができるのはGレベルの皆様のみです。そして、レベル別で待遇にも差があります。それぞれの待遇の差を説明します。」
モニターには、各レベルの環境を映した映像が次々と流れる。 Gレベル――広々とした個室に専属コーチが付き、整えられた豪華な食事。落ち着いたトレーニングルーム、充実したサポート。誰もが憧れる理想の環境だ。 Fレベル――粗末な布団が敷かれたレッスン室。配布された弁当が並ぶ寒々しい部屋。その映像が突きつけるのは、光と影の圧倒的なコントラストだった。
「より良い環境で成長し、オーディションを勝ち抜くためにも、ぜひGレベルを目指して努力してください。」
俺はモニターを見つめながら、胸の奥がざわつくのを感じていた。この闘争心をあおる演出――久しぶりに感じる高揚感。最も厳しいGレベル。俺ならば、その座を掴み取れると。
「ただし、Gレベルに所属できるのは5名のみです。この後のレベル分けテストでGレベルの候補者が5名を超えた場合、全員のテスト終了後、トレーナー・プロデューサー・Beaconの皆様による順位付けを行います。その上位5名がGレベル、6位以下の方はSレベルに振り分けられます。」
5人――たった5人だけ。その言葉が会場全体に響き渡る。参加者たちの間にはざわめきが広がり、険しい表情や自信満々の顔が交錯している。
「では、これより今回の皆様の夢を指し示すBeaconを発表します。」
モニターの画面が新たな映像に切り替わる。会場全体の空気がさらに張り詰め、画面が暗転した瞬間、Beaconの紹介映像が流れ出す。
その瞬間、会場中にざわめきが広がった。
俺もその映像を見た瞬間に分かった――彼が電話で言っていた。「このオーディション番組に出る意味がある」と言っていた意味を。
心の奥に、これまで感じたことのない熱が灯り始めるのをまだ璃桜は自覚していなかった。