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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第四章 新緑騎士団第一隊

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馬車の中の話し合い(2)

「というのが我々四人の意見だ。で、フロル?おまえの意見は?」

とアレクは聞いた。


「・・私が辞めたくないと言ったら辞めずに済むんですか?」

「辞めたくないなら辞める必要はない。無理矢理辞めさせる権限は、ここにいる誰にも無い。」

「アレク!」

とユーリが眉を吊り上げて叫んだ。


「我々は『辞めろ』と勧めただけだ。決めるのはフロルだ。フロルが絶対辞めたくないというのなら、どちらかが納得して意見を翻すまで話し合うまでだ。」

「私、辞めたくないです!」

とフロルは叫んだ。


「兄弟に会いたいんです。私にはもう血の繋がった家族はその兄弟しかいないから。兄弟探しを続けたいんです。諦めたくないんです!」


「わかった。だったら騎士団に残って兄弟探しを続けたらいい。微力ながら僕も力になるよ!」

とマクスが言った。

他の三人の隊長と、ついでにリーリアがジトっとした視線を向ける。


「考えを翻すのが早過ぎないか?」

とヴェルが呆れた声で言った。


「今日、僕はフロルにたくさん迷惑をかけた。だから僕はフロルに償いたいんだ。フロルの意見を尊重したいし、僕はフロルの助けになりたい。」

「マクス様。」

フロルの目が潤んだ。


「助けになりたい、ね。」

と言ってアレクがため息をついた。


「私も、意見を変えるよ。辞めろ、と言ったのは覚悟を問っただけだ。フロルが辞めたくない。辞めない事で受ける不利益や危険を甘受する覚悟がある。というのなら別に構わない。というか、フロル?覚悟はあるんだな?」

「あります。」

フロルは即答した。


「正気か、アレク⁉︎」

ユーリが驚きの表情で言った。

「正気だが。」

「誰より、騎士団内のルールに厳しいおまえなのに。」

「そんな事はない。ルールより重要なものがこの世にはあると思っている。」

「重要なもの?何だ、それは?」

「グリューネバルト伯爵との約束だ。」


その名前が出ると全員の顔が神妙なものになった。


「『約束』って何ですか?」

とフロルが聞いた。


「私達、旧第一隊の人間達はあの事件の後グリューネバルト伯爵を訪ねて御礼の言葉を伝えた。そして、伯爵閣下が何か助けを必要とする状況になられた時には何をおいても力になると言った。だけど閣下は

『私の助けになってくれる必要はない。それよりも、君達のすぐ側にいる人達の中で助けを必要とする人がいたら、迷わずにその人達を助けてあげなさい。そうやって助けの手が人から人へとつながっていったら、この国はもっと良い国になる』

とおっしゃられた。私はその約束を必ず守ると、その時心に誓った。だから、フロルが困っていて助けを必要としているなら、フロルを助けるよ。」

「アレク・・。」

「私は皆と違って、ニワトリのような心臓の持ち主なんでね。裁判が終わって、翌日鞭打ち刑にされると決まって、その日の夜独房で怖くて怖くてたまらなかった。死ぬ事ではなく長く続く苦痛が、その苦痛の為に自分の信念に背くような事を考えて態度に出してしまうかもしれない事が怖かった。そんな事になるくらいなら独房の壁に頭を打ちつけて死んでしまおうかと思った。でも、そうする勇気も無かった。独房の中で一人で、恐ろしさと悔しさと不甲斐なさとでずっと泣いていた。」

「・・・・。」

「だから私は、ものすごくグリューネバルト伯爵に感謝しているんだ。騎士として剣を捧げた相手は王太子様だ。でも、忠誠はグリューネバルト伯爵の元にある。伯爵閣下が言われた事は何をおいても守ってみせる。そしてフロルはグリューネバルトの民だ。だから尚更、私はフロルの力になりたい。」


・・・・。

重い話にフロルは絶句していた。何と相槌を打てばよいのかわからなかった。

自分はわかっていなかった。


『正義の為に動いた新緑騎士団員が悪の侯爵夫人に無実の罪を着せられて、鞭打ち500回の刑にかけられそうになったがグリューネバルト伯爵が新緑騎士団員を救った』


と言うふうにしか思っていなかった。

騎士団員がその最中に感じた葛藤や恐怖をまるで理解していなかった。あの事件の時アレクは今のフロルより若かった。10代半ばの少年が有罪判決を受け、その罪を贖われるまでどんな気持ちで過ごしていたのか?考えてみようとさえしていなかった。


それに比べて父の何と偉大な事か。その偉大な父に私は何度助けられるのだろう。もう感謝の言葉を届ける事さえできないというのに。


「俺も怖かったよ。」

とヴェルが言った。

「気が狂いそうなくらい怖かった。独房の中で眠れなくて・・。」

マクスもうなずいて言った。

「僕だってだよ。」

「いや、おまえ俺の隣の独房だったけどかなり早い段階でいびきが聞こえて来たぞ。」

ヴェルはそう言ってから


「俺もフロルに協力するよ。グリューネバルト伯爵のご意向には逆らえないもんな。だいたい反対して騎士団から追い出すと、もっと無茶をこの二人はしそうな気がする。目の届く範囲にいてくれる方が安心だ。」

そう言ってフロルの肩をバンバンと叩いた。


「じゃあ1対3だな。ユーリ、やっぱり反対か?」

とアレクが聞く。ユーリはじろりとフロルを睨んで言った。

「・・兄弟が見つかったら騎士団を辞めるのだな?それならば、見つかるまでの短い間だけ見逃そう。見つかるか、騎士団内に兄弟がいない事が確認できたら必ず辞めるように。」


「皆さん、ありがとうございます!」

フロルは泣きながら言った。

涙が出て来て止まらなかった。

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