ツヴァイク家の夜会(3)
その勢いに、会場にいた全ての人がフリーズした。
「あんたは、女に何をやらせてんのよ!仮にも恋人を名乗っているのに周囲の悪意から守りもせず、まるで商売女のようにストリップの真似事をさせられているのをアホヅラさげて眺めてるとか、いったいあんたは何の為に存在しているの!あんたみたいな男にフロルの事は任せられない。フロルは連れて帰るから、あんたは金輪際フロルの半径5メートル以内に近づくなっ!わかったわね‼︎」
そう言ってフロルの手を握り引っ張って歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って。リーリアさん!」
殴られた頬を手で押さえ、マクシミリアンが慌てて言った。その時。
ドアの側に立っていた長身の男性がマクシミリアンの側に歩み寄り、マクシミリアンの頭頂部に拳骨を落とした。
ゴンっ!
とすごい音がしてフロルは息を飲んだ。
「う、うぅ。」
と頭を押さえてマクシミリアンがうめいている。
「ナインハルト様!」
とヴェルギールが言った。その名前にフロルは聞き覚えがあった。マクシミリアンから聞いたのだ。マクシミリアンの父親の名前である。
「こちらのお嬢さんの言う通りだ。おまえは猛省しろ。」
「ち、父上。」
「おまえに結婚など、千年早い。今の未熟なままのおまえでは妻となってくれる女性も生まれてくる子供も不幸にするだけだ。結婚など、この父が許さん。」
そう言ってからマクシミリアンの父親はフロルの方を振り返り、頭を下げた。
「本当に申し訳ない事をした。一族の代表として謝罪する。」
「あ、いえ、そんな。」
フロルは必死に首を横に振った。
それと同時に失望していた。
このお父さん。マクシミリアンに激似だ!
間違いなくマクシミリアンはこの男性の息子だ。だから、ようするにグリューネバルト伯爵の息子じゃあないって事だ。
「母上も彼女に謝罪してください。新緑騎士団の新しいデイムは底意地が悪く嘘つきと評判の娘ですよ。そんな女を信じ込んで簡単に騙されるなんて。」
「ごめんなさい。」
さっきまでの冷たい態度とは別人のように打ち萎れて、マクシミリアンの祖母は謝った。
「私が悪かったわ。本当にごめんなさい。ただ・・私があなたを男性だと信じ込んだのは、デイムからの手紙を信じたからでも、あなたの見た目がどうこうという事でもないの。『心に決めた人がいる。その人を連れて来る』と言った時のマクシミリアンの様子を見て・・嘘だと思ってしまったの。あなたは、とても可愛らしい見た目の素敵なお嬢さんだわ。そんなあなたに本当にひどい事をしてしまった。本当にごめんなさい。」
・・そう言われてしまっては怒れない。家族だからこそ孫の嘘がこの人にはわかったのだろう。マクシミリアンとフロルが恋人同士というのは確かに嘘だったのだから。
というより、マクシミリアンのパパさんの『新緑騎士団の新しいデイムは底意地が悪く嘘つきと評判の娘』ってセリフの方が気になる。そんな噂がたってんの?本当の事だけど。
「母上もこれに懲りたらマクシミリアンに結婚を強制するのはやめてください。この愚か者に結婚はまだ早いです。」
「愚かだから結婚させたかったのよ。新緑騎士団の新しいデイムが評判の良くない人だという事はわたくしも聞いているわ。そんな評判の悪い女性を騎士団に推薦したのはマクシミリアンで、そんな彼女とマクシミリアンが親密過ぎると騎士団の中でも不満の声があがっていると聞いて。何とかしなくてはいけないと思ったの。」
噂、恐るべし!
それだけ、新緑騎士団が王都で人気の騎士団だって事なのだろうけれど。
しかし。
フロルは頭を抱えた。
これ、100%マクシミリアンが悪いんじゃない!
マクシミリアンが評判の悪い女性と深い仲だと噂になっていて、だからお祖母様はその女性との仲を引き裂こうとマクシミリアンを結婚させようとした。それに対してマクシミリアンが偽物の恋人を家に連れて戻って来て・・・。
アレク様が言う通りだった。関わってもろくな事はなかった。関わった私はほんとアホだった。
「帰りましょ、フロル。」
と言ってリーリアが腕を引っ張ったので、フロルはマクシミリアンの父と祖母に一礼をして部屋を出て行った。
そのまま屋敷を出て行き。風の冷たさにフロルはくしゃみをした。
「辻馬車を拾って来る。」
といつの間にか後ろにいたアレクが言った。
「ちょっと、ゆっくり話し合おうな。」
ひっくい声でそう言われ、フロルは震え上がった。
嵐は一つ去りましたが、次なる暴風がフロルに迫っています(^◇^;)
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