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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第四章 新緑騎士団第一隊

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ツヴァイク邸の夜会(1)

そうしてやって来た、訪問日当日である。


フロルは、マクシミリアンが用意してくれたドレスに着替え、かつらを被り、薄化粧をしてツヴァイク邸を訪問した。


「すごいな、フロル。女の子にしか見えないよ!」

とマクシミリアンはフロルの姿を一目見るなりそう言った。


見えなかったら、泣くよ、私は。

とフロルは心の中で思った。


マクシミリアンの用意してくれたドレスはIラインのドレスだ。キャミソール型のロングドレスの上に、ポンチョのような上着を羽織り、肩幅や胸などのラインを隠している。色は綺麗なピンク色でフロルは、グリューネバルト伯爵の嫁探しパーティーの時の事を思い出していた。


「御手をどうぞ、姫君。」

と言ってマクシミリアンは手を差し出した。フロルは手袋をはめた手を重ねた。

その姿を、リーリア、ヴェルギール、アレクサンデル、ユリウスの4人がジーッと凝視している。何故か、この4人がツヴァイク邸までついて来たのだ。


だったらリーリアが、恋人役をしてくれたら良かったのに!


ツヴァイク邸は、旧市街と呼ばれる地区にあった。王都でも歴史のある地域で、古い歴史を持つ貴族家の屋敷が多いのだという。ツヴァイク邸は蔦の絡まる瀟洒な洋館でかなりの広さがあった。屋敷の前には複数の馬車が停まっている。今日の夜会にはまあまあな数の客が招待されているようだった。


フロルはマクシミリアンと一緒に屋敷の中に入った。本来はエネミーであるはずのリーリアやユリウスが一緒にいてくれる事が不思議と頼もしかった。

執事に案内をされ、フロル達は夜会会場に入った。


会場には、ざっと30人くらいの人がいた。

これが、生まれて初めて参加するパーティーであったならフロルも緊張しただろう。

しかし、グリューネバルト伯爵の嫁探しパーティーや王宮での新年会を経験した身である。それらに比べるとはるかにこぢんまりとした集まりで、フロルは落ち着いている事ができた。


マクシミリアンはフロルの手をとったまま、中央のソファーに腰掛けている貴婦人に近付いて行った。


「お久しぶりです。お元気でしたか、お祖母様?」

そう言って祖母の手をとり、手の甲に口づけした。ピーコックグリーンのドレスを着た老婦人は、ひどく冷たい目で孫を見つめ返した。


「彼女が、以前僕がお話しした女性です。」

とマクシミリアンがフロルを紹介したのでフロルはにっこりと微笑み、カーテシーをした。カーテシーは結婚式の前にウィンクラー夫人に叩き込まれた動きで、微笑みはフェリックス家の食堂で働いて鍛え上げられたものだ。自分で言うのもなんだが、それなりに様になっていると思う。

だけど、マクシミリアンのお祖母様にはじろりと睨まれた。


「あなた、お名前は?」

「フロレンティーナ・ミゼルと申します。お会いできて光栄です。ツヴァイク夫人。」

「背が高いのね、あなた。」

「・・・・。」


フロルはきょとんとした。

そんな事初めて言われた。確かにフロルの背は低くはない。しかし女性としての平均の少し上くらいだ。マクシミリアンより10センチ以上低いのである。


「それに随分と寂しい胸だこと。」

これは全くの事実なので、言われても仕方ない。仕方ないけど・・。


「失礼な事を言わないでください。お祖母様!」

とマクシミリアンが抗議をしてくれた。


「失礼なのは、どちらなのかしら?随分と上手に化けているようですけれど。」

「どういう意味ですか?」

「親切な方が教えてくださらなくては、騙されるレベルではあるわね。」


マクシミリアンの祖母の周囲にいた人達が笑い声をあげる。


嫌な親戚や知り合い達だなあ。とフロルは思った。

マクシミリアン自身は良い人なのに。こんな親戚に囲まれているんじゃマクシミリアンも大変だな、と思う。


ところで。

マクシミリアンの父親はどこにいるのだろう?

マクシミリアンの出生時の話を聞くなら、マクシミリアン本人よりも親の方が良い。このおばあさんは聞いても教えてくれそうにないし、正直聞くだけ無駄な気がする。


私の後方に護衛のようについていてくれた4人のうち今もいてくれるのはユリウスだけだ。アレクサンデルとリーリアはテーブルの上の料理に夢中になっているし、ヴェルギールは知り合いらしい女の子達と楽しそうに話し込んでいる。別にかばってくれるのを期待したわけじゃないけれど、パーティーを満喫されるのはなんかムカつく。


「あなた、マクスの部下なのでしょう?」

とお祖母様が突然言った。


「え?」

と言って硬直するマクシミリアン。


「あなたも大変ね。上官の命令で女装までさせられて。」

そう言ってマクシミリアンのお祖母様はため息をついた。

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