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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第三章 新緑騎士団の見習いの見習い

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見習い生活十日目(8)

「やったあ!」と、一瞬その瞬間は落ち込んでいた事を忘れた。


フロルは服のポケットから折り畳んでいた紙を取り出した。先刻、クリステンの店に行った時一枚買っておいたのだ。


これに書き写そう。

と思って紙を広げていたら


「フロルー。いるのか?」

と、廊下の方から声がした。アレクの声だ。くはっ!と一瞬フロルの心臓が不正脈を起こしかける。慌てて紙をまたポケットにしまい、資料は他の羊皮紙の束の中に突っ込んだ。


「いるなら返事くらいしろよ。」

と言いつつ、アレクが資料室のドアから顔をのぞかせる。しかしフロルはまだ心臓がバクバクいって声が出て来なかった。


「・・・あ・・あ・・あの、カイト様。」

「んっ?」

「先程、レーステーゼ様がカイト様を探しに来られましたが。」

「ふうん。」

興味無さそうな声でアレクはそう言った。


「ついさっきの事なので、まだ近くにいらっしゃるかもしれません。」

そう言っているのに、アレクは資料室の中を見て回って出て行こうとしない。


「ま、用件はだいたいわかっているから。」

「そういえば、第三隊の隊長のエルマーリッヒ様が羊皮紙を一枚持っていかれました。」

「そう。」

これがまた、生返事だ。いったい、どうしたのだ⁉︎このドケチ・・いや、几帳面な人が。


「それより、どうして床にレーズンが一粒落ちているんだろう?」

「すみません、犯人は私です!そ・・その。」

「誰かが菓子を持って来たわけか。ヴェル?それとも、マクス?」

「ヴェル・・あ、いえ、クローゼ様です。どうしてわかったんですか?」

「なんとなく。」


そう言ってから、アレクは軽く咳き込み目の前を手で払った。


「それにしても、本当に汚れているな、ここは。仕方ない。私も掃除するか。」


えっ!何て迷惑な。とフロルは思った。せっかく見つけた資料が、紙に書き写せないじゃないか。

とは、とても言う事はできない。

けれど、できたらユリウス様を探しに行って欲しいのだけど。私が、伝えてないかのように思われるではないか。


黙々と二人で掃除をするのも妙な感じなので

「あのー。」

とフロルはアレクに話しかけた。


「カイト様は大学都市のご出身なのですよね。」

「ああ。」

「どんな感じの街なんですか?」

「大学のいっぱいある街だよ。」

「・・・・。」


自分はいったい、どういう答えを期待していたのだろう?とフロルは自問自答した。なんか、すごくバカな質問をしてしまった。


「カイト様は子供の頃から、将来は王都へ出て来て騎士になりたいなあ、と思っていらっしゃったんですか?」

「いや、全然。」

とアレクは即答した。


「大学の多い街で育ったからな。将来は大学へ行きたいと思っていた。」

「じゃあ、どうして騎士になったんですか?」

「幼馴染にものすごく嫌な奴がいて、そいつが王都へ行って王室の近衞騎士になったんだ。」

「はあ。」


フロルは首をひねった。理由を説明してもらっているのに、全然理由が理解できない。


「嫌いな人が、故郷からいなくなったのなら万々歳じゃないですか?なんで王都まで追いかけて来るんですか?」

「たまに故郷に戻って来た時に、威張りちらすのがムカついたんだ。」


なるほど。なんとなく理解できた。つまりこの人は、ものすごーく負けず嫌いなんだな。しかし、そういう理由で騎士団に入る人もいるのだなあ。誰もが高尚な理念を掲げて騎士団に入るわけではないのだ。でも・・・。


「なら、どうして近衞騎士団に入らなかったんですか?」

「同じ所に入ったら、不愉快な気持ちになるだけじゃないか。」

「それもそうですねえ。」

「そのてん、ローザ殿がいるこの騎士団に、入って来たおまえは勇者だよ。」

「・・・・。」


「あれ。人の話し声がすると思ったらアレクか。」

突然声がして、マクシミリアンがドアから入って来た。


なんで、さっきから、次、次、次、次各隊の隊長がわざわここへ現れるんだ⁉︎

もしや女だという事がバレたのでは!と思ってフロルはドキッとした。もしかしたら、ローザがバラしたのかもしれない・・・。

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