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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第二章 王都へ

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再会 PART2

第一章にも同じ題があるのでPART2になっております。


「お見事でございました。フロル様。」


馬車に乗るやいなや、フロルはウィンクラー夫人にそう褒められた。

「あの女狐に対する実に清々しい態度、素晴らしかったですわ。まるで亡き伯爵様を見ているようでございました。」


これは、なかなか嬉しい褒め言葉である。

えへへ、とフロルは照れた。


「フロル様も今日はいろいろと、気疲れされた事でしょう。ストレスをパーっと発散させる為にも、これから街に遊びに出かけませんか?第三地区の大通りでは、今日から馬市をやっているのだそうですよ。馬を売ったり買ったりするのが主ですけれど、買い物客を相手にした出店や屋台もたくさんあって、結構な賑わいだそうですわ。」

「行きます!」

と、フロルはウィンクラー夫人の提案に秒でのった。


王都に来てからずっと、ろくな事がなかったのでここらで何か楽しい思い出を作りたい。

何か美味しい物とか売ってるかなあ、と考えると、寒くて薄暗い街の景色もビミョーに明るいような気がしてくる。


馬車の窓から見える街は雪が降っていて、行き交う人々も寒そうに前屈みになり足を早めて歩いていた。

王都は、海の側のグリューネバルト領よりずっと寒い。寒さに弱くはないフロルでも、けっこう辛い寒さである。


そんなフロルの目に一人の人がとまった。


雪の街を、寒さにも負けず、すっと背を伸ばして歩いていた。

特別な早足ではないが、ストライドの大きな歩幅はキビキビとしていて、まっすぐ前を見ている姿が実に気持ちいい。

馬車がその人を追い抜いたとたん、フードに隠れた美しい横顔が見えた。


「あっ!」

と、フロルは叫んだ。


その人物も馬車を見た。おそらく馬車の中にいたフロル達の事は見えなかっただろう。だが、馬車の後ろにあるグリューネバルト家の紋章は見えたはずだ。


「止めて、お願い!」

フロルの声に、ウィンクラー夫人も外を見て、御者止めるよう指示を出した。

フロルは馬車のドアを開けて外へ飛び出した。


「リーリア!」

「フロル。」

雪の中で二人は、ひしと抱き合った。


「無事だったのね。リーリア。良かった。」

「あんたも元気そうじゃない。暗殺されそうになってないか、とか心配してたのよ。」


グリューネバルト領で別れてから、二ヶ月ぶりの親友リーリアとの再会だった。


「本当によく無事で、グリューネバルト領をぬけられて。あの人達が王都まで送ってくれたの?」

と口に出して、まずいと思った。馬車の中でウィンクラー夫婦が、二人の話に聞き耳をたてているのだ。


「え・・えっと・・あの。」

「大丈夫ですよー。その子が、城内に忍び込んでいた事はちゃんとわかってますから。」

「えっ⁉︎」

「とにかく、馬車にお戻りください。寒いので。そっちのあなたもお乗りなさい。」

ウィンクラー夫人がそう言ったので、二人は馬車に乗り込んだ。


「それで・・えーと・・・。」

「フロル様。いくら、一人にして欲しいと頼まれたからといって、あんなにも塞ぎ込んでいたフロル様から、目を離すわけないじゃないですか。出生の秘密をお伝えした後、部屋の中のフロル様の様子をうかがっていたのですよ。」

「・・・えっ?」

「まぁ、本音を言えば、フロル様にトンズラされたらまずいから、見守っていたんですけれど。だから、その子がヤモリのようにベッドの下を這ってたところも見てたんです。」

「という事は次の日、新緑騎士団の前で一緒にいたのがリーリアだって事もわかってたって事ですよね。だったらなんで、あんなにしつこく顔を見せろって言ったんですか?寿命が1時間くらい縮まりましたよ!」

「一緒にいるのがリーリアさんだったら良いけれど、違ったらまだ城内のどこかにリーリアさんがいるって事でしょう。だったら逃げるのを手伝ってあげないと、と思ってです。一応、追放の件についてはリーリアさんの家族はともかく、リーリアさんには悪い事をしたなって思ってましたから。」


「おい・・ちょっと待て。何の話だ?新緑騎士団とか、ヤモリとか?」

とウィンクラー氏が言った。どうやらウィンクラー氏は、この話を知らないらしい。


「全然気がついていなかったのなら、一生気づかなくってOKよ、あなた。ところでリーリアさん。あなたに聞きたいことがあるのだけどね。」

ウィンクラー夫人が夫を無視して言葉を続ける。


ウィンクラー氏が目を白黒させているので、フロルが代わりに説明してあげた。新緑騎士団が、娼婦連れで旅をしていたわけではない事を説明する絶好のチャンスだからだ。


「な・・何と!」

ウィンクラー氏は目を見開いて絶句した。ちょっと怒っているようだ。


「それは重大な事ですぞ。フロル様!我が街の法によると・・・。」

「別にいいじゃないの、あなた。もう過去の事でしょう。」

「何を言っているんだ、マレーネ。良くはない。良くはないぞ!」

「今さら、告白されたからって何の証拠があるの?だいたい見逃したあなたにも責任のある事でしょう。」


自分もその場にいたくせに『私達』と言わないところが実にちゃっかりしている。


「た・・確かに。しかし、こうなるとフロル様のお立場を守る為にも、この事は絶対に秘密に・・・。」

「隠しておいたら弱みになるでしょ。終わった事なんだからバレてもいいじゃない。堂々としていたらつけこまれないのよ。いやあね。この程度の事でオタオタして情けないったら。」


どう考えても正しいのはウィンクラー氏なのだが、ウィンクラー夫人にすっかり丸め込まれている。大福の中のイチゴのように。


「ねえ、フロル。私も聞きたい事があるのよ。『双子の男の子』の事はどうなったの?」

リーリアが目をらんらんと輝かせて聞いてきたので、フロルは自分が聞いた通りに説明をした。


「・・・って事は、あの四人の中にあんたの兄弟がいたかもしれないの?」

「うん。」

「それを知っていたら、旅の間中いろいろ探りをいれといたのになあ。」

リーリアが悔しそうにつぶやいた。


「それで、リーリアさん。その四人の為人について、できるだけ詳しく教えてちょうだい。」

とウィンクラー夫人が言った。

なのでリーリアは、フロルと別れてからの事を話し始めた。


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