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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第一章 グリューネバルトの花嫁

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新緑騎士団事件(1)

それでもって、夕方。

フロルとリーリアはドレスに着替え、領主の館にやって来た。会場になっている中庭には、すでにたくさんの女の子達が集まっている。


「意外に多いわね。」

リーリアがつぶやいた。

「しかも私達みたいな冷やかしじゃなくて、かなりみんな本気っぽいし。みんな領主様の年を18歳とでも勘違いしているのかしら。」


確かに。誰もかれもすごくおしゃれをして、お互いに火花を散らしている。家中の宝石をつけてきたのかというくらいピカピカ光っている娘もいれば、アップにした髪に重くないのだろうか、というくらい飾りや花をつけている娘もいる。


「隠れて!」

リーリアがフロルの腕を引っ張った。

はっとして振り返ると、リーリアの姉のローザの姿が見えた。びっくりするくらいスカートの広がったドレスを着て、髪には宝石とクジャクの羽を何本もさしている。ローザはもともとけっこうな美人だから似合っているんだけど、ライバルは焼き殺すと言わんばかりの強烈な視線で、周りを睨みつけているのがとても怖かった。

「何あれ。花嫁になる気まんまんね。こんなの出来レースに決まってるのにバカじゃないの。」

ローザと仲の悪いリーリアは、花嫁選びにローザが落ちて悔しがる姿を思い巡らして楽しそうにしている。

だけど、フロルは少し不安になった。違う女性が選ばれたりしたら「私の方が美人だ!」と叫んで暴れ出したりしないだろうか。そのくらい平気でやりかねない女なのである。

選ばれた女性は、ローザの怒りと嫉みのオーラを一身に受けるに違いない。ちょっと可哀想だなぁ。

好運が人を必ずしも幸せにするとは限らない。その事をフロルは、骨身にしみて知っている。大学に受かった時、嫌な思いもたくさんしたのである。


「フロルは、領主様とお話した事あるんだよね?」

「いや、あるというほどでも・・・。」

大学の入学式の後、奨学生達は皆一ヶ所に集められ、教科書や辞書の配布を受けた。奨学生が最も多かったのは医学科、次に天文学科である。外国語学科はフロル一人だった。

それで珍しかったのか、突然その場に現れた領主様にフロルは話しかけられたのである。

正直あんまりにも緊張して、何を質問され何と答えたのか全然覚えていない。ニ、三言話した後、領主様は哲学科の生徒達と話を始められた。さすが哲学者になろうという人間達は、ウィットに富んだ受け答えをしていた。フロルとはえらい違いである。


「ねえ、フロル。私達地味すぎて、少し悪目立ちしているみたい。もうちょっとすみの方へ行こうか。それにしても、本気でヨメになりたい女がこんなにいるとは。」

「領主様は人格者で有名だし、例の事件の英雄だもん。ほら、あの事件。」

「新緑騎士団事件ね。」


新緑騎士団事件というのは、今からほぼ一年前王都で起こった事件である。

王都に、新緑騎士団という騎士団があった。創設者は、今年22歳になる王太子様で、創設されたのは四年前。比較的歴史の浅い騎士団である。

ゆえに、騎士団の構成員は皆若いし、美形が多いとの事で王都では絶大な人気があった。へたな役者など、比較にならないほどの人気なのだそうだ。


さて、話は変わって。フロル達が住んでいる国の王様の名前はヴィルヘルム三世といい独身である。

十年以上前に政略結婚で外国から迎えた王妃様を亡くし、以後結婚はせず、愛人であるローゼンリール侯爵夫人を事実上の妻のように扱い側に置いていた。王が、彼女と正式に結婚しないのは、彼女が人妻だから。つまり、彼女の夫が生きているからである。

と言っても、家臣の妻を奪ったわけではない。下級貴族の娘に生まれた女性に宮廷内での地位を与える為、王は自分の従兄弟に爵位を与え、その女性と結婚させた。そして、その女性を自分の愛人として側に置いたのである。

当初、王が従兄弟に与えたのは男爵位だった。だが、その愛人、シュザンナという名なのだが、自分より前に公妾だった女性が伯爵夫人だったので、それより下の身分は嫌だと泣いておねだりし、侯爵夫人の地位を手に入れたのである。


いくら王様の従兄弟とはいえ、本来なら何の功績もあげていない人間に、いきなり侯爵位など与えられる訳がない。その為王は、後継者がいなかったローゼンリール家の名前を強引に奪い取った。

ローゼンリール侯爵は、息子がいなかったので、娘婿を自分の養子にして跡継ぎにと思っていたのだが、王はそれを認めず、実は従兄弟はローゼンリール侯爵の隠し子だったとホラを吹き、従兄弟を後継者にねじり込んだ。

侯爵も娘婿も、悲憤の中で病没したという。

まあ、生きていてもろくな事はなかっただろうが。


シュザンナ・ローゼンリールのわがままは、それにとどまらなかった。

自分の一族の者を次々と政府の要職につけ、自分自身の贅沢の為に国庫の金をわたくしした。少しでも彼女の栄光にあやかりたい者が、彼女とその一族に媚びへつらい、彼女は驕り高ぶって、それが国民の大きな不満をよんだ。


そんな中で事件が起こる・・・。

面白そう。更新頑張れ!続きが気になるかも。などと思って頂けましたら、ブクマや期待を込めて☆☆☆☆☆を押して頂けると励みになります。

よろしくお願いします( ・∇・)

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