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婚約破棄系統

王太子「真実の愛に目覚めた!!」公爵令嬢「どう見ても嫌がってますが!?」な後ろで

作者: 美香

これは早かったですかね?

 貴族院の卒業式。公爵令嬢アルファはエスコートを断って来た婚約者の王太子ベータが自分ではない令嬢を連れて会場入りした姿に目を見開いた。

「アルファ!! 私は真実の愛に目覚めた!! 婚約を解消して貰うぞ!!! そして私はこのオメガ男爵令嬢と婚約する!!!」

 そして唖然とする周囲を置き去りに、会場ド真ん中に来てそう大声で宣言したのだ。

 さて。この様な場面では周囲の視線はどの様になるだろう。嘲笑、呆れ(ドン引き含む)、怒り、同情、驚愕……、こう言った様々な感情が込められるものと思われる。そしてこの場に於ける視線は最初に驚愕、次に呆れ→ドン引き、そして同情or怒り……。嘲笑する余裕はない。感情の的はベータとオメガ。アルファに気遣う視線を向ける者は居ない。何故ならば……。

「……殿下、オメガ男爵令嬢はエスコートされているのではなく、後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされ、殿下の腕により、腰を掴まれて連行されている様に思えるのですが……? 私の見間違いでしょうか?」 

 唖然として震える声で問い掛けるアルファに周囲もウンウンと頷く。序に言えば、オメガは必死に暴れている様に見えるし、何なら「ウーウー」と涙を滲ませながら唸り声を上げている様に見える。後、貴族令嬢にあるまじき、不揃い過ぎるザンバラ髪の乱れが異様に気になる。

「うむ! 彼女のツンデレが激しいので私もつい、な!!」

「ツンデレではなく、どう見ても嫌がってますが!?」

 またもや周囲もウンウンと頷く。と言うか本当に意味が分からない。昨日までベータ王太子はごく普通で、浮気なんて全くであったし、オメガは成績優秀で宮廷女官、その中でもエリート街道間違いなしと言われる部署に就職が決まっていて、故にアルファともベータとも普通に面識があったが、綺麗な長いピンクブロンドの髪だった筈だ。アルファにも意味が分からない。

「ふん、ツンデレも理解しない汚物が!!」 

 余りの言い草だが、それ以上にそんな事を言いながら、ベータの手が嫌らしくオメガのドレスを託しあげ、そのドロワーズの上から撫でまくっている為、それに反応する処ではない。

「〜〜〜〜〜っ!!!!」

 公衆の面前での強制猥褻。オメガはもう涙を堪えきれていないし、恐怖に染まっている。彼女からすれば、最早レイプと変わりない。

 ………とにかくまあ、こんな事を仕出かした王太子がどうなったかと言えば、廃籍された上に投獄一択だ。他方、アルファは何の落ち度も無い為、王太子卒業後に婚約者を決める予定だった第二王子と急遽再婚約した訳だが……。

 しかし第二王子には元々婚約者候補が数人おり、その中で最も相性の良い令嬢ーー婚約者候補筆頭ーーとの婚約内定を覆す形になった為、まあ……、それはそれで問題があり、最終的には「王太子とも第二王子とも上手く行かないなんて、彼女にも問題があったんじゃね?」→「とんだアバズレらしいぜ、あの女」と評判が激落ちし、最終的には国王となった第二王子の命により、毒杯を賜る自体にもなり、後世の立ち位置は「悪女」で固定される事になる。

 そして最後、オメガは男性恐怖症を発症し、就職も婚姻も不可能となり、女性だけの修道院へ赴き……、何がどうなったか、そこで同性愛に目覚めた。同性同士で淫蕩に耽り、戒律を守らなくなった彼女は、修道院から追い出され、行方が解らなくなったと言う。

 そして全ての元凶足る元王太子は牢獄ーー王族特有の美しく広い部屋(寝室&ダイニング、トイレ関係、浴室関係、各々ドアで区切られているが施錠はされていない)ーーで食事に事欠かず、室内運動程度だがそれも可能で、書籍類なら不自由せずに読め、家事に値する事も必要とせず、各部屋出入り自由の軟禁生活で一生を終えた。尚、彼の死後、発見された彼の密やかな趣味であったと思われる執筆作業により生まれた莫大な数の作品は貴族の娯楽小説として売れ、後世で大作家として名を残す事となった……。









 明日を卒業式に迎えた夜。私は自分のベッドに見慣れない物体を見付けた。

(スマホ?)

 何故か、その物体の名を私は知っておりーー、それを認識した瞬間、私の中で記憶が弾け、私は「俺」と1つになった。

 俺が私の前世なのか、俺が私に寄生したのかは良く分からない。重要な事はこの世界が俺の居た世界で物語となっており、俺はこの先、婚約者に裏切られ、それを発端に国民に馬鹿にされながら、処刑される最期を迎えると言う事だった。


 ……一気にやる気は地に落ちた。


 民を守る意気込み、婚約者と築いていく未来……、それを迎える気が一切無くなった。

「ニートになりたい……。」

 国民の税金で、一生、引き籠もって暮らしたい、そう思った。そして無意識に何故か此処にあるスマホを手に取った。操作していて気付いた。電池が減らない。更にはネットも使える。某ちゃんねるに書き込み出来る。某小説投稿サイトも不自由なく使える。某動画サイトも閲覧可能だった。ゲームもプレイ出来た。本来ならば有料サイトであっても、無料で見れた(プレイ出来た)。更新も普通に行われている。更にスマホの説明アプリを見付け、このスマホを見ている間、この世界の時間が停まっている事、スマホ自体、持ち主以外には見えない事が書かれていた。


 スマホを見ながら俺は考えた。どうすればニート生活が出来るのかを。


 ……俺を後に裏切る婚約者。婚約者を唆した元凶女。俺は2人を踏み台に婚約破棄劇をかました。王が決めた婚約を一方的に破棄する。これだけなら何処かで軟禁されるに過ぎない。そこで何かをやらかせば秘密裏に暗殺もされるが、大人しくしている分には問題は無い。

 

 こうして俺はニートになった。


 最初の暇潰しはweb小説を読む事。その内、俺も小説を投稿する様になり、ふと思い付いた。読書したいと告げ、書籍を持って来て貰い、その内容をそのまま投稿した。勿論、盗作の積りはなかったので、ちゃんと作家名も書いた。尚、二次創作の体を取っている。

 それからweb小説を逆に此方の用紙に書き写した。こんなに面白い作品が沢山有るのだから、出来たら紹介したかった。勿論、俺には出版業に関わる事が出来ないから、俺の死後辺りから発表されたら良いな、と言う希望観測な代物だ。作家名を偽らず、俺が模写している事を示して、幾つも幾つも用意した。

 その流れも自分の小説として投稿した。「それ、絶対に俺が作者扱いされる」とツッコミもあったが、そこまでは俺も責任は取れない。

 何にせよ、ニートを満喫している俺には何も外の情報が入らない。だから俺を裏切る予定だった婚約者が弟に疎まれ、冤罪かどうかは知らんが毒杯を賜った事も、婚約者を誘惑して俺を裏切らせた女がどうなったのかも知らない。況してや死後の評判なんてもっと知らないのだ。





物語の内容(エロ漫画)

エリート街道まっしぐらなオメガはアルファの側近になって、女同士でデキた。それで何やかんやのエロ漫画特有のご都合主義で「私」は冤罪を被せられ、国民にも疎まれながら、処刑される事に。

その後、第二王子が立太子、国王夫妻死去(暗殺→証拠なし)→女2人に怯えながら、第二王子即位。

お読み頂きありがとうございます。大感謝です!

評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。

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