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聖女たちによる祈祷RTA

作者: 赤月 朔夜

 短編の聖女追放ざまぁものを考えていたら全く別のものが書き上がっていました。

「今年もこの日がやってきました。聖女祭における最大のイベント、現役の聖女様による祈祷式です。

 実況はワタクシ、レイモンドがお送りします。解説は宮廷魔術師長のテオドールさんです」


「テオドールです。よろしくお願いします」

「さて、まずは祈祷の順番について解説をお願いします」


「まずは王都を出て東へ平坦な道を進みます。

 リマノフ山に到着したら麓にある湖の水を壺に入れてその壺を持って山頂まで登り、山頂にある池に壺の水を注ぎます。

 そしてここから本格的な祈祷が始まります。

 円状に並べられた石畳の上で魔力を込めながら祝詞を歌い上げて踊ります。

 次に3つの楽器を演奏します。

 以上です」


「ありがとうございます。

 さぁ、聖女様たちの準備が整ったようです。それぞれ集中してスターターマジックの起動を待っています」


「スターターマジックの音が辺りに響き渡ると同時に全員が飛び出す! 速い、速いぞ!」

「素晴らしい反射神経ですね。聖女様たちは魔術のベテラン。身体強化を使用しての疾走です。

 馬よりも速いレベルでの疾走を可能にしている身体強化は見事としか言いようがありません」

「先頭はリスティナ様です。その次にアンジーナ様、最後尾にシンディア様がいます。

 リスティナ様がぐんぐん加速して2人を引き離しにかかっています。

 初っ端から飛ばしすぎではありませんか? 大丈夫でしょうか」

「リスティナ様は俊足の聖女とも呼ばれています。平坦な道こそ彼女の得意としている場所。

 今のうちに2人を引き離しておきたいと思っているのでしょう」


「リスティナ様がリマノフ山へ到着しました。

 湖で水を汲んでその壺を抱えて再び走り出しますが、木々や足元の不安定さ、壺の重さもあって失速しています」

「リスティナ様は聖女様たちの中で1番小柄なこともあって壺が邪魔で走りにくいのでしょう」


「おおっとリスティナ様の前に魔物が現れました! あれはキラーベアですね。

 キラーベアと言えば小さな村なら1匹で滅ぼしてしまうという恐ろしい魔物です。

 キラーベアの爪は人の体を簡単に切り裂きます。人よりも速く走り、木登りや泳ぐこともできるため逃げることもできません! 


 さすがのリスティナ様も足を……止めない!?

 そのまま跳躍しキラーベアの頭部に蹴りを入れました!

 キラーベアはその一撃で沈黙します!」


「リマノフ山には様々な魔物が生息し時に山を下りてきて人里を襲います。

 聖女様は出会った魔物を退治して空間収納すると持ち帰ってくださっているのです。

 なお今回倒された魔物は明日の夜、中央広場で振る舞われる予定なので皆さん奮ってご参加ください」


「リスティナ様から遅れて数分、アンジーナ様とシンディア様がリマノフ山に到着しました。

 お2人も壺に水を入れて抱えて走り始めます」


「どうやらアンジーナ様とシンディア様の元にも魔物が現れたようです。


 あれはバジリスク!? 牙には恐ろしい猛毒を持ち、見たものを石化するという技を持っており1匹で町を滅ぼすことができてしまう恐ろしい魔物です!


 さすがに聖女様たちも足を止めました! アンジーナ様が詠唱を行うとバジリスクが何かに押しつぶされるように体を伏せて動きを止めました。


 続いてシンディア様がバジリスクに向かっていくとその拳を振るいます。シンディア様の拳を受けたバジリスクは動かなくなりました! シンディア様はバジリスクを収納すると2人はハイタッチをして再び壺を抱えて走り出します。


 これは一体どういうことでしょうか?」


「おそらくアンジーナ様が重力魔術でバジリスクの体を押さえつけたのでしょう。

 そしてシンディア様は剛腕の聖女と呼ばれており、彼女の拳は岩をも砕きます。

 シンディア様の拳はバジリスクの心臓がある場所にヒットしていました。いくら固い鱗で体を守られているバジリスクでもその衝撃には耐えられなかったのでしょう」


「では、バジリスクの視線を受けてもお2人が石化しなかったのはなぜでしょうか?」

「聖女様たちは常に結界を張っていらっしゃられます。

 バジリスク程度の石化の視線などあってないようなものなのです」

「素晴らしいですね」


「山に入ってからはシンディア様が加速しています! 大きな壺を抱えているとは思えないスピードです!」

「シンディア様にとって壺の重みは大したものではないのでしょう。大柄なこともあり、動きもあまり阻害されていません」


「アンジーナ様をドンドン引き離していきます! ついにリスティナ様を追い抜いた! リスティナ様は悔しそうな顔をしています!」

「山頂に1番に到着したのはシンディア様です! 数秒遅れてリスティナ様も到着します!

 2人とも水の入った壺を軽々と扱って池に水を注いでいます。そして石畳の敷かれた広場に移動すると祝詞を歌い始めました!


 とても早口です!」


「この速さでも10分はかかります。通常の速度であれば20分はかかるでしょう。

 この後、踊りを行い3つの楽器を演奏すれば祈祷は完了します」


「この段階でまだ山頂へ到着していないアンジーナ様の優勝は厳しいでしょうか?」

「彼女が最も得意としているのはここからです。まだ勝負は分かりません」


「シンディア様の歌が終わりリスティナ様もそれに続いて踊りへと入ります。

 おっと! リスティナ様はキレッキレの踊りだ! シンディア様よりも速度が速い!」


「速くても伸ばすところは伸ばし、止めるところはきちっと止めていますね」

「ここでアンジーナ様の登場です!

 池に水を注いで広場にやってきました。


 これは凄まじい詠唱速度です! 手元に祝詞の歌詞の書かれた紙があってようやく何と言っているか分かるほどです!


 あっという間に祝詞を終えアンジーナ様は踊りに入ります。踊りの速度はシンディア様と同じくらいです。


 リスティナ様は2つ目の楽器の演奏に入っています。シンディア様もリスティナ様に続いて2つ目の楽器の演奏に入ったところです!」


「いよいよゴールも近いですね」

「アンジーナ様の踊りが終わりました。アンジーナ様は楽器の1つ目を手に取ります。

 おや、アンジーナ様が何か詠唱をしています。おっと? 残りの2つの楽器が浮かび上がりました!」

「例年までには無かったことですね。一体何をするのでしょうか」


「これは一体どうしたことでしょう!? 浮いた2つの楽器も奏でられています!」

「これは驚きましたね。楽器を浮かせながら風魔術で空気を送り込み、使用しない穴は同じく風魔術で流れを止めているのでしょう。

 本人も楽器の1つを演奏することで演奏を1回で終わらせるつもりなのでしょうね」


「ルール……祈祷式として問題はないのでしょうか?」

「まったくもって問題ありません」


「見事アンジーナ様が全ての楽器を同時に演奏し終えました!

 リスティナ様が少し遅れて3つ目の楽器の演奏を終えます。シンディア様も演奏を終えました。


 今年の聖女祭の祈祷式の勝者はアンジーナ様だーーーーっ!!」




「アンジーナ様には賞金と1年分のレストラン『ティリーズ』のお食事券が送られまーす!」

激唱の聖女 アンジーナ

 祝詞を高速で詠唱し魔術で楽器を浮かせて演奏した。

 わたくし、ですわ系の令嬢。


俊足の聖女 リスティナ

 身体強化と風の魔術で加速し爆走した。

 ボクっ子、いたずらっ子系の令嬢。


剛腕の聖女 シンディア

 身体強化に長け水の入った重い壺を軽々と運び、拳で魔物をノックアウトした。

 あたし、元気っ子系の令嬢。



レイモンド

 上位冒険者で実況。


テオドール

 宮廷魔術師で解説。




圧縮の聖女 オリビア

 かつて追放され、その後大変なことになって国に呼び戻された聖女。祈祷式の最速タイムは未だ破られていない。

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