双子姉弟は異世界で何も出来ない
「えっと…ここは…ヨーロッパ?」
「そうっぽいけど…。」
ここは現代じゃない。すぐ分かる。
電灯がない。電線がない。何より車もトラックもない。
いくらここが田舎っぽいけれど、ここまで文明に達した物がないのはありえない。
「中世ヨーロッパとかかな?」
違う、違うと言ってくれ。春樹君。ここが過去とか嫌だ。家に帰れない。
「違うよ、千秋ちゃん。」
「‼️」
「だってあの人…」
と、春樹君は羊を触っている夫婦を指し、
「日本語で話してるもん。
つまりここは異世界だよ。」
異世界‼️ もっと嫌なところに来てしまった。
それよりも、それよりも、
「お前、何でそんなに落ち着いとるんじゃぁぁぁ‼️」
春樹君冷静すぎる。
「落ち着いた?千秋ちゃん。」
「ありがと…」
あの後、パニックを起こした私を春樹君は木陰に連れてってくれた。水も飲ませてもらった。
そして何か使えるものはないか、二人の持ち物を確認したんだけど…
私→時計、本、スナック菓子、キャンディ、お財布、お守り、カメラ、電子辞書
春樹君→時計、水筒、携帯ゲーム機、お財布、お守り、家族写真、電子辞書
※虫取り網は道路で転んだ時に落とした
…ろくなもんがなかった。
それにショックを受けた私が卒倒しかけた、ということ。
「さて、これからどうしよう…。」
ぽそっとつぶやく。ぽつっと涙が落ちる。
「千秋ぢゃん…。」
隣で春樹君も泣いてる。
頭を撫でながら、私はただ立ちすくんでいた。