修行 sideフィオン
フィオン視点の回です!
ヒエンという老人に連れられていくラクリィを傍目に思う。ラクリィのことはミストライフに入る前から知ってはいた。考えなどは知る由もなかったが実力だけはある程度は把握していた。
ミストライフに入ってさらに強くなるとは感じていたが、その成長幅は私の予想を大きく上回るものだった。
正直、初めて手合わせをした時は微塵にも負ける気はしなかったが、今のラクリィと本気で戦って勝てると断言することは出来ない。
私自身も強くなっているというのに、だ。
本当に頼もしいと思う反面、このままではラクリィに縋る日が来るのではないかと恐ろしくなる。
今回の修行でラクリィはさらに強くなるだろう。それに置いていかれるわけにはいかない。
目の前にいる霧魔の民の2人を見る。ラクリィと同じ力をその身に秘めていることを考えれば確実に強者の部類に入るだろう。
癖も全く知らなく、且つここまでの強者と手合わせ出来る機会はそうそうない。
霧魔の民との戦闘を経験しておくことは勿論だが、私自身一皮剥けなければ。
「始めましょうか」
ソラが始まりの合図を出し、それぞれが剣を構える。
ラビは腰に下げている六本の剣のうち二本を引き抜き両手に構え、ソラは短剣を構えている。
人数で勝っているので、先制してもいいのだが、単純な攻撃は霧化により回避されてしまうだろう。
霧化にもクールタイムや時間制限はあるので、それに合わせて攻めればいいのだが、霧魔の民としての能力だけでみれば、恐らくラクリィよりもこの2人の方が上だと考えるべきだ。
つまりは見慣れた能力だからといって、いつもの感覚で戦闘を進めると痛い目をみる。
「来ないんか? だったらこっちからいくぞ!」
膠着する状況に中、初めに動き出したのはラビだった。
通常の剣よりも長い二本の剣を軽々と振り回し、こちらに向け迫ってくる。
まだ霧魔の民の能力は使っていないようで、単純に剣の腕のみで攻撃を仕掛けてくる。
リーチの長いその攻撃を掻い潜りながら、次の手を考えていた。
剣の腕はラクリィには遠く及ばないようで、回避すること自体は難しくない。他の仲間達も攻撃にしっかりと反応して回避できていた。
近い相手に攻撃を仕掛けるラビの後ろには、何もせずにただ立っているソラがいる。
何か狙っているのかもしれないが、考えても答えは出ないので、こちらも動くことにした。
「波状攻撃だ!」
私が指示を出すと、誰から仕掛けるなどの話し合いもせずに、状況を見て各人動いてくれる。
流石に5人の攻撃を全て回避することは出来なくなり、ラビは霧化を使った。
一旦攻めの手が止まるが、それは仕掛けないとイコールではない。霧化が切れ実体化するタイミングを逃さぬように意識を集中させているだけだ。
やがてラビが少し離れた所に姿を現す。それなりに長く感じたが、戦闘中なのでそう思うだけだろう。実際は五秒程だ。
すぐさま追撃を掛ける。霧化のクールタイムは非情に短いようだが、流石にこのタイミングで直ぐには霧化出来ないようで、ラビは再び回避を余儀なくされた。
練度の高い波状攻撃。このままいけば仕留められそうだが、その流れを断ち切ったのはソラだった。
「ラビ、油断しすぎですよ・・・・・・こうなることは目に見えていたではありませんか」
「うるせえソラ! 小手調べってやつだよ!」
ソラがアロマの攻撃をガードし、それに続くイルミアの攻撃はラビがガードした。
「あんたらの実力は分かった。少し、本気でいくぜ?」
体勢を立て直したラビは纏う雰囲気を変えた。先程の軽いものではなく、強者たる重みを感じさせる。
私は警戒心をさらに強めて、不測の事態に対応出来るよう、神経を研ぎ澄ませる。
「霧の理・・・・・・その道に剣あれ」
そう呟いたラビの頭上に、不定形に霧が密集しだす。その霧はやがて剣の形をとり、切っ先をこちらに向けた。
「いくぜ」
ラビは再びこちらに突撃してくる。頭上の剣もラビに合わせて向かってきていた。
剣の打ち合いであればこちらに分があるが、あの二本の剣を無視することは出来ない。
私は頭をフル回転させて、あの剣が持つ特性を絞る。
「ラビの直接の攻撃は回避せずに対処しろ! 浮かんでいる剣は回避だ!」
剣の形をしていても、その本質が霧である以上、あの剣は確実にガードをすり抜けてくるだろうと予測した。
「初見で特性に気が付くとはな。いい頭持ってんなあんた!」
やはり合っていたようで、ラビから素直な称賛が飛んでくる。
しかし攻撃の苛烈さは変わらない。先程とは違い、霧化を織り交ぜた攻撃はこちらの予測を掻い潜り追い詰めてくる。
人数で勝っているため何とかなっているが、ソラが戦線に加わったら即座に瓦解してしまうだろう。
この世界にはまだまだ強者が隠れているものだと、ため息を吐きたい気持ちをぐっと抑えてこちらも攻撃を放つ。
この訓練が終わる頃には、調査班のメンバーの実力が大きく上がっていることになる。
VRくん「また出たよ強キャラ」
VRちゃん「そう言わない、逆にこの2人が弱かったら面白くないでしょ!」
VRくん「いや、正論だが……」
VRちゃん「だったら文句は言わない! 分かった?」
VRくん「分かったよ」
VRちゃん「分かればよろし。 さて次回! 『新たな能力2』 お楽しみに~」