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ミストライフ  作者: VRクロエ
霧魔の民編
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霧の出会い

ちょっぴり戦闘

 タキシム領での霧魔花探索は良い意味でも悪い意味でも何も起こっていなかった。

 ほぼ毎日足場の悪い所や、普通ならば入り込めないところなどにフィオンの異能を使って無理やり入り込んだりと、身体の疲労だけで言えば毎日戦闘を行っているのとそこまで変わらない。

 先に探索していた渓谷地帯は一旦切り上げ、本日は森林地帯に足を運ぶことにした。

 こういった森の中は既に捜索されていそうなものなのだが、霧魔獣が多く生息生息しているため危険が多く、細かいところまで捜索されていなかったりする。それがこんな辺境ならば猶更だ。


 渓谷地帯に比べれば足場は多少良いが、霧魔獣との戦闘をかなりの数こなしながら、森の奥まで進んできた。

 来た方向が分からなくなるような同じような景色ばかりが広がっている。

 開けた場所もあれば、草木に囲まれただでさえ不明瞭な視界がさらに悪くなっていた。


「この辺で一旦休憩にしよう」


 時間の感覚も狂っていてどのくらい歩いていたか分からないが、メンバーの疲労の色が見え始めたところで、フィオンが休憩をとることを決めた。

 それなりにスペースのあるところでフィオンが異能で小屋を作り、安全を確保してから休む。

 食事などは拠点から持ってきている分ではどうしても限界が来るので、ある程度は現地調達しなければならない。

 ここに来る途中で狩った霧魔獣の中でも食べれるものを加工して持ってきているので、それによく火を通してから食べる。

 霧魔獣を食べると聞くとどうなんだと思うかもしれないが、これが意外と美味しい。何だかんだ一般の兵士達は食べる機会も多いから、そもそも食べられないことなどないのだ。


 腹も膨れ疲労も回復してきたので探索を再開することになった。

 フィオンが小屋を崩し視界が外の世界に戻ってくる。

 だが、そこに広がるのは草木だけではなく、大量の霧魔獣の姿もあった。ハウンドの群れだ。

 全員が一瞬気を緩めていた為に小屋が崩れた瞬間に仕掛けてきたハウンドの攻撃に一瞬対応が遅れた。

 血が舞うが、何とか深い傷を負うことは避けることが出来た。


「数が多い・・・・・・散らばらないように注意しろ!」


 30匹はいそうだ。1匹1匹はそれほど手こずらないが、ここまで数が集まると流石に厄介だ。さらに全方位を囲まれているので、居られる場所も限られてくる。

 こちらからは攻めずに、なるべく固まってお互いをカバーするようにしているが、倒す速度が遅い。

 戦っている間にも、地味に増援が来ているせいで霧が無かった。


「このままじゃジリ貧だぞ! どうするんだフィオン!」

「焦るな! 後から湧いてくると言っても無限ではない! 時間は掛かっても確実な方法で戦うんだ!」


 戦闘開始から数十分が経過したが、明らかに最初よりも数が増えている。

 ここまで誰も大きな傷は負っていないが、疲れてくれば何かしらのミスをする可能性もある。その前に数を減らさなければ。


「フィオン! 俺が前方の数を減らしてくる! その間持ちこたえてくれ!」

「危険だ!」

「危なくなったらボディーミストでちゃんと逃げてくるから安心しろ!」


 斬りこんだとして、最も安全に戻ってくることが出来るのは俺だ。ならばここは身体を張って状況を好転させに行く。

 俺は群れの中に突っ込み、近い奴から確実に仕留めていく。

 ある程度深く踏み込めば一撃で確実に仕留めることは出来るので倒す速度も速い。ハウンドの数は目に見えて減ってきていた。

 みんなの方を確認すると、まだ持ちこたえられそうなので、もう少し数を減らすことにする。

 迫っては斬り、迫ってきては斬りを繰り返し、俺の方にいたハウンドはあらかた片付いた。


「ラクリィ!」


 フィオンの声が聞こえ振り返ると、先程までフィオン達を襲っていた大量のハウンドが、俺に狙いを定めたようで、一斉に俺に向け迫ってきていた。

 それは並のようであり、流石にこれを全て相手にするのは自殺行為だ。

 俺はボディーミストで一旦フィオン達の元へ戻ろうとした。

 その時俺の背後から、ハウンドではない別の気配を感じた。


「懐かしい気配を感じるのぅ。どれ、手を貸してやろう」


 振り返る前に人の声がしたと思うと、その人物は迫りくるハウンドに突っ込んでいった。

 それは白い髪をした老人で、片手には剣を握っている。

 何者かは知らないが、流石にこのまま眺めている訳にもいかないので、俺も後ろからその後を追う。

 老人とハウンドの距離が目の前まで迫ったというところで、老人は剣を横に振る。すると剣の軌道上にいた3匹のハウンドの体が真っ二つに割れた。

 しかし、その程度では何も変わらない。後続のハウンドは老人に牙をむく。

 回避出来るのか、ヒヤヒヤしながら走っていると、ハウンドの牙が届く瞬間、老人の姿が解けるように消えた。

 そしてハウンドの横から姿を現し、体を二つに割る。


 俺は身体にぞくりと鳥肌が立った。似た能力の可能性もある。しかし俺は直感的に思ってしまった。

 この老人が使ったのはボディーミストなのだと。


VRくん「気になるな」

VRちゃん「そうね。この老人は何者なのかしら?」

VRくん「ラクリィの親とか?」

VRちゃん「それはないんじゃない? ラクリィの年齢から考えて親が老人って程年を取ってるとは思えないもの」

VRくん「だよなぁ。だったら祖父とか?」

VRちゃん「どうかしら? 懐かしい気配ってのと関係ありそうね」

VRくん「ラクリィのことが懐かしかった? だがラクリィは赤子の頃に拾われたんじゃ……」

VRちゃん「次回で明かされるといいわね。 さて次回! 『霧魔の民』 お楽しみに~」

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