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ミストライフ  作者: VRクロエ
ミール編
85/226

名前が齎す意味

齎す(もたらす)と読みます。

 ある日の鍛錬中、フィオンが戦闘中に関することで一つ話があると言ったので、休憩がてらその話を聞くことになった。


「魔法や異能それに剣術も少々だが、名前が付いているだろう?」


 何かと思えば技名に関する話だった。

 確かに大抵の技には名前が付いている。最近だと使っていないが、名前が付いた剣術というのも少なからずある。


「これには一応理由があるんだ」

「その理由って?」

「極限状態の戦闘中でも瞬時にその行動が行えるようにするためだな。名前が無いと、大袈裟に言えば咄嗟に出すときにその行動と効果をいちいち頭に思い浮かべることになる。これは無意識下になることなのでどんなに研鑽を積もうと若干のラグが出てしまう。逆に名前が付いていれば、名前と連動してその行動を起こすことが出来るから、極めれば殆どノータイムでその行動を起こすことが出来るんだ」


 フィオンの言いたいことはこうだろう。仮に俺の霧化に名前が付いていなければ、発動するときに『自信を霧化させて攻撃を回避しよう』などといちいち考えなくてはいけない。

 俺のは霧化という単純な名称だが、それが付いているだけで霧化を選択した瞬間に発動させることが出来るということだ。


「ただ名前が付いていることは利点だけではない。それが一番分かりやすいのが剣術に付いている名前だ」

「行動が固定されるってことか?」

「その通りだ。名前と行動がセットになっているために剣術に関しては臨機応変に対応出来ず、さらには読まれやすい。本当に限られた場面でしか使うことはできないだろう」


 ミストライフに入ってからの戦闘で俺が技名の付いた剣術を殆ど使わなくなったのは、今フィオンが述べた理由からだろう。

 強者同士の戦闘ではまず前提としてその速度が桁違いだ。さらにそこから多くの手札を出し合いながら状況に合わせて戦っていくので、読まれやすく固定行動になると一歩間違えれば致命傷になりかねない。


「あー、あと異能や魔法を使った特定行動にも名前を付けておくと便利だ。恐らくラクリィは物を霧化させる時と自信を霧化させる時に、同じ『霧化』をトリガーに発動させているだろう? だが一括りにしないで、に剣を霧化させるのであれば『ソードミスト』、そして身体を霧化させる時はボディーミストといった具合に明確に差別化した方がいい」


 驚くほど的確に俺が霧化で統一していることを見破るフィオン。何か癖やラグなどがあったのだろうか。


「私の場合何かを作り出す場合は『クラフト』で物を崩す時は『ブレイク』などだ。まあ物によってはもう少し色々とあるが、自信の中で最速で行動を起こせることが重要だ」


 フィオンの異能は使い方が多岐に渡るので、かなり多くの名称がありそうだが、今までフィオンの異能が遅れたことはないので、相当脳に教え込んだのだろう。


「次の魔法だ。まあお前は使えないらしいからあまり聞いても意味がないかもしれないが。魔法の名称にも色々と面白いことがあるぞ」

「聞かせてくれ」

「うむ。魔法は異能とは違い固有のものが殆ど無い。それは魔法の性質が関係している」

「確か・・・・・・イメージか?」

「そう、イメージは魔法を使う上でとても重要だ。魔法は使用者本人の想像力によってその形が作られているのだが、固有の魔法が中々生まれない理由は、既に存在する魔法を想像して自身も使うからだ。固有の魔法を生み出すとなると、これまでにない、人の想像を越えなければならない」


 イメージして使うとなるとどうしても既存の自身が見たことのある魔法が頭の中に浮かんでしまう。それはある意味仕方のないことでもあり、こびりつくイメージは中々に消えない。


「だがそれでも固有の魔法は存在する。アロマのフラッシュなんかはそれだ」

「フラッシュが?」

「そもそも光魔法自体がイメージしにくいもので、使えるものは殆どいない。フラッシュはただ強い光を放つだけの単純なものだが、自信が光を放つところなんて中々想像出来ないだろう?」

「それはまあ、確かに」

「アロマは恐らくフラッシュの名前を先に思い浮かべてから、その意味を見出し光を放つというところまで行きついたのだろう。このことからも分かるように、魔法において名前は命のようなものなのだ」


 一つの言葉から意味を見出し作られるのが魔法なら、確かに魔法の性質との関連は深い。


「今までは何となく名前を付けたり、呼んだりしていたかもしれないが、これからはそこに明確な意味を持つのも強くなる一歩だと思うぞ」

「・・・・・・勉強になった。技名と行動、そして意味をセットにして脳内に叩きこむ鍛錬もしてみることにする」

「それがいいだろう」


 話終えたフィオンはやることがあると言って訓練場を出ていった。

 俺はそれからただ闇雲に鍛錬するのではなく、考えながらなるべく考えないようにする鍛錬も同時並行で行っていった。


VRくん「なるほどな……まだ魔法にそんな細かい設定があったのか」

VRちゃん「異能がメインのこの作品では、魔法はそんなに目立たないけど大事な要素ではあるのよ」

VRくん「あとラクリィが最近技名を言わないと思ってたが、それにもちゃんと理由があったんだな」

VRちゃん「何だかんだその辺のことはしっかりと理由が付いてるのね」

VRくん「他にも何か忘れてることとかありそうだな」

VRちゃん「探して考察するのもいいと思うわ。 さて次回! 『フィオンと再戦』 お楽しみに~」

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