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ミストライフ  作者: VRクロエ
ミール編
78/226

フィオンの秘策

 フィオンが戦線から離脱してからのキマイラとの戦闘では、相変わらず決定打を与えられずにいた。

 こちらも大した被害は出ていないので膠着状態が続く。

 とはいえフィオンが何かを狙っているようなので、無理をする必要はない。被害が出ないように耐えるだけだ。


「らっくん!」

「分かってる」


 同じような展開を何度も繰り返しているおかげか、キマイラが魔法を放ってくるタイミングと掴めるようになってきていた。

 決して気が抜ける訳ではないが、ギリギリの戦いになるよりはマシだろう。

 フィオンに目を向けている余裕はないので、あとどのくらいかかるかは分からない。身体も本調子ではないのであまり時間はかけて欲しくないが・・・・・・


「何かくる」


 激しい戦闘中イルミアが呟く。

 それと同時にキマイラが後ろに跳び、身を低くして何かをしようとしていた。

 俺達はキマイラの次の行動に備えてお互いの距離を縮める。


 キマイラは少しの溜めの後、上空に大きくジャンプした。

 かなりの跳躍力で、視界の悪い中キマイラの姿が殆ど見えなくなる。

 俺は即座に探知を発動させ、即座に対応出来るようにキマイラの行動を把握する。

 感覚で把握できたキマイラは、真上から三つの魔法を俺達に打ち下ろそうとしていた。


「アロマ!! 全員連れて飛べ!!」

「分かった! 皆! 捕まって!」


 考えている時間はなく、全員がアロマの手に触れモメントジャンプで後方に移動する。


「走れ!!」


 真上からの広範囲魔法、さらにそれが三つとなるとモメントジャンプで稼いだ距離では足りない。

 全力で走り、地面に当たった後さらに広がってくる炎の波やかまいたち、追ってくるように迫る水のレーザーを当たるギリギリで再度モメントジャンプで回避する。


「なんだこれ・・・・・・」

「ラクリィとアロマがいなかったら死んでたよ・・・・・・」


 ミシェとトアンが顔を引きつらせながら、目の前に広がる惨状を見ている。

 草木は焼け地面は剥がれたり抉られていたりと、この世のものとは思えないような光景だ。

 その中心に地響きを起こしながら着地するキマイラ。その姿は更なる恐怖を引き立てる。


「はぁ・・・・・・はぁはぁ」


 回避の中心にいたアロマは異能の連続発動に加わり回避先の選択などでかなり体力を消耗してしまっている。

 これ以上の無理はさせられないだろう。


「何があった!?」


 キマイラも流石に大技を放った後直ぐに戦力戦闘には戻れないようで、お互いに睨み合っていると、俺達よりもさらに後方からフィオンが驚きの声を上げやってきた。


「フィオン!? 準備は終わったのか?」

「ああ、待たせてすまない。全員無事動けるか?」

「大丈夫かアロマ?」

「う、うん。頑張るよ」


 この状況について説明している時間はなかったので、フィオンに準備が完了したのかどうかだけ確認する。

 その辺は終わったようで、動けるかだけこちらに聞いてきたのでアロマに確認すると、肩で息をしながらも小さく笑って心強い答えをくれた。


「よし、だったらこのまま後ろに全力で走れ。ミールがいるはずだからそこまで全力だ」

「その後は?」

「それだけでいい。後は任せてくれ」

「分かった」

「最後尾には私が付く。若干遅れるだろうが気にせず走れ」


 フィオンは後ろは向かずにマフラーから剣を生み出し両手に構える。

 それが合図となって俺達は全力で後ろに走り出した。

 俺達が逃げ出したと思ったのか、キマイラはこれを好機とみて俺達を追いかけてくる。

 やはり速度が尋常ではないが、俺達から少し後ろを走るフィオンが逆に攻撃を仕掛けキマイラの足を止める。

 だが深くは行かず、キマイラの足が止まった瞬間に地面を陥没させたり壁を作ったりと行く手を阻むよう地形を変え、また走り出す。

 全力で走る俺達に対してフィオンは牽制を行っているので、直ぐにその姿が見えなくなってしまった。

 正直心配だが今はフィオンを信じるしかない。

 フィオンが見えなくなって直ぐに、俺達が走る先の方にミールの姿が見えた。


「み、みなさん! ここです!」


 ミールが精いっぱい声を出して俺達を呼ぶ。

 走ってくるのはここまでと言われていたので、ミールの元で全員足を止めた。

 後は後ろを走るフィオンだけだ。

 考えを聞いているだけの余裕はなかったので何を考えているか分からないが、待つことしか出来ない。

 やがて激しい轟音を立てながらフィオンとキマイラが走ってきた。


「ミール! 今だ!」

「はい!」


 フィオンが何かの合図をミールに出した後思い切りジャンプした。

 その瞬間キマイラの足元に巨大な穴が出現し、さらに底には無数の刺が並んでいた。

 穴のスレスレで着地したフィオンは穴に落ちたキマイラに向け魔法を放つ。

 一瞬のうちに様々なことが起こり、頭が追い付いていなかった。


「終わったぞ」


 穏やかな声色とは裏腹に穴の中では刺に突き刺さり、フィオンが放った氷の刃にも貫かれ息絶えているキマイラの姿があった。

 何がどうなって穴が出現したのかは分からないが、フィオンの作戦は見事に成功してキマイラを討伐することに成功した。


VRくん「何が起こったんだ?」

VRちゃん「あまりにも展開が早くてちょっと理解出来ないわね」

VRくん「フィオンがジャンプする瞬間に作ったのかな?」

VRちゃん「それはないわ。キマイラが入る穴を作れるほど広範囲には使えないもの」

VRくん「んー、ミールが関わってるとか?」

VRちゃん「その可能性は高いわね。 さて次回! 『連鎖と反応』 お楽しみに~」

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