キマイラ
キマイラとの戦闘開始!
戦闘を歩いていたフィオンだが、俺の叫びも功を奏して何とか初撃を防ぐことが出来た。
キマイラは初撃をガードされてか、大きな体に見合わない軽やかさで距離を取るように跳んだ。
十メートル程の巨体で四つの鋭い目め向けてくる。唸り声を上げ、完全にこちらを敵と認識してはいるようだが、初撃以降直ぐに攻撃を仕掛けてくることはなかった。
フィオンはその隙に自信を守るように展開していたマフラーを元に戻し、固まるように俺達に元へ合流した。
「ラクリィ、探知には写っていなかったんだよな?」
「ああ、間違いない」
「だとするとラクリィの探れる範囲の外からこちらに気付いて、一瞬で踏破してきたのか。これは予想していたよりも厄介かもしれないな」
「追撃に来ないのはどうしてか分かるか?」
「恐らくこちらが逃げたところを狙うつもりなのだろう。かなり頭がいい。自身の速度を正確に把握して効率のいいやり方を取っている。人間を狩ることにも慣れてそうだ」
「だとすると逃げる選択肢は」
「無いだろうな」
なるべくなら戦闘になりたくない相手だったが、逃げられないのならもう戦うしかない。
「イルミア、ミールを頼む。ミシェとトアンは動き回って視線の誘導を、私、ラクリィ、アロマが主動だ! 核は腹部、そこを破壊すれば勝ちだ!」
「「「「「了解!!」」」」」
イルミアとミールが引いたのを確認してミシェとトアンは左右に分かれて走り出した。
それに対してキマイラは目一つ動かしていないように見えるが、先が顔のように見える尾が2人の動きに反応して動いていた。
実質3人を相手にしているような感覚になる。
二頭の顔に光る瞳は主動である俺達を睨みつけたままだった。
こちらの雰囲気から逃げるのではなく、戦うことを選択したことを察したのだろう。本当に頭が良いようだ。
俺達3人が剣を引き抜くと、戦闘開始の合図だと言うように空気が振動する程の雄叫びを上げた。
初撃はキマイラからだ。
右側の口から広範囲に広がる炎を吐き出した。
だがそれはフィオンが防いでくれる。マフラーを手に持ち巨大な盾のように形を変え俺達を守った。
お互いの姿が隠れるが、俺はそのうちに身体を霧化させ、核がある腹部に潜り込む。
怪我とシノレフの兵士のこともあるので、早期決着が望まれる。なので出し惜しみは無しで開幕から決めにいった。
事実上止めるのはほぼ不可能な俺の接近だが、キマイラは何かを察したように実体化と同時に横ステップからの後ろ脚での脚払い。
何も特別な攻撃ではないが、この巨体での脚払いではそれだけで脅威だ。
俺は回避せざる負えなくなり攻撃は通らないが、すぐさまアロマの追撃が入る。
横ステップと同時に止んだ炎で視認出来るようになったキマイラの行動を見てから即座のモメントジャンプ。
再度腹部への攻撃をトライするが、残りの三本足で器用に身体を捻った。
「うそ!?」
無理な体勢だったのにも関わらず回避されたアロマの剣は核があるとされる腹部の中心を外れ、脇腹辺りに突き刺さる。
血が舞うが、キマイラの動きに変わりはなく、剣が刺さったまま大きく動いたせいでアロマの身体が地面から離れ、キマイラと一緒に跳んでいく。
「アロマ!!」
俺は冷や汗が出たが、アロマも厳しい戦闘を何度か経験したおかげか冷静だった。
グラムの切れ味を活かして、そのまま傷を広げ剣を引き抜き、地面に叩きつけられるスレスレでモメントジャンプのクールタイムが終わり、離れた位置で安全に着地した。
アロマと同時に着地したキマイラにより地面に若干の揺れが生じるが、流石の体感で体勢を崩すことが無かったミシェとトアンが詰め居る。
さらに正面からもフィオンが突っ込み決めに掛るが、二つの頭と尾からそれぞれ炎、風、水の魔法が放たれてミシェとトアンは回避。唯一ガードしながら進むことが出来るフィオンだったが、俺とアロマの時と同様に対処されることは目に見えているので、攻めずに留まった。
一連の流れが終わり、入った攻撃は核を外れた腹部へのもののみ。
再度同じことをしても、更に正しく対処されてしまいそうであった。
「やはり三つ同時に飛んでくる魔法と脚周りが厄介だな。先にそれをどうにかするか、奴の想定と反応を上回る攻撃が必要だ」
「多分生き物の気配にかなり敏感なんだと思う。わたしのモメントジャンプに、らっくんの霧化まで反応するってなると、何か物でも使って不意を突かない限りは反応されちゃうんじゃないかな?」
「そんな都合のいい物用意もなく・・・・・・いや、何とかなるかもしれない」
「何か手が?」
「ああ。成功するかは分からないがやってみる価値はある。すまんが私は一旦準備を整えるために戦線を外れる。イルミア! 少し変わってくれ!」
フィオンには何か考えがあるようで、ミールを守っていたイルミアを呼ぶ。
「すまんが時間稼ぎを頼む。準備が出来次第合図を出すから、それまでは何とか耐えてくれ」
「ん、分かった」
イルミアと変わりフィオンは下がっていった。
フィオンの考えた作戦は分からないが、今出来るのは信じてただ待つだけだ。
VRくん「こうどうして次から次へと強い相手が出てくるんだ……」
VRちゃん「見てると調査班の皆が弱いようにも見えてくるけど、実際あの6人も相当な実力者なのよね」
VRくん「怖えよこの世界。どうなってんだ……」
VRちゃん「まあフィオンには何か秘策があるようだし期待するしかないわね」
VRくん「イルミアと変わったのも気になるな」
VRちゃん「それも次回には分かるわよ。 さて次回! 『フィオンの秘策』 お楽しみに~」