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ミストライフ  作者: VRクロエ
ミール編
75/226

フェイバーギヴ

ミールの異能についての続きです!

 ミールの異能はとても汎用性の高いものだった。

 この村で孤独で且つ本人の性格的に戦闘にも不向きだったことから、その力が十全に発揮されていなかっただけで、使い方さえ考えれば戦闘にしか使えない俺の異能などよりもよっぽど協力だ。

 枝を切った葉をミシェが受け取り、別の枝でも試してみる。

 ミシェはあまり力を籠めずに葉を振り下ろすと、柔らかいものでも切ったかのようにすんなり葉が通っていった。


「なるほど・・・・・・葉が頑丈になっている訳ではないか」


 フィオンは葉をまじまじと見つめながらミールの異能についての考察を進めていく。

 その呟き通り、葉は別に硬くなっている訳でも鋭くなっているようにも見えない。見た目だけなら本当にただの葉だ。


「ミール。次はこの岩を滑るように出来るか試してくれ」

「分かりました」


 フィオンは手短に合った岩をコンと叩きながらミールに要望を告げる。

 その指示を受けてミールは直ぐに作業に取り掛かってくれた。

 先程の葉と似たように、岩に手を触れ集中するように目を瞑る。


「終わりました!」


 ミールは作業を終えた後岩から離れるように数歩下がった。

 岩の前にはフィオンが立ち、岩を押すような形で両手で触れる。

 そして若干の力が込められたと思うと、フィオンはその岩を動かし始めた。

 転がそうにも人の手では難しそうな岩が、まるで地面を滑るかのように動かされていた。

 一頻り岩を動かした後、フィオンは満足そうに頷いて皆を集める。


「ミールの異能について分かったことを大雑把み説明しておく」


 全員の視線、特にミールの視線が熱く注がれる中フィオンは説明を始めた。


「ミールの異能は物に結果を付与することのできる力だ」

「結果とはまた大きく出たな」

「あくまでも私の見解だから本当に合っているのかは分からないが、形やその他諸々には変化を及ぼさずに枝を切ったんだ。ならあの葉には『切れる』といった結果が付与された可能性が高い。岩に関しても同様で、様々な物理法則を無視したあの滑りを見れば『滑る』という結果が付与されたとみるのが妥当だろう」


 前にフィオンから異能の説明を受けたときに、異能とは過程を飛ばし結果を生み出すものだと言われた。

 ミールの異能がフィオンの言う通り、結果を付与するというものならば、何とも異能らしい異能といえる。

 結果の付与というのがどの程度のことまで可能なのかは分からないが、葉ですらあそこまでの切れ味を

 出したのだ、剣などに同じような付与をすればどうなるのか楽しみでもあった。


「この付与についてだが、何か制限など分かったりするか?」


 異能は万能のようで必ず何かしらの縛りがある。ミールの異能にも何かしらの制限はあるだろう。


「えーっと、あまり複雑な効果を付けたりは出来ません。単純な物だけです。それ以外には大切にされている物ほど効果が大きく発揮されるみたいです。先程やった葉は木の枝くらいなら切れましたけど、硬い岩なんかは無理だと思います」

「ほぅ、大切にされている物ほどか・・・・・・面白いな」

「面白い、ですか?」

「ああ、実に面白く興味深いな。物の状態が影響するのは珍しい。感情的な面では私の知る限り初めてのことだな」


 物の状態に影響するのはフィオンの異能も同じだ。しかし人の感情が関わってくるのはフィオンの言う通り相当珍しいのだろう。


「制限はそれだけか?」

「は、はい! 強いて言えば集中して行わないといけないことくらいですかね」

「それのついては制限と捉えなくていいだろう。そこまで切羽詰まった状態で付与することもないだろうしな」

「それもそうですね」

「よし、とりあえず今調べられそうなことはそんなもんか。後は拠点に戻ってからにしよう。それとミールの異能の呼び名だが」


 異能にはそれぞれ固有名詞が付けられている。

 これは誰かがそう呼び出して勝手に決まっていくものらしいが、ミールは今まで異能のことを隠していたのでその呼び名がない。

 別に呼び名が無くて困ることは無いだろうと思うかもしれないが、あると咄嗟の場面で意識的に発動しやすくなるのだ。


「今後ミールの異能は『フェイバ―ギヴ』と呼ぶことにしよう。親愛と相互補完、そんな感じの意味だ」


 大切な物。大袈裟に言ってしまえば親愛。そして結果を与え結果を与えてくれる。フェイバ―ギヴというのは確かに理にかなった呼び名だ。


「フェイバ―ギヴ・・・・・・親愛と相互補完。いい名前だと思います!」

「そうか? 気に入ってくれたなら何よりだよ」


 ミールはフェイバ―ギヴの名を何度も復唱している。その様子は何か自分の中の大切な物へ声を掛けているようにも見えた。


「さて、今日はそろそろ休もうか。ミールも傷は治っているとはいえ無理は良くないぞ」


 ミールを助けてから検証に至るまでかなりの時間を使っていたようで、昼間のみはっきりと見える陽も落ち始めていた。

 明日からは拠点に向けて出発するので、今日はゆっくり身体を休めよう。

VRくん「親愛と相互補完。なかなかいい響きだな」

VRちゃん「今後ミストライフもメンバーとしてラクリィ達との関係性も示唆しているようね」

VRくん「結構重要なことをサラッといったな……」

VRちゃん「まあどういった関係になっていくかはまだ分からないのだし、あまり気にしていても仕方ないわよ」

VRくん「そんなもんか?」

VRちゃん「そんなもんよ。 さて次回! 『村の中のざわつき』 お楽しみに~」

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