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ミストライフ  作者: VRクロエ
ミール編
73/226

ミール・キアナ

タイトルでキャラ名のネタバレ……

 痣が目立つ女の子を背負い皆の所に戻る。

 始めは自分で歩けるからと遠慮されたが、見るからにフラフラしていたので説得し何とか女の子は折れてくれた。

 そもそもバレないように移動するために、足場の悪いところも歩かなければいけなので、怪我を抜きにしても俺が背負っていくのが一番いいのだ。

 足場の悪い道を軽快に歩いていると、女の子は少し楽しかったのか嬉しそうにしている。

 狙ってないにせよ笑顔を見せてくれてよかった。


 皆の元へは直ぐに辿り着く。

 村自体がそこまで大きい訳ではなく、行きは色々と見て周っていたが、そういうのを無しにすれば時間は掛からない。

 手持無沙汰なのか暇そうにしていた一同だが、俺が帰ってきたのを確認し背中に女の子を背負っているのにもすぐに気が付いた。


「その背負っている子供は誰だ?」

「虐められていてな。ほっとけないから連れて来たんだが・・・・・・まずかったか?」

「ああいや、お前が連れてきて大丈夫だと思ったんなら別に何も言わん。それにしても――――――」


 フィオンは俺の背中側に回り女の子の様子を伺っている。

 というよりは金色の髪に驚いていると言った方が正しいだろう。やはりフィオンの目から見ても珍しいもののようだ。


「下ろすぞ?」

「は、はい。運んできていただいてありがとうございます」


 女の子はフィオンの視線にビクビクしつつ、地面に降りると俺に頭を下げてきた。


「いいって別に。それよりアロマ、少しいいか?」

「グラムだよね? その子痣だらけだし早く治してあげないと」


 アロマは俺の言いたいことを察してくれたようで、腰に掛けているグラムを渡してくれた。


「これを持って座ってくれ」

「え、でも・・・・・・」

「持ってるだけで大丈夫だから」

「で、では失礼します」


 女の子は恐る恐るグラムを俺から受け取り地面に座った。


「さて、じゃあ自己紹介からしよう。俺はラクリィ、君は?」

「私はミール・キアナといいます」


 ミールが自身の名前を告げた後にアロマ、ミシェ、イルミア、トアンと続いて自己紹介をする。


「私はフィオンだ。一応、この仲間達を纏める立場にある」

「仲間達?」

「ああ。私達の立場は少し特殊でな、詳しくは今は言えないが勘弁してくれ」


 フィオンが詳しく言えないと言ったのは、まだミストライフのメンバーになるか分からないから安易に素性を晒すことは出来ないということだ。

 つまり仲間になるなら拒みはしないという意味でもあり、そのことについてこれから話していくことになる。


 まず俺はミールと出会ったきっかけについてを皆に話、その後ミールからも詳しく話を聞く。

 どうやらミールの両親は既に亡くなっているようで、この村に身内と呼べるものはいないそうだ。そして両親以外の肉親のことは全く分からず、頼ることも出来ないので、村で1人働いて生活しているという。

 しかし守ってくれる者がいなく、力も弱いミーアはああして村の乱暴な男達から度々暴力を受けており、身体に出来ている痣もそれによって出来たものなんだそうだ。


 後半は聞いているだけで気分が悪くなりそうな話だ。


「なあミール、お前はどうしたい?」

「どう、したいとは?」

「この村で苦しく生きるだけで満足出来るのか?」

「でも、私には他に行くところも頼れる人も、あの人たちに逆らえる力もありません」


 俺の質問に対しても後ろ向きな回答しか帰って来ない。思っている以上にミーアの心は弱っているのだろう。

 どう言葉を掛ければいいか分からなくなり悩んでいると、フィオンが両手でミーアに触れ真っ直ぐに見つめる。


「何も行動していない内から全てを諦めるな。すぐに行動を起こさないのなら、諦めずにチャンスが来るのを待て。それすらしなかったら本当に何も解決しないぞ?」


 この世界で一番大きな決断をし行動する奴の言葉は重い。

 フィオンの目に只ならぬものをミーアも感じ取ったのか、驚いたような表情をしていた。


「ミール、逃げることは悪いことじゃない。諦めることは悪いことだ。どうしようも無ければ、逃げて、逃げて、さらに逃げて次に繋げろ」

「逃げて、次に繋げる・・・・・・」


 ミールはフィオンの言葉に思うとこがあったのか、小さく復唱し視線を下げた。


「もし1人で逃げることが怖いなら、孤独がどうしようもなく辛いなら、私達と一緒に来い。その寂しさも、恐怖も、私達が掃ってやる」

「で、でも・・・・・・迷惑を掛けてしまいます」


 ミールは一瞬付いていきたいと言いたそうにした。しかし暗い顔をし俯いてしまう。

 俺はそれがどうしようもなくもどかしくて、フィオンの横に並びミーアの顔を覗き込んだ。


「ミール、俺は力の無い者が強者に一方的に貶められるのは嫌いだ。そんなことが日常的に起こる今の世界だ嫌いだ。だから俺はそれが少しでもなくなればと、行動している。今回ミーアを助けたのもそんな理由だ」

「ラクリィさん・・・・・・」

「ミールが俺達と共に来ること、それはミールが迷惑を掛けるどうこうの話じゃなくて俺が自身の意思で行動したことだ。逆にミールがここで強がってまた同じことが繰り返されたら、それこそ俺の理想から遠ざかる」

「それは言い過ぎじゃ・・・・・・」

「いいや、そんなことはない。だから、だからさ・・・・・・ミールが本当に助けを必要としていて、俺が助けられるなら、助けさせてくれ」


 勝手な理由だ。しかし俺はもうミールに傷ついてほしくない、知ってしまえば放置なんて出来ない。

 ミールは俺の言葉を聞いて俯いたが、しばらくして顔を上げた。

 その顔には涙が零れていた。


「わ、私を連れてってください! もう1人は嫌なんです! 痛いのも嫌なんです!」


 ミーアの心からの叫びを聞いた俺達は顔を合わせ頷く。

 フィオンが今度はミーアの手を取り、痣の無くなったミーアを立たせた。


「ようこそミストライフへ! 歓迎するよミーア!」


 その言葉を聞いたミーアの顔には笑顔が咲いていた。

VRくん「今回はセルフでカッコよさを見せつけて来たな」

VRちゃん「ラクリィとフィオンは志が近いから、2人合わせて喋ると言葉が重なっていい感じよね」

VRくん「結局は似たもの同士ってことだな」

VRちゃん「これからも2人にはカッコよくいて欲しいわね。 さて次回! 『金色の髪』 お楽しみに~」

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