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ミストライフ  作者: VRクロエ
レホラ王国編
68/226

VSシャクスト4

ラクリィ対シャクストの一騎打ち!

 地面に蹲り苦悶の声をあげる仲間達。すぐに動くことは出来ないだろう。

 シャクストは止めを刺しにくる様子は無く、流石に身体が辛いのか肩で息をしつつも、1人立つ俺に獰猛な笑みを向けてくる。


「運命的だよな。俺様達に唯一牙をむいて来るお前らミストライフに俺が最も欲しい奴と最も殺したい奴が共にいるってのは」


 何かを懐かしむような、そんなようにも見える表情をしてシャクストは語りだした。


「どういうことだ?」

「フィオンという人間は俺様が今まででこれ以上とないくらいに欲しいと思える。そして何の因果か、その隣に立つお前はどれだけ実力があろうが絶対に引き込もうとは思わない。殺してこそ価値がある」

「だからどういうことだと聞いている!!」

「生き残れたら知る機会もあるかもな!」


 話は終わりだとばかりに、シャクストは俺に向け突っ込んでくる。

 幸いミシェの魔法がまだ生きており、先程よりもさらに早くなったシャクストの攻撃になんとか対応することが出来た。


「お前の力はこんなもんじゃないはずだ。もっと霧を感じろ取り込め。世界に蔓延る霧を己の物としろ!」


 訳が分からない。殺したいという割には俺にアドバイスのようなものまでしてくる。

 シャクストは確実に俺に知らない俺のことを知っている。だがそれを話してくれる気はないようで、ひたすらに俺のことを煽ってくる。

 まるで今のお前を殺しても意味がないとでも言うように。

 攻撃も決して対応出来ないものではない。その気になればすぐにでも殺すことが出来るだろうに。


 シャクストの狙いは不透明だが、手加減してくれているおかげで思考する余裕が若干生まれた。

 俺の異能は霧に浅くない繋がりがあるのは今更言うまでもない。シャクストの言葉を真に受けていいのかと疑問に思うが、もし俺がもっと霧と自信を結びつけることが出来たならば、本当に今よりも強くなれるかもしれない。


 フィオンは霧を一種の魔力と言っていた。

 魔力を変化させて放つ魔法は、言ってしまえば変質させた魔力に形を与えて放っているということだ。

 ならば俺にも出来るはずだ。自信を霧に溶かすだけではなく、霧そのものを操ることが。


 手を翳している余裕はない。体内から放出させる動作を省き発動させるにはこうするしかない。


「ふー」


 普段は何の意識もせずに行う呼吸を、意識的に深く行う。

 氷の刃や風が起こったりはしない。アロマのフラッシュのように物理的に視界に影響を与える現象が起こったりもしない。

 だが劇的に変わったことがあった。俺自身の感覚だ。

 シャクストの動きを正確に捉えられるようになったどころの話ではない、一定の範囲内の小さな草木の微弱な揺れすら手に取るように分かる。

 こうなってしまえばいくら早いシャクストの攻撃でも回避するのは難しくない。

 迫る拳をギリギリではなく、先読みしたような正確さで余裕を持って回避する。


「何か掴んだみてえだな! それでこそ殺し甲斐があるってもんだ!!」


 謎にテンションを上げたシャクストはさらに攻撃の速度を上げる。

 あり得ない速度に流石に回避が厳しいが、戦えない程ではないと感じた。


 一進一退の攻防。シャクストの攻撃を掻い潜り、俺のカウンターを回避しようと身体を捻る動きに更に反応して攻撃の軌道を変えるが、それすら掻い潜り回避を成立させるシャクスト。

 互いにかすり傷程度の攻撃すら食らわず戦闘は進んでいった。


 このまま俺以外のメンバーが回復してくるまで耐えていれば勝ちは目前なのだが、この果てしなくレベルの高い攻防は長くは続かなかった。


「っ!?」


 突如として視界が赤く染まった。原因は俺の両目から流れ出る血だった。


「慣れねえ力で脳が悲鳴をあげたか? それとも身体の構造上の問題か・・・・・・いずれにせよ残念だったな」


 それをトリガーに身体が急激に重くなり、全てを把握出来ると思えるような全能感が消失していく。

 残ったのは自身の血で不明瞭になった視界、そんな状態では今のシャクストの攻撃を回避することは出来るはずがない。

 腹に大きな衝撃と共に急激に動き回る視界。その少し後に数度の衝撃が身体を流れ、最後には天を見上げていた。


「かふ……」


 呼吸音でも苦悶でもない音が口から漏れ出る。

 あばらが折れ、体内に出来た傷から出た血が吐き出てきた。

 身体を無理やり起こしたが、あまりの痛みに悲鳴を上げそうになる。


「出来ればもう少し遅く出会いたかったなぁ。だが仕方ねぇ、ここで死ね!」


 速度は無いが確実に俺を殺せる威力を秘めたシャクストの拳が、俺の頭部めがけて振り下ろされる。

 回避は不可能だった。


「らっくん!!」


 当たる直前叫び声を同時に、俺の目に映ったのは蒼と赤の髪。

 何とか動けるまで回復したフィオンとアロマがモメントジャンプで割り込んできて、フィオンがマフラーでガードしたのだ。


「ここまでだラクリィ・・・・・・退くぞ」


 苦虫を噛み潰したような顔でフィオンは告げる。

 その意味するところは俺達の敗北だった。

VRくん「そんな……」

VRちゃん「ラクリィが新しい力に目覚めても王の頂は遠いのね……」

VRくん「まだ何とか生きてるだけ幸いだってことか? だがこの状況でどうやって逃げるんだ?」

VRちゃん「シャクストもかなりボロボロだし何とかなると思いたいわね」

VRくん「何か一つでもミストライフにとって都合のいいことが起きれば……」

VRちゃん「上手くいくことを願うしかないわね。 さて次回! 『敗北』 お楽しみに~」

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