VSマクワヤード1
引き続き戦闘回!
本気を出したマクワヤードは圧倒的な強さを誇っていた。
ミシェリアとトアンもかなりの実力があったので、未だに致命傷は受けていないが身体には片手では済まない程多くの傷が出来ており、戦いのペースはずっと握られたままだった。
「まだまだ!」
激しい攻めにまた一つ傷が増える。
「はぁはぁ・・・・・・くっそ!」
「トアン次が来るよ!!」
肩で息をし全身に汗が滲むトアンにミシェリアが焦るように声を掛ける。
傷口に汗が入り、針で刺されたような小さな痛みを感じていたが、それに一瞬でも意識を取られるわけにはいかなかった。
マクワヤードの攻撃を受け止める役割であるトアンが崩れればいよいよ勝機が無くなってしまう。ミシェリアも心苦しい思いではあったが任せるしかない。
目立った傷もないマクワヤードの勢いは止まらない。
ここまで致命傷を受けていないのを考えれば、攻撃を受けるところまでは何とかなっているのだ。
だが有効打が打てない。
反撃しても巧妙に受け流され、結果またこちらが受けなくてはならなくなってしまう。
そもそも1対1では相手にすらならないのだ。トアンが一方的に受けに回りミシェリアと攻撃を合わせられない現状では1対1を二回やっているのと大差ない。
いくら2人が強いと言っても、今まで戦ってきた経験値ではマクワヤードの方が圧倒的に多い。
いつまでもこのまま戦うくらいであれば、何処かで何かを捨てなくてはならない。
「ミシェ、このままだと負ける。ある程度のダメージは覚悟して攻めるしかない」
「何か策は?」
「実力で上回る相手とこうして対面してしまっている以上即興で考えられる策は使えない。幸いマクワヤードは多数の武器を使えるというものの他に搦め手は持って無さそうだから、2人で攻めて削り合いで勝ちに行く」
「ならここからは受けずに回避がメインになるんだね」
「そうだ。ミシェの負担が大きくなって申し訳ないが、勝つにはこれしかない」
「ううん、むしろここまではトアンの負担が大きすぎたんだよ。私ももっと頑張らないと」
「ふふ、心強いな。それじゃ頼む」
動き回りながら行動指針を決め、マクワヤードに先手を打たれる前に攻撃を開始する。
大剣やバトルアックスによる攻撃は食らってしまえばその時点でアウトなので絶対に回避するようにする。槍も火力は高いが隙が若干できるので出来るなら小さく回避、短剣と双剣は急所だけ回避しなるべく切り返しを狙う。
手数では単純計算マクワヤードの二倍なので、何とか攻めは成立していた。
とはいえ、一瞬の隙を狙ってマクワヤードは反撃してくるので細かい傷は増えていく。
「ちっ・・・・・・」
小さくマクワヤードが舌打ちをする。
いくら上手く受けているとはいえ、2人の猛攻は少しずつだが確かにマクワヤードに届いていた。
思っていた以上にこの攻めが上手くいっているのは、2人が想定していなかったものも関係していた。
2人の攻撃を受けるたびに少しずつだが、土で出来た武器が削れていた。結果として武器のリーチはどんどん短くなっていき、大きな武器に変形させることも出来ず、マクワヤードの手札が少なくなっていった。
魔法は万能ではない、身体を巡回させた魔力を使って発動させるために基本的には手の平などを翳す必要がある。
つまりマクワヤードが再び土のリソースを確保するには地面に手を触れる必要があった。
そのような隙を2人が逃すはずがない。マクワヤードは容易に動くことが出来なかった。
そして遂に大きな一撃が入る。
ミシェリアが放ったすり抜けるような突きがマクワヤードの右肩に深々と突き刺さる。
引き抜くと同時に血しぶきがあがり、マクワヤードは忌々しいといった表情になった。
「ナイスだミシェ! 一気に攻めるぞ!」
「うん!」
これを好機とみて更に攻撃の激しさを強める。
右肩の傷と先程の半分もない土の武器のおかげで、攻撃が当たる回数では完全に逆転していた。
一つ、また一つと確実に攻撃を当てていく。
流石というべきか、マクワヤードはそれ以降大きな一撃を当てさせてはくれないが、何事も無ければこのまま押し切れるだろう。
だが、やはりそう簡単に倒されてくれるような相手ではなかった。
「まだまだ・・・・・・見くびるなよ若造が!!」
そう叫んだマクワヤードは限界まですり減らされた今はもうただの土塊と化しているものを手を覆うように纏わせミシェリアの剣を掴んだ。
纏わせただけでは完全にガード出来てはおらず、手からは血が出ているが勢いを止めるのには十分だった。
掴んだ剣を捻りミシェリアの手から奪い去りそのまま剣の柄で殴りつける。
「ミシェ!」
「痛っ・・・・・・トアン! ダメ!」
強い衝撃に一瞬意識が飛びかけるも何とか持ちこたえたミシェリアがカバーに入ろうと突っ込んできたトアンに向け叫ぶ。
少し上手くいっていてトアンは失念していた。この流れはあくまでの2人で攻め、絶え間ないカバーと徐々に出来上がった武器の有利により成り立っていたということを。
この状況でトアンが突っ込めば、武器を手に入れたマクワヤードと疑似的に1対1をすることになる。
「焦ったね。強かったよ君たちは」
肩に攻撃を受け声を荒げたのが嘘のようにマクワヤードの口調は穏やかだった。
本来は捌くのが難しいはずのトアンの攻撃を軽く捌き、大きくトアンの剣を弾いて体勢を崩す。
そのまま斬り下ろされたマクワヤードの剣は何の抵抗感もなくトアンの身体を斬り裂いた。
VRくん「トアン!!」
VRちゃん「まさか最後の最後で最悪の展開ね」
VRくん「トアンがやられたらいよいよ勝ち目がなくなるぞ・・・・・・」
VRちゃん「このまま負けるのか、トアンが立ち上がってミシェと共に勝つのか」
VRくん「この後の展開が気になるところ」
VRちゃん「次回! 『VRマクワヤード2』 勝負の行方はどうなるのか!? お楽しみに~」