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ミストライフ  作者: VRクロエ
レホラ王国編
57/226

王城脱出

レホラ王国編も大詰めに突入! と言っても話数的にはまだまだ長いですが。

 フィオンも無事救出出来たので後はここから脱出するだけだ。


「どうする? 正面突破か?」

「に、なるだろうな。この辺りは私の異能では分解出来ないみたいなんだ。恐らく私が知らない素材で作られているのだろう」

「そうか・・・・・・なら道案内を頼む。敵は俺がどうにかしよう」

「頼もしいな。では、任せた」


 剣を引き抜き一呼吸入れる。

 戦闘に気持ちが切り替わった所で思い切り扉を斬り裂いた。

 斬り開かれた扉の向こうには驚いたような顔をしている5人の兵士がいた。

 だが、流石に手練れの兵士というべきか直ぐに厳しい顔になりそれぞれが剣を構えた。


「悪いが通してもらう」


 先手必勝。相手に囲まれる前に素早く移動し5人の兵士に致命傷を与える。

 もしかしたらヤカサスかシャクストに命令されているだけだったかもしれないが、だからといって手心を加えられるほどの余裕はない。

 それに、脱出がバレるにしてもそれが遅いことに越したことはないだろう。


「フィオン頼む!」

「任せろ!」


 俺の半歩先をフィオンが進む。

 フィオンが囚われていた場所付近の見回りをしていた兵士がこちらに気付いては斬りかかってくる。

 その瞬間タイミングを合わせてフィオンと立ち位置を入れ替わり迎撃する。

 もう10人以上は斬っただろうか? 久々の感覚だがやはり慣れることは出来そうにない。

 肉の感触を噛み締めながら進み、階段を駆け上がると更に10人の兵士が待ち構えていた。

 思っていた以上に情報伝達が早い。これ以上時間を掛けるとヤカサスか、果てはシャクストまで出てくるかもしれない。

 そうなると状況は最悪だ。


「どっちだフィオン!」

「左進行で真っ直ぐ行く! 突き当りの壁をぶち破る」

「了解」


 流石に囲まれた状態で全員を相手にするのは面倒なので一点突破だ。

 進行方向にいる兵士を勢いのまま突撃して蹴散らす。

 空いた穴は直ぐに塞げるものではない。後ろを取られる形になるが、相手に比べてこちらは軽装備なので撒くことは難しくない。

 道の先を塞ぐように出てくる兵士を足を止めないよう勢いのまま一撃で仕留めさらに先へ進む。


「ここか!」


 廊下の突き当りに辿り着き、フィオンがその手を壁に触れる。

 壁はいとも簡単に崩れ薄暗くなりつつある外の景色が目の前に広がった。


「私から離れるなよ!」


 城の構造上ここは一階だが、こうして壁を壊して外に出るとなると地上までの距離はそれなりにある。

 仮に上手く着地出来たとしても動くことが出来ない程の怪我を負うことになる。

 だが、フィオンは躊躇うことなく飛び降りた。

 ならば俺がとる選択肢など一つしかない。

 フィオンの後に続き飛び降りると、心地のいい壁と浮遊感が身体を包んだ。

 迫る地面。このままではぶつかってしまうと思ったが、先に行くフィオンの身体が吸い込まれるように地面の中に消えた。

 そのまま俺も地面の中に突っ込む。感覚的には水の中に入るようだった。

 落下の勢いのまま沈みに沈んで、やがて少しの浮遊感を感じたと思ったら地面の上に落っこちた。

 勢いが完全に殺された状態で落ちたので殆ど痛みはなかった。


「ここは・・・・・・」


 地面の中には人が丁度2人程入れる広さの空洞になっていた。


「どうにかなって良かった。怪我はないか?」

「ああ、それは大丈夫だ。この空間は咄嗟に作ったのか?」

「こうするしかなかったからな。これで追ってはこれまい」

「流石だな」

「気を抜くのはまだ早いぞ。向こうも何かしらのトラブルがあった可能性もある。それにキャロルのこともあるしな」


 フィオンの言う通り俺達がバレた時点で王都内に警戒網が敷かれていてもおかしくはない。

 なれば、一先ずは皆と合流しなければ。


「どうする? このまま地面の中を進んでいくか?」

「それもいいが、流石に何処かで一旦地上に出ないと場所が分からなくなってしまう」

「分かった。悪いがこっからは任せきりになる」

「ふっ、問題ないさ」


 フィオンは何でもないように軽く笑うと地面の中を進み始めた。

 何も目印がないまま進んでいるので、本当にこちらの方角であってるのかは分からないが、フィオンのことだから何だかんだ行っても大丈夫なのだろう。

 途中、一旦地上に出ると言って外に顔を出すと、静まり返った公園の中に出た。

 そこでフィオンは再度方角を確かめるともう一度地面の中に潜る。

 そこから更に一直線に進み、やがて何か硬いものにぶつかった。

 この状況は少し前にあった。レホラ王国内に入る時だ。

 と、いうことはとりあえず皆と別れた付近までは帰ってくることが出来たのだ。


「「「あ」」」


 壁を砕くとアロマとミシェとトアンが目の前におり、3人は間抜けな声を上げた。

 唯一声を上げなかったのは壁に背を預け眠そうにしているイルミアだけだった。


「今戻った。遅くなってすまない」


 突然の状況だというのにフィオンはいつも通り落ち着いている。


「待ったよフィオン! 時間に遅れるなんて初めてじゃない?」

「心配かけさせやがって」


 ミシェとトアンは呆れたようにフィオンに言う。

 何だかんだ信頼しているとはいえ心配だったのだろう。

 問題はアロマだ。何やら俺のことを睨みつけている気がする。


「遅い」

「ご、ごめん。少しトラブルがあってな」


 アロマは少し怒ったような口調だった。


「あんまり心配させないでよ! 気が気じゃなかったんだからね!」

「そんなにか。もう少し信用してくれても――――――」

「またいなくなったらって思ったら・・・・・・」


 ああ、少し無神経だったかもしれない。

 俺が崖から落ちたときアロマにどれほど心配を掛けたか、俺はまだしっかり理解出来ていなかったのだろう。


「気を付けるよ」

「うん・・・・・・」


 アロマに心配をかけてしまったことは心苦しい。

 同時にあの状況から何とか抜けれたことに安心感を覚えた。

 少々トラブルはあったが、後はキャロルと合流できれば全ての目的は達成できる。

 もう一踏ん張りだ。


やはりアロマのヒロイン力が高い……頑張れフィオン!

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