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ミストライフ  作者: VRクロエ
レホラ王国編
55/226

side アロマ

前回のサイドストーリーに引き続き今回はアロマの視点になります!

 まさかここまで大きな転機が来るとは思ってもいなかった。

 流れる時の中で戦いと少しの休息、何だかんだで幸せな日々を送っていくのだと。

 何も特別なことが無くても大好きならっくんと一緒にいられればそれだけで満足出来る。

 もし危険が迫ればわたしが何としてでも守ろうと、いざとなれば権力を使うことも厭わないつもりでいた。


 しかし考えが甘かった。

 いくら権力があろうとも、それなりの実力があろうともどうしようもないこともあった。

 ヨルムンガンド討伐で嫌という程思い知らされた。

 ヨルムンガンドとの戦い自体はそれなりにやれていた。


 問題はシノレフが介入してきてからだ。

 対人戦はらっくんとサレンさんと訓練していたし、はっきり言って実力も一般の兵士よりはあると自負していたので初めての実践でも上手くやれる自信はあった。

 心配するらっくんにも大見得を切った。

 だが現実はそう甘くはなく、際限なく多方向に意識を割かなくてはならず疲労は想像の数倍の勢いで蓄積されていく。


 それだけならまだ何とかなったかもしれない。

 それ以上に精神を追い込んでいったのは初めて斬った人の感触だった。

 霧魔獣とは違う感触、そこに断末魔や死ぬ間際の表情が加わり精神をゴリゴリと削っていく。


 結果わたしは守ると決めていたらっくんの足を引っ張る羽目になった。


 らっくんに掛る負担は徐々に大きくなっていき、そして散々迷惑を掛けた挙句にわたしはらっくんに守られらっくんを一度失った。


 再会することは出来たが、あの時は自分でもどうにかなってしまいそうだった。


 そしてミストライフに入り、もう二度とあんなことが起こらないよう更に研鑽を積もうと決めた。

 正直1対1で戦えばいい勝負、果ては勝てると思っていたらっくんはわたしの想像をはるかに超えて力を付けていた。


 それにフィオンの存在だ。

 まだ出会ってからそれ程時間が経っていないはずなのにらっくんはフィオンに絶対的な信頼を寄せているようだった。

 フィオンもフィオンでらっくんには他のメンバーとは違う感情を抱いているような感じだ。


 2人を見ているともやもやした。

 理由は考えなくても分かる、嫉妬だ。

 背中を預け合うというわたしには届かなかったところにフィオンはいる。悔しくて情けなくて自分が嫌になる。

 だがフィオンは強かった。わたしの何倍も、強くなったらっくんよりも。

 それだけではない、2人はその身に宿す意思にも近しいものがあった。

 わたしのようにらっくんと一緒にいたという邪な考えの元ではなく、本気でこの世界を憂いそれを変えるべく行動している。

 素直に凄いと思う、わたしにはそんなスケールの大きなことは考えられないよ。


 それでも決めた、2人に付いていくと。

 今度こそは守られるだけじゃなく守って見せると。

 フィオンの指導もあり、わたしの力は飛躍的に伸びた。今ならあの時と同じ状況になってももう少し上手く立ち回ることが出来る自信もある。

 しかしまだ足りない。こちら側の世界は今までの強さの基準など何の役にも立たないのだ。

 実際異能を持たないミシェとトアンにも勝ち越すことは出来ないでいた。


 そんな状態でこの任務を迎えてしまった。

 フィオンの指示によりらっくんとは別行動だ。

 いくらフィオンが付いているとはいえどうしても心配になってしまう。

 またらっくんが何処かへ行ってしまうのではないか、とそんなことばかりどうしても考えてしまう。

 口に出すわけにはいかない、顔に出すわけにはいかない。わたしにも任されたことがある。

 そちらが疎かになってはいよいよらっくんと共にいる資格は無い。


 様々な感情を抱きながらも任務はしっかり行い、夜になる頃には所定の位置に戻ってきた。

 ミシェとトアンとイルミアは既に戻ってきていたが、らっくんとフィオンはまだだった。

 慎重に動いているのだろうか? そろそろフィオンが戻ると言っていた時間だが、2人が戻ってくる気配は無い。

 嫌な予感がしつつももう少し大人しく待ってみることになった。

 しかしどれだけ待とうが2人は現れない。


「戻ってこないな・・・・・・」

「フィオンが指定した時間に戻らないなんて初めてじゃない?」


 ミシェとトアンの会話を聞いて更に嫌な予感が強くなる。


「何かあったんじゃ・・・・・・」


 思わず口に出してしまった。

 考えないようにしていたのだが、もう遅い。手に嫌な汗が滲む。


「ねえミシェ、探しに行った方がいいんじゃ・・・・・・」

「んー、悩みどこだね。探しに行くにしても場内は余りにも情報が無いし」

「そもそもあの2人が何かあったとしても、そう簡単に後れを取るとも思えない。日が昇るまで待って戻らなければまた考えよう」

「そうだね。そうしよっか」

「分かった・・・・・・」


 ミシェとトアンは余り心配していないように見えた。

 それは信頼から来るものか、只楽観視しているだけか、いずれにせよ2人がそう決めたならわたしが余計な動きをするわけにはいかない。


 それでも心配なものは心配だった。


 らっくん、不安だよ。早く戻ってきて、何事もなかったって言ってよ・・・・・・。


 状況は思った以上に進んでいっているのだが、この時はまだ何も知る由は無かった。



次回から本編再会です。

サイドストーリーで書いた2人の思いと合わせながら今後の展開を想像してみてください!

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