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ミストライフ  作者: VRクロエ
レホラ王国編
54/226

side キャロル

キャロル視点の話になります。

次かその次にアロマ視点を挟むかもしれません。

 フィオンはどうしているのだろう。

 日々考えるのはそんなことばかりだった。


 唯一心を許した相手であり、唯一友と呼べる相手であるフィオン。

 突然の別れから、その足取りは全くと言っていい程掴めなかった。


 フィオンが国を出た理由は分かっている。


 レホラの王族は幼いころから王の思想を教え込まれ、従うように促される。

 感じたままのことを言えば、それは悪だった。

 しかし背いても何も起こらないので素直に頷く。

 いや、何も起こらなくは無いだろう。少なくとも私は消されるのだから。

 兄であるヤカサスは自分たちが特別なのだと疑ってはおらず、なるような性格に育った。


 きっとフィオンも父シャクストの意思に触れ、そして振り払ったのだ。


 フィオンはとても強い人間だ。

 戦闘、知識、意思と全てを兼ね備えた完全無欠と言って良いレベルで。

 決して流されることなど無いのだろうと思っていたからこそ、私は彼女に心を許していたのだと思う。


 出来ることならフィオンに付いて行きたかった。

 私の知らない所で事が進んでしまったのは本当に痛い。

 だが動いたのなら私にも出来ることがあるはずだ。

 大きな行動は起こせない。出来ることを模索し結果私は情報収集に徹することにした。

 表向きは従っている振りをして、ひたすらに情報を引き出す。

 フィオンといつか再会した時の為に少しでも役に立てるように。






 ――――――――――






 ある日何の脈絡もなくその時がやってきた。

 久々に見たフィオンは、昔から変わらない可憐さに大人びた雰囲気を足したような綺麗な女になっていた。


 本当ならその場で再会を喜びそのそばで支えたい所だったが、状況があまり良くなかった。

 ヤカサスだけならば切り抜けることは難しくないが、父が出てくればまず勝てない。

 それは数年で集めた情報から見ても間違いはない。

 仕方がないので、今は動かないでおく。


 ごめんなさい、後で必ず逃がすから。


 だが拘束後のフィオンは簡単には助け出すことが出来ない状態だった。

 警備が多いなどではなく、単純に拘束が固すぎて私にはどうしようも無いからだ。


 ならばまずはと、フィオンの隣にいた男の元へ向かうことにした。

 慎重なフィオンがあの場に1人しか連れてこなかったところを見れば、あの男も相当な実力者なのだろう。

 実際、先の戦闘でもヤカサスが守ってくれなければ、私はやられていたはずだ。


 見張りを下がらせ男と向き合う。

 名をラクリィ。こんな状況だというのに全く持って落ち着いている。

 恐らくこの状況を打破する術を模索しているのだろう。


 若干煽るように会話をする。

 こちらの考えはなるべく読ませない。


 ただ少し会話しただけでも私はラクリィさんに対して非常に好感が持てた。

 そして何よりも羨ましかった。フィオンを心から信頼し、そしてフィオンもきっとラクリィさんに大きな信頼を寄せていると予想出来たから。

 私も信じてみようと思えた。


 フィオンの囚われている場所を教え救出に向かってもらう。

 あの透明になれる能力があれば辿り着くのは容易だろう。


 あまり長く話し込んでいても怪しまれるので、そろそろ戻ろうと思ったらラクリィさんの口からまさかの言葉が出てきた。

 まさか仲間に誘われるとは。

 自分で言うのもアレだが、出会いがしらは最悪だったと言える。

 この程度の手助けで信用されたのかとラクリィさんへの評価を下方しようかと考えたが、そうはしなかった。

 ラクリィさんは何かを察しているような感じに思えてしまった。

 もしそうならむしろ今までの評価が低かったとさえ思える。

 考えてみればあのフィオンがそばに置いているのであれば、只実力があるだけではないのは間違いない。


 返事については少し悩んだが、最終的には乗ることにした。

 相当なリスクだが、私の知っているフィオンなら無茶をしてでも迎えに来ようとするだろうし、何だかんだ何とかしてくれるのではないかと期待もしてしまう。


 これが私の甘さかもしれませんね。


 散々フィオンを見てきた。

 奇跡のようなことも起こしてしまうのがフィオンだ。

 私は裏でこの世界を貪る王達よりも、フィオンこそが特別なのだと信じている。


 こうなれば今の私に出来ることは、なるべくリスクを減らして動くこと。

 ラクリィさんに負けてはいられない、必ずフィオンの役に立ってみせる。


 自室に戻り、これまで集めた情報を纏めたノートを運びやすいように一括りにし、抜け出す経路を思考する。

 夜が更けてからの行動になるので、視界が不明瞭でも間違わないように何度もシミュレートし万全の状態で挑む。

 最悪シャクストが出てくることも計算して。

 シャクストだけではない、()()()()には油断出来ない人物がゴロゴロいる。


 そんなこんなで夜は更けていき、レホラ王国内における最終局面に移行しようとしていた。

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