キャロル・ルーチェ・レホラ
キャロルは他に名前の候補が3つ程あったキャラです。
結局無難な名前に落ち着きました。
冷たい床の感触を感じて目が覚める。
目を開け、一番最初に目に映ったのは薄暗い天井だった。
状況を確認すると、どうやら気絶している間に牢屋に連れてこられたようだ。
手には黒い色の手枷がはまっている。見張りは1人。
脱出しようと思えば出来そうなくらいには警備が甘い。
次に考えるのはフィオンのことだ。
同じ牢屋に閉じ込められていないので正確には分からないが、考えられる可能性としては別の牢屋にいるか、全く別のところに連れていかれたかだ。
殺された可能性は低いと思う。
殺すのなら意識がないうちにそうしない理由が無い。こうして俺が生きているならフィオンも生きてるだろう。
完全に後手に回ってるが、こうなったら相手に何かしらのアクションがないうちに動いた方が良さそうだ。
まずは部分霧化をして手枷を外して・・・・・・あれ?
腕を霧化させて手枷を外そうとしたが、霧化が上手くいかない。
その後も、何回も挑戦するが何故だか霧化を発動させることが出来なかった。
手どころか、身体のどこも霧化させることが出来ない。
こうなると話は変わってくる。
霧化出来ない原因は一旦置いておくにしても、この状況を打破することが非常に困難になった。
あと取れる選択肢はあの兵士以外の、出来れば会話のする気のある奴が来るのを待つしかない。
時間と運に左右される選択肢で、しばらく何もできないことを覚悟していたが、以外にも早くその転機は訪れた。
背を向け、面倒臭そうにしていた兵士が急に立ち上がり頭を下げる。
何事かと思い目を向けると、そこにはキャロルがいた。
「キャロル王女殿下!? こんなところに何用で・・・・・・」
「少し、彼と2人で話をさせてください」
「い、いえ。しかし・・・・・・」
「はぁ、では命令です。少し下がっていなさい」
「・・・・・・失礼しました。お気をつけて」
強めの命令口調でキャロルが命令すると、兵士は頭を下げてから何処かへ行った。
兵士が下がったのを確認した後キャロルは檻越しに俺のことを見る。
「――――――改めて、私はキャロル・ルーチェ・レホラ。この国レホラの第一王女です」
「ご丁寧にどうも。俺はラクリィだ」
本来ならばこんな雑な言葉遣いなど王族相手にはしないのだが、敵だというのならば今更そんなものは必要ないだろう。
「ラクリィさん。あなたはフィオンの仲間なのですよね?」
「仲間だな。フィオンのことは無条件で信じているし、あいつが目的のために死ねと言えば死ぬくらいには覚悟もある。そういうあんたはどうなんだキャロル・ルーチェ・レホラ。俺はフィオンから友だと聞かされていたんだがな」
「ええ、フィオンは私の唯一と言って良い友ですよ。今でもそう思っています」
「ならどうして!?」
思わず声を荒げてしまった。
友だと今でも思っているのならばあの時何故攻撃出来たんだ、やりようはいくらでもあったはずなのに。
声を荒げた俺に、キャロルは少し悲しそうな顔をした。
「すいません。あの場ではああするしかなかったんです」
「どういうことだ?」
どんな言葉がキャロルの口から出てくるのかと思っていたら、全く予想のしていなかった謝罪だった。
「フィオンとラクリィさんの潜入にいち早く気が付いたのは兄のヤカサスでした。直ぐに父シャクストに話が伝わり、あなた達の捕縛が命じられた」
「かなり慎重に動いたのに気付かれたのか・・・・・・」
「ヤカサスは勘が鋭く、それが今回のような大きな事柄に関してはかなりの高確率で嗅ぎ付いてきます。そして私にも捕縛が命じられたとあれば動くしかありません。ヤカサスならまだしも、父には1人ではどう足掻いても勝てないので」
「言いたいことは分かった。正直まだ信じられないが、そんな話を俺にした意味は?」
「フィオンを助けてください!」
おっと、ここに来て都合のいい展開になってきたな。断る理由は無い。
「分かった」
「ではまずフィオンの居場所ですが――――――」
俺の返事は予め予想していたのだろう、特にこれといった反応もなく知りたい情報を話してくれた。
完全に信じ切るのはやはり無理だが、一先ず自由に動けるようになるのならば罠でも最悪はいい。
それに微かだが、フィオンを心配するような感情が伝わってきた気もするので、今はその直感を信じよう。
一通り話終えた後、俺に付けられている手枷を外してくれた。
更に気が付かなかったが、腰から無くなっていた俺の剣も渡してくれた。
「不用心だな。俺があんたを害するとは思わないのか?」
「あら、私は殺されてしまうのですか? それは大変ですね」
「はぁ、全く。最後に一つ、俺達の仲間にならないか?」
「それは魅力的な提案ですね。出来ればフィオンから聞きたかったですが」
「俺で悪かったな。で、答えは?」
「勿論そちらに付かせていただきます。ですがフィオンの救出に私は足手まといだと思うので、また後程合流という形でよろしいですか?」
「足手まといになりそうな感じはしないがな」
「隠密行動は些か苦手でして、王女というのは目立ちますから。それに私が裏切ったとなれば確実に父が出てきますよ。あなただけならヤカサスだけで済むかもしれませんが」
「確かにそれは嫌だな。分かった、場所は外壁の側面北側だ」
「分かりました、ではまた後程。お気をつけて」
「ああ」
キャロルと別れフィオンの救出に向かう。
待ってろフィオン、直ぐに行くからな!
さてキャロルはどうだったでしょうか?
自分的には結構好みのタイプのキャラで書いてて楽しいです。