レホラ王国突入
数日掛かる道のりを超え、遂にレホラ王国の外壁の前までやってきた。
各王都はいずれも巨大な外壁に囲まれており、霧魔獣の侵入を防いでいる。
この外壁は相当強固に出来ており、仮に大型の霧魔獣が出ても破壊されることはないのだという。
その為、正門以外には見張りすらおらず、 国の側面に当たる外壁までは安全に近づくことが出来た。
突入前に最後の作戦会議を行う。
余裕を持って実行するためにも、今日はレホラ王都の近くで身体を休めて、明日の昼間に潜入し夜に行動を開始することになった。
役割分担も明確に決めておく。
第一であるフィオンの武器は王城内にある。
直接乗り込んで回収するしかないのだが、全員で行っては流石に目立ってしまう。
なので、実際に回収しに向かうのは本人であり道案内のフィオンと、臨機応変に動きやすく危険な攻撃も確定で回避することが出来る俺が行くことになった。
その間他のメンバーはどうするのかというと、レホラ国内の状況や敵だと思われる人物の動向などを探ることになる。
情報収集という意味合いが強いが、キャロルを勧誘しに行くタイミングを計る為にも大事なことだった。
俺とフィオンは武器を回収出来次第所定の場所に移動。一度合流して情報を纏めつつその後の行動方針を決める。
「で、どうやって中に入るんだ?」
こうして潜入するのは俺とアロマは初めてのことだ。
正門からはとてもじゃないが入れない。城壁を上るのも壊すのも無理だ。
いや、実際はフィオンの異能であれば城壁を壊すことも出来るかもしれないが、痕跡が残りすぎるしリスクを考えれば、その選択肢をフィオンが取るとは思えなかった。
「今回は地面の中を私の異能で進んでいこうと思う。王都内の地形は頭の中に入ってるから大丈夫だ」
「それはまた・・・・・・相手からしたら予想は出来なさそうだな」
万が一潜入に勘付かれていたとしても、流石に地面の中を進んでくるとは予想できないだろう。
方針も完全に固まったところで休むことになった。
――――――――――
現在地面の中を進んでいる。
フィオンを先頭に、アロマが魔法で明かりを作りながら歩いていた。
「そろそろだ、気を引き締めておけ」
フィオンが声と共に全員突然の戦闘になっても対処出来るように気を引き締める。
直ぐに土から石で出来た壁に突き当たり、それを崩して進むと地下水道のような場所に行きついた。
「ここはまず人が来ることはない。地上への出口も人目の付かない所にあるから問題無いだろう」
「らっくんとフィオンもここから地上に出て王城に向かうの?」
「いや、私達はここから更に進み、王城の地下にある物置のようになってる部屋に向かうつもりだ」
「そっか、気を付けてね」
心配するアロマに大丈夫だと安心させるように笑いかけてから、フィオンと共に王城に向かった。
先程の場所からそれ程離れていなかったようで、直ぐに王城の一室に着いた。
フィオンが物置と表現したように、何に使うかよく分からない物が沢山置かれていた。
埃っぽいことから、現在は殆ど使われていないことが分かる。
これならば直接見つかったりしない限りはバレることはないだろう。
「さて、ここまでは予定通りだ」
「ここからの道のりは?」
「見つからないように慎重に進むしかない。絡めた移動手段はもう使えないからな。二階にある一番西側の部屋だ」
「了解」
部屋を出て階段を上がっていく。
二階までは何の危なげもなく行けたのだが、この後は長い廊下を進んでいかなければいけない。
静まり帰った中を行くので、物音を限りなく消す。
ある程度行ったところで使用人のような人が歩いて来るのが見えた。
見つからないように物陰に息を潜めてやり過ごす。
心拍数が高くなり緊張感のある時間が続いたが、どうにかバレずにやり過ごすことが出来た。
その後も何度か人とすれ違ったが、何事もなく目的地にたどり着くことが出来た。
鍵が掛かっていたが、フィオンがその場で合鍵を作って入る。
「数年振りだな」
久しぶりの自室に安心感のようなものをフィオンは感じていた。
室内は綺麗に保たれており、フィオンが国を去った後も掃除はされていたようだ。
「それで、肝心な物はどこにあるんだ?」
部屋の中を見渡すが武器のような物は見当たらない。
「ベットの下だ。動かすのを手伝ってくれ」
フィオンに言われてベットを退かす。
何が出てくるのだろうと思っていたが、ベットの下には何も無かった。
「・・・・・・何も無いぞ?」
「まあそう焦るな」
フィオンが床に目をやると、その地面が崩れる。
そこは空洞になっていて、中には色々な物がしまわれていた。
その中の箱を手に取り引っ張り出す。
武器が入っているような大きさの箱ではない。
「その中の物が?」
「ああ。私の最高傑作といっても過言ではない」
どうやらフィオンが自分で作ったものだったようだ。
留め具を外し箱を空ける。
そこから出てきた物はマフラーだった。