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ミストライフ  作者: VRクロエ
レホラ王国編
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フィオンの過去2

 フィオンはしばらくの間、研究室で行う霧の研究の合間に自室で花の解析を行っていた。

 どれだけの図鑑や資料を手あたり次第に調べても、花のことは一切分からない。


 つまりは新種の可能性が高い訳だ。


 何故そんなものが隠されたあの部屋にあったのかは謎だが、それを今気にしても仕方がないので、解析にのみ力を注ぐ。


 ガラスケースから出しても一向に枯れる気配がないことから、普通の花ではないのだろうとは思う。

 恐らくは魔法によって何かしらの影響を受ける類のものだとフィオンは考えていた。


 そういった植物は少ないが、無くはない。

 更にそれらは人の生活に役に立つものもある。

 霧魔獣避けのアイテムになったり、傷薬になったりと用途も幅広いのだ。

 この花の性質を正確に解析することが出来れば、人の役に立つ何かを作ることが出来るかもしれない。


 フィオン前々から自室で様々な物を作っていた。

 それらはフィオンの異能が前提で使うことが出来るものが多いため誰にも言わずに隠してあるので、とんでもない物が混ざっていても騒がれることはないが。

 そんなわけで、物作りに関しては別に問題はない。


 ただ、花については中々に解析が難航していた。

 元の膨大な知識に加え、異能や更には高い魔法適正により大抵の物質はある程度調べれば、その全容が分かってしまうのだが、珍しく手こずっていた。


 魔法を使用してみても何も起こらない。

 普通であれば魔法の影響を受けている植物の近くで魔法を使うと何かしらの反応を示すものなのだ。

 初めてのことに戸惑うも、魔法による影響を全く受けていないとは到底思えなかった。


 ならばその魔法の種類に関係しているのかもしれないと、方向性を少し変えてみる。


 魔法を使うには空気中に無数に漂っている目に見えない魔力を体内で変化させて使う為、誰が使おうとも元のものは同じなのだが、明確に属性のようなものが付いている。

 これは体内で魔力を変質させているからであり、取り込む際は同じものでも、外に放つ際は全く別のものになっている。

 このことを念頭に置くと、この花は特定の魔法に作用する可能性がある。


 しかしこの可能性も即座に否定されることになった。

 フィオンは氷のような魔法を得意としているが、他の魔法も少しならば使うことが出来た。

 なので色々な魔法で試したが、結果は何も起こらない。

 そもそも何もしていなくても枯れなかったことを考えると、魔法の有無はあまり関係ないのだが、頭の中から抜けていた。


 再び振り出しに戻る。

 もはや1人では手詰まりといった状況だった。


 そんなわけで研究室に持ち込み仲間の研究員達にも協力を仰ぐことにしたのだ。

 もしかしたらこの花のが隠されたものだと知っている研究員が居て、勝手に持ち出したことがバレて、何かしらの罰が与えられるかもと思ったが、その時はその時だ。

 開き直って持って行ったが、誰もこの花のことは知らなかった。


 大小はあれど好奇心の塊である研究員達は見たことも聞いたこともない花を見て即座に調べてみようということになった。

 フィオンは既に自信が行った実験を話し、それをふまえた上で調べてみることになる。


 魔法、魔力に重点を置き色々と考察する。

 この国の中でも最も頭脳が優れた者たちが、その能力をフル活用して事に当たれば新たな案が出るのには時間がかからなかった。


 着目したのは霧。

 霧は取り込むと人体に害をなすが、ある種の魔力であるというのはこの場にいる者達は皆分かっていた。

 何しろ自分たちで行きついた答えなのだ、疑う余地は無い。


 そして魔法に作用するというのは元を辿れば魔力に作用するということ。

 霧が影響を及ぼしていない地域にも人体に影響の出ない程度の微量の霧が入りこんでいるとしたら、花が枯れないのも納得がいく。

 ただ、この種の花がその程度の影響しか及ぼさないとは思えない。

 なので外に持ち出しその経過を見ることにした。


 ガラスケースに入れたまま花を外に持ち出す。

 フィオンに同行しているメンバーはリレンザのみだ。大勢で行ってもあまり意味はない。


 外に出て少し歩き安全そうなところで実験を行う。

 ガラスケースを外し花を霧に晒す。

 すると2人も全く予想していなかったことが起こりだした。


 その花は霧を吐き出し始めたのだ。

 霧の中でもはっきりと視認出来る程濃い霧をだ。


 予想外のことに絶句する。

 長いこと探していた霧の発生原因をこんなにも突然知ることになるとは思ってもいなかった。


「リレンザ、これは・・・・・・」

「ああ。まさかこんな形で発見することになるとはな・・・・・・。よくやったなフィオン!」


 リレンザにそう言われフィオンは涙が出そうになる。

 探し求めていたこの世界の最大の課題を自分の手で見つけることが出来て、研究者としてこれ以上の誉れはない。

 只々嬉しくて花が霧を吐き出しているのを見つめる。


 あまりの感動にこの花が()()()()()()ということを、この時のフィオンは忘れていた。




次話でフィオンの過去の話は終わりです。

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